【親の介護・看取り】看取りの専門医に聞く 在宅医療ってなに?
“最後まで生きる”に寄り添う医療<前編>
治療できることとできないこと
終末期ならではの医療とは
――医療を受けたくない患者さんを説得するのは、一筋縄ではいかないですね。
岡山:訪問医療は、なるべく患者さんの意向に沿うのが仕事です。今では「選好の自由」ということが言われています。たとえば「初期のガンなら手術」など標準的な治療はありますが、それを受けるかどうかは患者が決めていいという考え方です。
とはいえ、闘病中の人が急性期の病気にかかった場合は、延命の希望がなくても治療をします。たとえば、終末期の人が新型コロナにかかったとします。余命が短いからといって、新型コロナをそのままにしていいわけではない。熱が高かったり、呼吸が苦しければ辛いので、その治療をするのは緩和ケアの一種なんです。それで余命が長くなるわけではありませんが、しんどさを取ることは大切です。
――終末期ならではの寄り添い方はあるのでしょうか。
岡山:終末期は、医療の力が及ばないことが実は多くあります。痛みや炎症を抑えることができても、"弱り“には対処できないんです。"弱り"というのは、今までできていたことができなくなること。最初は外出が難しくなる、やがて、風呂、トイレも自力でできなくなる。これは、注射をして治すということはできません。
「トイレにも行けないなら死んだ方がマシ」という患者さんに、どうコミュニケーションをとるのか。「頑張ろう」と言われてうれしい人もいるし、励ましても「あんたになんか分からへん」と言われてしまうこともあります。自分の状況を受容できない人の心に寄り添うのも仕事です。それは、私が特別な人間だからできていることではなく、学問的な知識に基づいてケアをしています。私のクリニックでは、看護師も、受付のスタッフも、私と同じように患者さんに接するスキルを身につけて、患者さんに対応しています。だから、どんな患者さんでもある程度、満足してもらえているかなと思います。
できないことも多いですが、一般の病院のように管理する側の都合ではなく、患者さんがもともと生活していた場で療養する手伝いをするのが、訪問診療です。
―後編に続く
『母の旅立ち』
著/尾崎英子
¥1,760(CEメディアハウス)
新興宗教への傾倒や事業の失敗で、家族を振り回してきた破天荒な母が末期がんに。「看取りのプロ」の次女の指揮のもと、四姉妹は母のエンディングにどう寄り添うのか。将来、親や家族を看取るかも、そんな時にもヒントになるエッセイ。
<この方にお話を伺いました>
岡山容子さん
訪問診療医。京都市中京区にあるおかやま在宅クリニック院長。京都府立医科大学卒業後、麻酔科医として勤務。緩和医療への関心から、ガン末期だけではなく高齢者や難病の方の療養に関わる在宅医療に転向。真宗大谷派の僧侶資格を持つ。
取材・文/田中絵真
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田中絵真
フリーライター田中絵真
暮らしまわり、ヘルスケアの記事を多く執筆。
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