残暑も厳しい8月、がんばりたいときは「向日葵(ヒマワリ)」【新連載ー今日花(こんにちばな)通信ー】
花の魅力を届ける人・吉原友美さんが伝えたい“花”は、植物を通じて、今の自分の心と向き合う「今日花(こんにちばな)」というあり方。
花を選び、飾ることは、自分と向き合い、今の気持ちや季節を感じ取る行為、といいます。
うれしくて楽しくて、胸がいっぱいになるときも、悲しくてせつなくて、自分自身にも嫌気がさしてしまうときも。つい忘れてしまいがちだけれど、どちらも本当はもったいないぐらい新鮮で、愛しい日々のはず。そのことを、季節を通して今日の自分にまっすぐに向き合う手段としての花が「今日花(こんにちばな)」だそう。
そんな吉原さんの日常と花のある暮らしを、吉原さんの言葉でお届けします。
写真/須賀浩二
写真/須賀浩二
こんにちは。
吉原友美と申します
縁があって、植物にまつわる仕事についています。
暮らしのなかにひと休みする時間があれば、という思いもあって、「PAUSE(パウズ)」という屋号で活動でしています。出張花屋を運営したり、逗子や葉山でイベントに参加させていただいたり、ワークショップを開催しているのですが、日々花に触れるなかで、「花」を通して、暮らしや心に寄り添う時間を届けたいと思うようになりました。
自分と向き合い、今の気持ちを感じ取りながら、花を選ぶ。
大切な誰かと挨拶を交わすように、自分自身とも「こんにちは」とコミュニケーションを取ってみる。
そんな時間を経て選ぶ花からは、小さな喜びや気づきがあって、明日へのエネルギーをくれるような気がします。
私なりの花の在り方「今日花(こんにちばな)」について、季節折々綴らせてください。
さて、8月も半分折り返し、もう立秋です。
秋の始まりといわれていますが、私はまだまだ終わらない夏を楽しみたくて、向日葵をよく手に取ります。
向日葵に触れていると、ふと小学生だった自分を思い出します。
私の両親は大きなケンカをすることがあって、そんなときに家にいると、当然、居心地は悪い。
あるとき、妹を連れて近所の商店へ出かけたことがありました。
姉妹で暗い顔をしていたのか、ご近所のなじみでだったのか、商店のおば様が軒先のバケツに無造作に入れてあった向日葵を、私たちに「はいっ」とくれました。
お花をもらったことが、そして気にかけてもらえたことが嬉しくて、妹とふたりでウキウキしながら家に帰って、キッチンにあったなんてことはない普通のガラスのコップに、子どもながらに3輪、生けました。
さぁ生け終わった、そのときに、ポロポロとあふれてしまった涙。
両親がケンカしていること、そして自分ではその二人をどうしようもできなかったこと、でも長女で、「お姉ちゃん」だから、泣いてはいけない、甘えてはいけない。
そんな気持ちを小学生ながらに精一杯抱えていたけれど、結局抱えきれずにあふれ出てしまったのかもしれません。
不器用に、それでもぴんと気を張っていようとする私を励ますように、コップのなかで真っ直ぐに伸びる太陽のような向日葵。暑さでしおれても、太陽を目指し、頭をあげるようにして凜と咲く、秘めた強さを感じる花。
向日葵が側にいてくれたから、私は、ようやく自分の弱さを出せるようになったのかもしれません。
大人になった今、がんばりたいとき、「お姉ちゃん」らしさを生かして前進したいとき、私は向日葵を生けます。
この記事を監修した人
「PAUSE」主催吉原友美
「日々の暮らしの中に、ひと休みできる時間を」
との思いから、小休止を意味する「PAUSE(パウズ)」を屋号に、花の配送、出張生花店、空間装花、ワークショップを開催。神奈川県三浦郡葉山町にアトリエをかまえ、日常と心に寄り添う花を提案する。
撮影/安彦幸枝
Instagram:@pause_story_