【親の介護・看取り】看取りの専門医に聞く 在宅医療ってなに?
“最後まで生きる”に寄り添う医療<前編>
乳がんの脳転移で余命1か月を宣告されたのに「私は死なない」と治療を拒否する母、おろおろするだけの父。そんな家族のピンチに、バラバラに暮らしている四姉妹がどう対処するのか……。作家の尾崎英子さんが母を看取った悲喜こもごもを描いた『母の旅立ち』(CEメディアハウス)。自由気ままでトラブルメーカーの母に振り回されてきた家族の歴史を振り返るエッセイです。そのなかで、常に冷静で先を見て行動している次女として登場するのが、京都市で「おかやま在宅クリニック」の院長を務めている医師の岡山容子さん。岡山さんに、訪問医療の現場と、家族の看取りについてお話を聞きました。
治療に対して、死について
揺れ動く患者の心に寄り添う
――岡山さんは医師として訪問医療の現場に携わり「看取りのプロ」として家族からも頼られています。50代になると親の介護や治療、死に直面する人も増えます。今は両親が元気な人でも他人事ではないテーマです。とはいえ「訪問医療」「在宅医療」という言葉を聞きなれない読者もいますが、どんなお仕事でしょうか。
岡山さん(以下、岡山) 訪問医療は、医師が定期的に患者の自宅を訪問して、計画的に治療や薬の処方、療養上の相談を行う医療のことです。終末期の患者さんの場合は、亡くなる瞬間までを支えていく医療ともいえます。
――病院ではなく家で医療を受けるという選択肢も増えているのですね。訪問医療を受けている人は、どんな方が多いのでしょうか?
岡山:いろんな状態の方がいるのですが、体が弱って通院できないことが共通しています。いわゆるガンなど終末期の患者さんもいれば、人工呼吸器などをつけている医療的ケア児もいます。
終末期の医療というとネガティブなイメージをもたれがちですが、みなさん亡くなる瞬間まで、慣れた場所でしたいことをして生きたいと考えています。その時間を、苦しみのなかではなく、体が少し楽になって、笑顔が出るように過ごせる手伝いをするのが仕事です。
そのほかにも、病院や検査をいやがる医療拒否の患者さんがいます。私が病院に行くように説得をしても「(病院に)行かへん」といわれてしまう。そういう時は「それやったらそれでええねんけど、治療しないとしんどさは取れへんけどな。明日の朝また来るな」と言って、いったん帰ります。翌朝行くと「先生、待っててん。やっぱり私、病院行きたい。お友だちとランチすんの、まだ楽しみなん」と気持ちが変わっていることも珍しくありません。この間は、説得してせっかく病院に行ったのに、CT(コンピュータ断層撮影)の前で散歩をいやがる犬みたいに動かなくなってしまったという人がいました。再度「入院せんでいいから、CTだけ撮ってきてくれへんかな」と説得してやっと受けてもらいましたが、検査の結果、そのまま入院になりましたね。
患者さんの気持ちは常に揺れているんです。「死ぬなら穏やかに死にたい」「元気になりたい」「やっぱりこのまま死ぬのかな……いや、死にたくない」という感じで。その気持ちに寄り添うのも、訪問診療の仕事のひとつです。
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田中絵真
フリーライター田中絵真
暮らしまわり、ヘルスケアの記事を多く執筆。
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