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大人のおしゃれ手帖 12月号

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大人のおしゃれ手帖
2024年12月号

2024年11月7日(木)発売
特別価格:1650円(税込)
表紙の人:天海祐希さん

2024年12月号

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【神野三鈴さん】
連載 「いただきますのその先に」

大人のおしゃれ手帖編集部

【神野三鈴さん】 連載 「いただきますのその先に」

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何でもない日常がどれほど大切か、改めて実感させられた今年の始まり。
当たり前のように明日があると思って過ごしてしまうけれど、その積み重ねによって「自分」は作られている。
ましてや身体なんぞ、日々、何をどう食べているかで出来ているのだ。

きっとみなさんお料理上手な上に、家族の健康まで司っていらっしゃると思うので「こんなものを召し上がったら良くてよ」なんて押し付けるつもりはないが、周りの人に言わせると、私は相当な健康オタクらしい。

結婚当初、ジャンク好きだった夫に「おいしい!でも、もうええわっ! からだにええもんばっかりぃ」と理不尽なキレ方をされた。その夫のアレルギー体質も食生活で改善されたけれど。

旅やロケ弁、お誘いなど外食も多いので、家では身体に優しいものをと考えている。私の普通がオタクの域だとすると、子供の頃の家庭環境が影響しているのかも知れない。

私には「健康な食、土」を生業にしている家族がいる。母は薬膳研究家だった。

食が子供の健康と情緒に関わっていると考えた母は、自由教育の「自由の森学園」という学校を有志と立ち上げ、全て無農薬、無添加で作る給食のおばさんまでやった。
高度成長期の中で子育てを経験した母は、食品添加物や光化学スモッグで、健康を害してゆく我が子の姿に疑問を持ち、立ち上がったのだ。それから猛烈に「安全な食」の勉強を始めた。

薬膳にも目覚め、神農本草書(中国最古の薬草書)を学ぶだけでは飽きたらず、まるでその書の起源となった神農のように自分の身体で、様々な食材の薬効を試していた。
この植物には利尿作用がどれだけあるかを試し、トイレに駆け込んだ事も一度や二度ではなかった。果たして健康にいいのか悪いのか、わからないレベルだ。

そんな母の影響を受けた、7つ上の姉は、大学を出た後、南フランスにあるバイオダイナミック農法(※)の農家に修業に出かけ、食とはつまり、土を豊かに、自然の循環を守り、地球を耕すことであると学ぶ。

そしてそこで出会ったフランス人と結婚し、熊本の南阿蘇にその農法の農場を作った。そんな家族と暮らしていたので、素材にはうるさくなってしまった。
そして素材の恩恵を100%生かす、手抜き楽ちん料理が私の食養生である。

※ドイツの哲学者 ルドルフ・シュタイナーが提唱した農業に対する理念をもとに長い年月をかけて確立された農法。宇宙を含む自然の全てと調和するという考え方がベースにある。

味噌汁と紀州寺谷農園の梅干しを入れているのは輪島塗りの名匠・赤木明登さんの物。普段使いしていますが、思い切って自分で求めた数少ない器のひとつで宝物。 赤木工房も被災なさったとのこと。職人さんたちは皆様ご無事だったそうです。工房の再起をお祈りしています。

味噌汁と紀州寺谷農園の梅干しを入れているのは輪島塗りの名匠・赤木明登さんの物。普段使いしていますが、思い切って自分で求めた数少ない器のひとつで宝物。
赤木工房も被災なさったとのこと。職人さんたちは皆様ご無事だったそうです。工房の再起をお祈りしています。

我が家で大活躍しているのは酵素玄米の炊飯器。炊くのが難しかった酵素玄米が少しお塩を加えるだけでお任せで出来る。
48時間保温すれば、その後一日一回、かき混ぜるだけで何日も置いておける。

今日は何日目の発酵具合、なんて違いも楽しい。玄米が苦手だった夫もこれは喜んで食べる。モチモチとして、味わい深く、何日か食べられずにいると無性に恋しくなるほど。アーモンドや胡桃、じゃこ、塩昆布などで作ったふりかけをかけるだけでもご馳走だ。

姉夫婦の情熱と休みなく畑に出ている姿を見ているので、とにかくフードロスだけはしないようにしています。

今日は麹とお出汁で炊いたお揚げさんで稲荷寿司に。 あまりお肉が食べられない私は、タンパク質不足を補うための大豆料理が欠かせない。
見栄えの悪いお椀は、小樽の「利尻屋みのや」の柔らか湯豆腐昆布とエノキで出汁をとり、きのこを数種類、豆腐を入れ、豆乳とお味噌で味をととのえる。
にんにくとしょうが、胡麻油を足らすと、ヴィーガンとんこつ味噌風味に。姉の農場から届く野菜は味や香りが強いので、熊野の三杯酢などでシンプルに。

石川県能登島で無農薬栽培をしている「NOTO 高農園」のお野菜も美味しくて美しくて大ファンだ。
被害が大きかった珠洲市狼煙町の「大浜大豆」で作った豆腐や、日本で唯一、能登半島の揚げ浜式のお塩などキリがないくらい恩恵を頂いてきた。素材がいいから手抜きでも美味しいのだ。

そしてその先には一生懸命、自然を相手に日々がんばっている人がいる。
気候も環境も昆虫も全て繋がっている。一蓮托生だ。

お会いしたことはないけれど、我が家の食卓にも繋がっている。私や家族の生命の一部を担ってくれた方々に。
皆さんの日常が一日でも早く戻りますようにと祈っています。

MISUZU KANNO
神奈川県鎌倉市出身。第47回紀伊國屋演劇賞 個人賞、第27回読売演劇大賞 最優秀女優賞を受賞。主な出演作に舞台「メアリー・ステュアート」「組曲虐殺」、ドラマ「マイファミリー」、映画「LOVE LIFE」「37セカンズ」など。映画「不死身ラヴァーズ」が5月10日(金)より公開予定。


文/神野三鈴 撮影/枦木功[nomadica] ヘアメイク/奈良井 由美

大人のおしゃれ手帖2024年4月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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  • 姉夫婦の情熱と休みなく畑に出ている姿を見ているので、とにかくフードロスだけはしないようにしています。

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