お馴染みの奈良モチーフが見違える♡ 「サトリデザイン」の雑貨にひと目惚れ!「関西 コレ、ええやん♡ vol.5」
ヨソモノもウェルカムな奈良の懐の広さに感動 「毎日夢が叶ってます」
カウリさんを後にし、やはりサトリデザインさんのクライアントさんでもあるという焼き菓子屋さん「pieni blanc(ピエニブラン)」さんへ。
カルダモンのドーナツをもぐもぐ食べながらお話を伺ってみると、実は羽角さんも私と同じ奈良女子大学の卒業生で、“Nターン”仲間でもあることが判明!
羽角さん
出身は静岡県の浜松で、奈良女子大に進学したのですが、学生時代は実はそんなに奈良にどハマりしていたつもりではなかったんです。むしろ当時奈良にあったビブレのビレバン(ヴィレッジヴァンガード)で沼田元氣さんの『東京喫茶店案内』に出合い、“卒業後は絶対東京行く!”と決意するぐらい、衝撃を受けました。
左:『東京喫茶店案内: ぼくの伯父さんのガイドブック』(沼田 元氣・著、東京喫茶店研究所・編/ギャップ出版)
右:オマージュとしてサトリデザインさんが作成したマッチ箱形のzine
ま、まさか。こんなところで沼田さんのファンに出会うなんて! と、お互いにびっくり。ちなみに私が以前手がけた『LOVE! 京都』は企画段階から沼田さんの『京都スーベニイル手帖』からも多分に影響を受けています。
左:名曲喫茶らんぶるの外観
右:長年使われてきた紙コースターの廃盤を機に羽角さんがデザインを担当した現在らんぶるで使われているコースター
羽角さん
念願叶って東京の企業に就職したものの、1年で退社し、新宿の名曲喫茶「らんぶる」でバイトしながら、子どもの頃からの夢のひとつだったイラストレーターを目指そうと専門学校に通い始めました。でも、周りとのあまりのレベルの差に愕然としてすぐに通わなくなってしまって……。結局、母の病気をきっかけに、地元に戻りました。
私も現役でとりあえず入った会社にはすぐ見切りをつけ、編集者になるために振り返ればフリーターとしか言いようがない時期を過ごしたので、あのころのヒリヒリした気持ち、よくわかります。その当時私がバイトしていたのも新宿なので、らんぶるで羽角さんにコーヒー出してもらってた可能性もあるかも。
羽角さん
転機は、地元のハローワークで「職業訓練 広告デザイン科」の案内を偶然見かけたこと。右も左もわからず、予備知識もありませんでしたが、藁にもすがる思いで受講し、職業訓練校の3人の先生の熱血指導のおかげでなんとか技術を身につけ、浜松市内のデザイン事務所で実務経験を積みました。
そこからどうやって“Nターン”に至ったのでしょうか。
羽角さん
らんぶるのバイト仲間だった夫との結婚を機に、独立してサトリデザインを立ち上げるとともに、奈良に引っ越しました。お互いとくに縛りがなくて、どこに住んでもいい状態だったので、それならいつか戻りたいと思っていた奈良に住んじゃおうか、と。
いつか奈良に戻りたいなぁ、と思ってはいたものの、なんとなく老後のイメージでいたので、予定がかなり早まりました。
でも、在学中は奈良にそこまでガツンと深入りしていたわけではなかったんですよね?
羽角さん
そうなんです。でも、外国人向けのボランティアガイドをしたり、やはりボランティアでクラゲバー&ギャラリー「浮遊代理店」で働いたり、奈良を離れてみたら学生時代は意外と充実していたな、と気づいたんです。
戻ってきて、お仕事を通じて奈良で頑張っているお店や人に関わるにつれて、どんどん奈良が好きになっていますね。
ならまちにある「花園新温泉」には、クラウドファンディングのリターンとしてサトリデザインさんの「奈良てがみ」の絵看板が
私はもともと奈良が好きで、東京に帰ってからも年に数回通い続け、「奈良に帰りたい」が口グセだったほどですが、振り返れば、奈良で過ごした学生時代があまりにも楽しかったからだったのかもしれません。
これまでサトリデザインさんが手がけてきた、奈良関連のフライヤーやショップカードの一部
羽角さん
奈良には小さくても自分でお店や商売をしている人が多くて、私が出会う人は独立心が強くて前向きで、地道に頑張る人ばかりです。しかもそういう人って、他人にも優しい! 移住して11年目になりますが、自分がヨソから奈良に来た人間だという疎外感を感じたことは一度もありません。
奈良の最高なところは、懐が広いというか、本質的な余裕があるっていうか、言葉にしづらいんですが、そういうところだと思っています。
わ、わかる。奈良の人はよく「奈良の良さはわかってくれる人にわかってもらえればいい」というようなことを言うのですが、実際、奈良の魅力を言葉にしようとすればするほど、かえって本質から離れてしまう気がします。
東京から奈良に帰ってくると、肩の力がふっと抜けて、ああ、ちゃんと呼吸ができるなぁと思うのですが、そんな感じが奈良のええとこやと思います(地元は東京なんですけどね……)。そんな大らかな奈良で、のびやかに自分らしさを発揮するサトリデザインさんのこれからの活動に、ぜひご注目を!
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