【奈良のおすすめホテル】一日一客の宿「翠門亭」で人気盆栽店「塩津植物研究所」のモダン盆栽を堪能!
築約100年の数寄屋建築で愉しむモダン盆栽
翠門亭があるのは、東大寺や興福寺、春日大社からもほど近い、奈良の高級住宅街・高畑(たかばたけ)。かつて文豪・志賀直哉先生も居を構え、多くの文化人が集った志賀邸は「高畑サロン」と呼ばれ、現在の高畑にもどこか文化の香りが漂っています。ただのれんがかかっているだけの翠門亭のエントランスも、その家並みに馴染む、凜とした慎ましさ。
築100年を超える数寄屋建築をモダンに再生させたのは、奈良の一級建築士事務所・北条工務店の4代目、北条愼示さん(写真左)。写真右は、個展を開いた塩津植物研究所の塩津丈洋さん(右)。
仕事を通じて出会い、塩津さんがご自宅を建てる際に北条さんに相談しはったという縁もあり、今や家族ぐるみのお付き合い。おふたりが話していると“仲ええ男の子同士”なリラックスムード。今回の個展は、塩津さんが『盆栽ごよみ365日』(誠文堂新光社)を出版することを記念してイベントを開きたいと北条さんに相談したことがきっかけで実現したそう。
玄関を入ると、イギリス出身のアーティスト、リアム・ギリックの作品と盆栽が。ふだんからそこに盆栽があるように見えますよね? ……ないんですって!
塩津さんは大学ではデザイン学科で建築を学んでいたそうですが、日本建築から木を使った家具などのアートへ、さらに木そのものへと興味が移り、盆栽にたどり着いたというから驚きです。だからこそ、今の時代の住空間に合う盆栽を生み出せるのかもしれません。
まずは、ふだん宿泊客しか立ち入れない客室へ。実は元々の建物は空き家だった期間が長かったそうで、伝統的な数寄屋建築をベースにモダンにフルリノベーションされています。その橋渡し役を担っているのが、ジャパニーズモダン家具。
三人掛けのソファはインテリアデザイナー・剣持勇さんのヴィンテージ、一人掛けのソファはその剣持さんと関わりの深い天童木工の現行品。インテリアマニアは、その細部を見比べるのも楽しいのだとか。どんな世界も深みにハマると、無限の楽しみがあるものですね。
いつもなら、東京・日比谷の日生劇場などの設計を手がけた建築家・村野藤吾氏の蔵書をメモって北条さんが買い集めた(!)という書籍が並ぶ棚も、個展中は塩津さんの盆栽が並べられていました。あまりに空間にマッチしすぎていて忘れそうになりましたが、すべての盆栽は購入可能でした。
2階は吹き抜けを中心に寝室と浴室、広縁(ひろえん。幅の広い縁側)が配置されています。同じときに見学していた方が「こんなおうちに住みたい……」と呟いてはりましたが、ほんと、それです。
広縁では、それほど詳しくない私でもお名前を存じ上げているアーティスト、イサム・ノグチが手がけたあかりと盆栽が共演。布をギュッと絞るタイプの照明もイサム・ノグチのものだそうで、私は初めて見ました。
1階の食堂のテーブルセットは柳宗理作品。写真はホンマタカシ作品。「こんなおうちに住みたい……」(2回目)。実際に人が過ごす場に展示されていると、盆栽と暮らすイメージがどんどん膨らんできて、気づけば盆栽をお迎えする気満々に。
食堂周辺に展示されていた盆栽のなかで、私が好きだったもの。塩津さんに「盆栽って、盆=器、栽=植物がワンセットになって盆栽っていうんです」と説明していただいてハッとしました。改めて考えたことなかったけど、言われてみればそうですよね。目からウロコ落ちた……。
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