人生折り返し地点
暮らしの整理術 〜part1 〜
今までがんばって続けてきたことがなんだか負担になってきた。
もっと身軽になって自由を楽しみたい……そんな思いが芽生える50代。
何を手放し、何を大切にするか、見極めるためのヒントを聞きました。
住み替えに備えて持ち物の整理を始める
子どもの独立や自分や夫の退職が近づくなど、変化が起きる50代。
人生100年時代、60代から心地よく生きるために、手放すこと、やり方を見直すことなどが増えてきます。
家庭や社会で果たす責任が軽くなってくるのに合わせて、暮らしも身軽にしていきたいもの。
とはいえ、何から手を付ければいいのか迷うことも多いはず。
「そろそろ、手間がかかる大きな家を手放して、住み替えを検討する人もいるでしょう。ものが多いと引っ越しも大変。私も一戸建てからマンションへの住み替えを経験し、トラック数台分の荷物を処分しました。何十年か先には老人ホームに入るなら、1ルームサイズになるので、よい機会だったと思っています」(井戸さん)
住み続けた月日が長いほど、思い入れのあるものが増えます。けれど、整理するときは、「使っている」「使っていない」のシンプルな基準で分けること。でも、「思い出のものは無理に捨てる必要はありません。別の箱にしまっておけばOKです」(下村さん)。
ただ、見栄のためや流行に釣られて買ったものなどは、処分する時期です。
「一生使える」と言われた高価なバッグや靴も、本当に今使いたいものか考えるべきでしょう。
「思い入れがあるのか、もったいないだけなのか。仮に誰かに、『1万円で買い取ります』と言われて、喜んで売るなら、もったいないだけかも」(下村さん)
家の中がすっきりすれば、家事の手順も減らしやすくなります。
今まで当たり前に続けてきた習慣も、見直すタイミング。
衣類が減れば衣替えの手間もなくなりますし、夫婦2人なら料理はワンプレートに盛り付けるなどで、皿洗いも最小限に。
これからかかるお金を俯瞰で見ること
そして、気になるお金のことも、無駄な出費を省くことで、老後の見通しがクリアになってきます。
「物価高など気になることも多いですが、目先のお金に気を取られずに、この先を俯瞰してみましょう。あと何年働くのか、それで得られる収入はどのくらいか、調べるのによい時期です。合わせて自分が持っている資産、この先の出費となる残りの教育費や介護費がどのくらい必要なのかも調べてみて。一度ファイナンシャルプランナーに相談するのもいいでしょう」(下村さん)
洗い出してみて、老後資金の不足に気づいたら、稼ぎ続ける準備をするのにもよい時期です。
「60代も働き続けるのが当たり前の時代。会社員なら、まず副業から始めて。昔より職業選択の幅は増えています。何から始めていいかわからない人は、自治体の講座などをチェックして体験を。ハローワークにも職業適性検査があり、無料で体験できます。すぐに、やりたい仕事が見つからなくても『いやじゃない仕事』『らくに続けられる仕事』を始めるのもいい方法です」(井戸さん)
お話を伺った方
ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士
井戸美枝さん
講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題について解説。
近著に『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアムシリーズ)など。
ライフオーガナイザー®、ファイナンシャルプランナー
下村志保美さん
夫の転勤で海外生活を経験し、本当に必要なものだけで暮らす生活を実践。
セミナーや個人レッスンで活躍。
著書に『片づけのプロが教える心地いい暮らしの整え方』(三笠書房)。
イラスト/篠塚朋子 文/田中絵真
大人のおしゃれ手帖2022年12月号より抜粋
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