50代が今見るべき「映画」はコレ!
人生を変える「出会いと別れ」を見つめたヒューマンドラマ3選
時代と国境を超えて結ばれる縁、生と死の狭間で描かれる再会。
新生活が始まる季節に観たい、出会いと別れを見つめた3本を紹介。
『パスト ライブス/再会』
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
ソウルとニューヨーク別れと再会の先にあるもの
ソウルに暮らす12歳のノラとヘソンはお互いに惹かれ合うが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後、ニューヨークとソウルにいるふたりは、オンラインで再会。
気持ちは重なるが、結ばれることはなかった。そしてさらに12年後、すでに結婚しているノラに会うために、ヘソンはニューヨークへとやって来る。
限られた時間のなかで、ふたりの胸に浮かぶ思いとは?
お互いの距離感や視線の交錯を美しい映像で切り取り、複雑な心模様を描き出したのは、12歳で韓国からカナダへと移住したセリーヌ・ソン監督。
選んだ道や伝えた言葉だけではなく、選ばなかった道と伝えなかった言葉にもきっと意味があり、すべては今につながっている。
エンディングのノラの涙は、いくつもの縁と“if”を積み重ねてきた世代の心にこそ、深く染み入る。
監督:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロー
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
『異人たち』
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
今は亡き両親との対話を通して描かれる喪失と再生
ロンドンのマンションの高層階に住む40代の脚本家、アダム。12歳の頃に両親を事故で亡くした彼は、幼少期を題材にした脚本を書くためにかつて住んでいた実家を訪れる。
そこには昔と変わらぬ姿のままの両親が住んでいた。同じ頃、アダムはマンションに住む青年と恋に落ち、体を重ねるようになる。
原作は大林宣彦監督によって映画化もされた山田太一の小説『異人たちとの夏』。
『荒野にて』のアンドリュー・ヘイ監督が主人公をゲイにしたことで、時代の対比と孤独の影がより色濃く感じられる作品になった。
リアルとファンタジーが同居した怖くて美しい世界のなかで描かれる、不思議な再会と新たな出会い。アダムが両親との対話を通して自分を抱きしめ、過去ではなく今を生きることを知っていくまでの過程は、まるでセラピーのようでもある。
監督:アンドリュー・ヘイ
出演:アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、ジェイミー・ベル、クレア・フォイ
TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開中
〈Netflix〉
『ロ・ギワン』
出会いによって引き出される過酷な運命を生き抜く力
北朝鮮を脱出して中国で暮らしていたロ・ギワン。
最愛の母を亡くした彼はベルギーに密入国するが、難民申請を受けることは容易ではなかった。苦しい生活を送るなか、ギワンはベルギー国籍を持つ韓国人女性、イ・マリと出会う。
大ヒットドラマ『財閥家の末息子〜Reborn Rich〜』も記憶に新しいソン・ジュンギが、脱北者を演じて新たな一面を見せたNetflix映画。
公衆トイレで体を丸めて震えながら眠り、当たり前のように差別される日々。思わず目を背けたくなるような過酷で貧しい暮らしが、ひとりの女性との恋によってどう変わっていくのか。
その先にも困難は待ち受けているが、彼女との出会いがロ・ギワンのなかにある“生き抜く力”を引き出したことは間違いない。
ギワンのまっすぐなまなざしが、人を愛することで芽生える可能性を信じさせてくれる。
監督:キム・ヒジン
出演:ソン・ジュンギ、チェ・ソンウン
Netflix映画『ロ・ギワン』独占配信中
選・文/細谷美香
大人のおしゃれ手帖2024年5月号より抜粋
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