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大人のおしゃれ手帖 10月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2025年10月号

2025年9月5日(金)発売
特別価格:1620円(税込)
表紙の人:吉田羊さん

2025年10月号

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【小川糸さん】新しい山と里の暮らし
植物とともに涼やかに住まう 

【小川糸さん】新しい山と里の暮らし 植物とともに涼やかに住まう 

3年前から信州の山に小屋を建て、愛犬ゆりねちゃんとともに健やかな日々を送っている小川糸さん。
今年はさらに、山の麓に庭と〝ノラコヤ(野良小屋)〟を設け、山と里を行き来する新たな二拠点生活を始めていました。

作家
小川 糸さん
デビュー作 『食堂かたつむり』(2008 年)はイタリア、フランスで文学賞を受賞。以来30 冊以上の本を出版し、海外出版も多数。『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ライオンのおやつ』は、「本屋大賞」候補に選出される。新刊小説は『小鳥とリムジン』(ポプラ社)。


新たに始めた里でのノラ仕事

小川糸さんが標高一六〇〇mの山に移って4年目。
森や庭の植物と寄り添う暮らしを続けています。厳しい自然環境だったこともあり、当初は植物を育てるつもりはなかったといいます。

「まわりの森を野生の鹿から守るために、鹿が嫌う強い香りのハーブを育て始めたのが、庭仕事に没頭するきっかけでした」

庭仕事が日課になると、小川さんはより多くの植物を育てたいと思うようになりました。そ
こで、標高の低い里に新たに庭を作り、ノラコヤを建て、「植物を育てて食す」という新たなフェーズに入りました。

「最初に植えたのは果樹。栗と柿の木がもともとあり、かりん、りんご、ゆず、いちじく、スグリ、さくらんぼ、プラム、あんず、ラズベリー、ブラックベリー、びわ、梅を植えました」
庭では、セージ、ミント、フェンネル、カモミール、レモンバーム、菩提樹、エルダーフラワー、エキナセア、シソなど沢山のハーブ類、ルッコラ、かぼちゃ、スナップえんどう、なす、明日葉、トマト、ワイルドストロベリーなどの野菜も栽培。

「パンジー、ギボウシ、紫陽花、山百合などの花を含めると100種は超えていると思います」庭にはあまり手を入れすぎず、スギナやヨモギなど自生していた野草は茂らせたままに。乾燥させてスギナ茶やよもぎの入浴剤にして使っています。

「どんな植物がこの土地に合って育つか分からないので、今年はいろいろと植えて様子を見ています。庭の形が見えてくるのが5年後、樹木がしっかりと育つのが10年後……。まだまだ先は長いですね。ゆくゆくは、〝鎮守の森〟のように育ってくれたらいいなと思っています」

今では東京の家を引きはらい、山と里の二拠点暮らしに。

「ノラコヤの木材は地元産、基礎には土地から出た石を使っています。基礎は、石の上に直接柱を立てる〝石場立て〟、家屋は釘をつかわない〝木組み〟、屋根は、杉板を張り合わせた〝こけら葺き〟で。伝統的な社寺建築の工法で建ててもらいました」

さらに、ノラコヤの横には可愛らしい山羊小屋を建て、庭の雑草や野菜のくずを食べてくれる山羊を二頭、迎えました。また、いつでも養蜂が始められるようにと、蜜蜂の巣箱も置いています。

自然と深く関わる里での暮らしから、小川さんの新たな物語がまた紡がれていくことでしょう。

一面に苔がむし、芍薬が咲く山小屋の庭。

山小屋のまわりは原生林で野生の鹿とも毎日のように遭遇する。

里に植えた果樹。桑の実は紫色になると食べ頃に。

レイズドベッドで区切らた植栽スペース。野菜やハーブがすくすくと育っている。

ノラコヤの壁は外も中も土壁。湿度を調整し、消臭効果も。

2か月のレンタル期間を過ぎ、そのまま引き取った山羊の海と空。

暑い時季は共同親権の友人一家のところで飼育。

もち麦やライ麦などの穀類も栽培中。

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