【玉置玲央さん、章平さんインタビュー】「今の自分たちを写す、鏡のような作品になる」
メジャーリーグを舞台に、同性愛者であることを告白したスター選手とチームメイトを描いた舞台『Take Me Out』。7年ぶりとなる今回の再々演では、2018年の再演に続いて物語の語り手、メイソン・マーゼック役を玉置玲央さん、同性愛者であるとカミングアウトするダレン・レミングを初演・再演に続き章平さんが演じます。いわばバディのような関係性を演じるおふたりに、再々演への思いをお伺いしました。
目次
【玉置玲央さん、章平さんインタビュー】「今の自分たちを写す、鏡のような作品になる」
前回の公演から7年。自分たちも、観る人の受け取り方も変わる
——撮影の合間もお話が盛り上がっていたようでしたが、おふたりが会うのは久しぶりですか?
玉置玲央(以下、玉置) 何年ぶりだろう? 新国立劇場で1回会ったよね。
章平 その後、別の稽古場で偶然会って。向こうから玲央くんが走ってきて、抱き合いました。
玉置 そうだ!
章平 あれが2023年だから、直接会うのは2年ぶりです。
玉置 でも今回の再々演が決まってから、連絡は取っていて。俺はもう『章平じゃないんだったらやらない』みたいな話をしたんだよね。前回、始まる前はどうなることやら……と思ってたけど、ふたを開けてみたら俺はすごく楽しかったから。新しい出会いも大事だけど、7年経った今、もう1回俺たちで何ができるのかを知りたいし、感じたいから。だから章平じゃなきゃ嫌ですって話をして。
章平 7年前の再演では、本番をやっていくなかで「あ、これだ」と掴んだ瞬間があったんです。そこから体が自由になって、めちゃくちゃステップを上った感覚があった。今でも鳥肌が立つくらい、そのときの感覚を鮮明に思い出せます。だから僕にとって、玲央くんとの共演は大きなターニングポイントでした。
——再演から7年が経って、役や作品に対する捉え方に変化はありますか?
章平 7年経って、年齢も経験もダレンという役に近づいたと思うんです。そこをどう感じられるかが楽しみですね。変わらない核のところも大事にしながら、新しく湧き上がってくる感情を探していきたい。
玉置 7年って、結構な年月だと思うんですよ。人も環境も、もっと言うと世界の状況も大きく変わるぐらい。そのなかで自分がどう振る舞えるのか、この作品をやることでわかるんだろうなと思って。たぶん、今の自分を写す鏡になると思う。
章平 本当にそう! 僕は初演、再演と経験しているけど、この作品の登場人物って演じる人によって一気に変わるんですよ。それだけ、どの人物も個が強いんです。それぞれのキャラクターがどう変化するかも今回の楽しみ。
玉置 7年前はまだコロナ禍ではなかったし、戦争も起こってなかったし、全然状況が違う。大谷翔平選手の存在によってメジャーリーグへの関心も前より高まっている。自分たちだけでなく、お客様の受け取り方も変わってくるでしょうね。たとえば、この作品のプレスリリースには(ダレンのカミングアウトについて)「衝撃告白」と書いてあるけど、衝撃じゃなくなっていく可能性もある。そういう変化も、再演を重ねる面白さですよね。
コロナ禍を経て「演劇以外のものも大事」と思えるように(玉置)
——今お話にあったように、前回の上演はコロナ禍の前でした。この作品に関することだけでなく、コロナ禍を経て変わった部分はありますか?
玉置 俺はね、結構変わった。「死ぬとき、ひとりは嫌だな」と思うようになったの。俺は演劇というものを愛しているし、演劇をやるためだったらすべてを投げ打ってもいい、プライベートもおろそかにしていいと思ってたけど、コロナ禍を経て「他にも大事なものがあるな」と思ったのよ。それは言ってしまえばプライベートの部分なんだけど。演劇ももちろん大事だけど、他のものも大切にしていいじゃんって思えるようになった。いろんなものの価値が自分のなかで演劇に追いついたというか、もしかしたら追い抜いた部分があって、演劇が最優先じゃなくなったの。それが今の俺にはすごくちょうどよくて。だからここ4、 5年の作品はそういう感覚を持って取り組んでるんだけど……。
章平 そうすると、ものの見え方も変わってきますよね。
玉置 うん。ただ、怖くもあるんだよね。演劇に対する愛情は冷めてないけど、冷静になった状態で『Take Me Out』に取り組んだとき、どうなるのか全然わからないから。表現活動ってちょっと盲目的なほうがいい場合もあるじゃない?
章平 確かにそうですね。これはコロナ禍が助長させたのかもしれないですけど、人と関わることがすごくおろそかになっている気がするんです。それこそ昭和のような……僕は昭和を生きてないので勝手な想像ですけど、もっとズカズカと人の領域に入り込んでいくような人もいましたよね。でも、今はそこまで深く人と関わろうとしない、見ようとしない人も多い気がして。僕はすごくそれが寂しい。これが『Take Me Out』にどうつながるかというと、ダレンは逆だと思うんです。ダレンは孤高の人間で、自分から他人に関わろうとすることはなかったけど、メイソンと出会っていろんな感情を知っていく。コロナ禍を経たことで、ダレンの感情がよりリアルに感じられるし、現代の問題にもちゃんと向き合える気がします。
お互いの意見をぶつかりながら、熱く語り合うのが気持ちいい(章平)
——お互いの俳優としての魅力はどんなところにあると思いますか?
章平 実際に玲央くんがどんなふうにやっているかはわからないけど、めちゃめちゃ緻密に組んで、なおかつそれを手放せる人だと思うんです。これは僕の個人的な意見ですけど、それって役者からすれば、誰もが欲しがるような力なんですよ。頭で作ることと体現すること、そのバランスがすごく取れているな、と。舞台はもちろん、映像でも感じます。ちょっと学者っぽいところがありますよね?
玉置 確かにあるね。
章平 それが表れている役もあるし、消している役もある。だから「いいよな、やっぱりこれだよな」と思いながら、僕はいつも玲央くんのお芝居を見てます。
玉置 俺は前回共演したときからずっと、謎の懐の深さというか、包容力みたいなものを感じていて。それは役ではなく、章平自身が持っているものだと思うんだよね。俺が個人的に信頼しているだけなのかもしれないけど。7年前は何歳だったんだっけ?
章平 26歳ですね。
玉置 その年代って、とにかく頑張っていこうっていう時期じゃん。俺だったらもっと萎縮しちゃうだろうと思って。だけど思いっきり手を抜かずに来てくれて。それが章平の魅力というか、すごいところだなって。
章平 嬉しいです。
玉置 そういうのって芝居に出るじゃん。結局、人間がやってることだから。だから俺、また一緒にやるのが怖くもあって。前回、本当に豊かなクリエイションができて、高いところまでふたりで登って行けたからこそ、「今回はそれほどじゃないな」と思われたくない(笑)。
章平 でもそれはお互いさまですから(笑)。
玉置 だから今は、早く他のメンバーにも会いたいな。メジャーリーグと演劇って、重なる部分があるんですよね。出自も年齢も違う連中が集まって、本番や優勝という目標に向かうっていうのが。だからやっぱ衝突も結構あって。
章平 お互いの意見を熱く語り合うのがなんだか部活みたいで、ある種の気持ちよさがありますよね。しかもそれが作品にちゃんと乗っかるっていう。現場によるかもしれないけれど、この作品に限ってはいいことなのかな。
玉置 そうだね、お行儀よくしないのも大事かも。みんな大人の対応ができる年齢だけど、冷静さとか打算的な考えは捨てて、思いっきりぶつかっていきたいよね。
玉置玲央(たまおき・れお)
1985年、東京都生まれ。劇団『柿喰う客』に所属。2018 年、映画『教誨師』で第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。舞台『ゲルニカ』『パンドラの鐘』『朝日のような夕日をつれて 2024』『リア王』など舞台を中心に活動。近年ではドラマ『恋する母たち』『大奥Season2』、大河ドラマ『光る君へ』など映像作品にも出演し、注目を集める。現在、ドラマ『キャスター』(TBS系)に出演中。
章平(しょうへい)
1991 年生まれ。2012 年にミュージカル『テニスの王子様 2nd シーズン』で初舞台。以降、ミュージカル『エリザベート』、ミュージカル・ピカレスク『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』、舞台『デカローグ7~10[プログラムD・E交互上演]』『リア王の悲劇』に出演。映画『デスノート Light up the NEW world』、ドラマ『薄桜鬼 SSL』など映像作品でも活躍。2025年12月よりミュージカル『十二国記 –月の影 影の海–』に出演。
[舞台]
『Take Me Out』2025
メジャーリーグを舞台に、その華やかな選手たちの関係を捉えながら、そこに渦巻く閉鎖性によって浮彫りになる様々な実情にスポットを当てる。今回の再々演では2018 年の再演を支えたオリジナルメンバーに新メンバーを加えた経験豊かな「レジェンドチーム」。そして一般公募計 330 人の中からオーディションを勝ち抜いてきた新メンバーのみで構成する「ルーキーチーム」の 2 チームによる熱い公演が繰り広げられる。
作:リチャード・グリーンバーグ
翻訳:小川絵梨子
演出:藤田俊太郎
出演:レジェンドチーム/玉置玲央、三浦涼介、章平、原嘉孝、小柳心、渡辺大、陳内将、加藤良輔、辛源、玲央バルトナー、田中茂弘
ルーキーチーム/富岡晃一郎、八木将康、野村祐希、坂井友秋、安楽信顕、近藤頌利、島田隆誠、岩崎MARK雄大、宮下涼太、小山うぃる、KENTARO
ベンチ入り(スウィング)/本間健太(レジェンドチーム)、大平祐輝(ルーキーチーム)
日程:
2025年5月17日(土)~6月8日(日)全30公演(レジェンドチーム20回、ルーキーチーム10回)東京・有楽町よみうりホール
2025年6月14日(土)~15日(日) 全3公演(レジェンドチーム3回、デイビー・バトル役は宮下涼太が出演)名古屋・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2025年6月20日(金)~21日(土) 全3公演(レジェンドチーム3回、デイビー・バトル役は宮下涼太が出演)岡山・岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場
2025年6月27日(金)~29日(日) 全4公演(レジェンドチーム4回、デイビー・バトル役は宮下涼太が出演)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
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●衣装協力
玉置さん:グラウンド ワイ/ヨウジヤマモトプレスルーム(03-5463-1500)
章平さん:ラッド ミュージシャン(03-6903-4215)
撮影/天日恵美子 スタイリング/中村剛(ハレテル) ヘアメイク/武井優子 取材・文/工藤花衣
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