【著者インタビュー】金原ひとみさん
「新たな人との出会いが自分の殻を破ってくれる」
金原ひとみさんの新刊『ナチュラルボーンチキン』の主人公は、ルーティンをこよなく愛する40代女性。
人生も後半戦となり、人生に漠然とした不安を抱く大人世代に、一歩踏み出す力をくれる一冊です。
新たな人との出会いが自分の殻を破ってくれる
誰にも等しく訪れる「老い」をどう受け止め、どう乗り切るべきか……。
思い悩む世代に向けて、前に進む勇気をくれるのが、「中年版『君たちはどう生きるか』として書いた」という金原ひとみさんの新刊『ナチュラルボーンチキン』。
ルーティン生活を送る40代の主人公が、自由奔放に生きる20代の後輩との出会いを通じて、新たな世界を獲得していく様が描かれます。
「40代を過ぎると病気や老眼、親の介護……みたいな話題が増えますよね。でも粛々と老いを受け止めるだけでなく、自分を解放してもいいんじゃないかと感じて。
内にこもっていた人が新たな刺激を受けて、爆発的に世界を広げていく状況を書きたかった。これは、みんなが『わかってますよ』みたいな顔で、生きる範囲を縮小していかざるを得ない、今の雰囲気に対するアンチテーゼでもあるんです」
自分の殻を破ってくれるのは、やはり人との出会い。「私には無理」と決めつけず、オープンでいることで、知らなかった世界が見えてくるかもしれません。
「自分にとって有害な人物を断ち切ることは、自分を守るためには大事なことですよね。でもそれだけでは、人は凝り固まってしまう。人と会うだけでなく、それこそ小説でもいいので、何歳になっても自分の中に新しいものを取り入れていけばいいんじゃないかと思います」
デビュー作『蛇にピアス』の刊行から21年。
ひりひりした切迫感や焦燥感を覚える作品も多かった金原さんですが、今作では人との関わりによってもたらされる救いや安心感が、あたたかく描かれています。
「今もそのときどきで悩みや辛いことはあって、不安や焦りがなくなることはない気がします。でも、今回は自分も力が抜けていたというか、楽しみながら書けたところがあって。年齢とともに他者への寛容さみたいなものを持てるようになった。そういう変化がひとつの形になったのかもしれないと思います」
プライベートでは高校生と中学生の母。
「一時期は執筆時間の確保が大変でしたが、最近はようやく子どもが巣立った後の自分を想像するようになって。子育てから解放される嬉しさもあるけど、それが寂しさにもなるんでしょうね。生まれた時間をどう使うか、私にも新しい風が吹いてくれることを祈ってます」
『ナチュラルボーンチキン』
金原ひとみ
¥1,760(河出書房新社)
毎日決まった「ルーティン人生」を送る出版社勤務・45歳の浜野文乃。20代の編集者・平木と知り合ったのを機に、浜野の人生が変化していく。金原さん自身は「朝、執筆に入る前に昨日書いた部分を読み返してから物語に入っていく」のがルーティンだそう。
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