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大人のおしゃれ手帖 11月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2025年11月号

2025年10月7日(火)発売
特別価格:1640円(税込)
表紙の人:天海祐希さん

2025年11月号

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【更年期体験談】執着を手放すことで見えた新境地

閉経前後で心や体が大きく変化する「更年期」。
英語では更年期を「The change of life」と表現します。
その言葉通り、また新たなステージへ進むこの時期をどう過ごしていったらいいのか—。
聞き手にキュレーターの石田紀佳さんを迎え、さまざまな女性が歩んだ「それぞれの更年期」のエピソードを伺います。

今回お話を伺ったのは・・・
山藤陽子さん
1963年生まれ。上質で気持ちいいライフスタイルを提案する「YORK.」主宰。パフュームブランド「SCENT OF YORK.」デザイナー。https://york-tokyo.com/

失うものはもう何もないから

「自分なりの死生観に行きついて、ようやく前を向いていけるようになりました」
 
山藤陽子さんは、2年前に一人娘を亡くした。いわゆるコロナ禍が過去の出来事となったかのようになった夏、「それまでとても元気に過ごしていたのに……」
突然のことだった。

「ちょうど、親の見送りを経て、自分自身の健康など、これまでとは違うライフステージに入っていくのだと感じていたころでした。でも、まさか娘が先に旅立つとは、まったく、1ミリも思っていませんでした」
 
思考が止まり、眠れない日々が続いた。
「すべてを終わりにしたくもなりましたが、これで私がダメになって、何もできない人になっては、娘が悲しむと思って」
 
そんな中、娘さんが小学生のころから一緒に暮らしていたキジトラ猫のモカが病気になった。24歳と高齢だったが、病気らしい病気はしたことがなかった。

「私が泣いてばかりいるからかも、と感じました。そしてモカの看病をしながら、自分でできる植物療法を思い出し、自然とはじめていました」
5か月後モカを見送った。
まったくの一人になった陽子さんは、2024年の夏ごろ、「自分なりの死生観」を得る。

「誰にでも何にでも平等なのは、いつか生を終えるということ。娘はその大切な期間を選んで私の元へ来てくれた。私の人生の残りがどのくらいあるかわからないけど、しっかりまっとうしなくては、と腑に落ちました」

リリースして心が自由に

今の住まいは小さいけれども大空に窓が開けたマンションの一室が見つかった。
これまでしていた自宅ショップの仕事はたたんだ。

私たちが取材で訪れたときには、「狭いでしょ、こんなところにお呼びして申し訳ないわ」と言いながら、広い空に面した窓辺に案内してくれた。

「年齢を重ねると、パートナーをはじめとする人間関係や、仕事、家やモノなどいろいろと増えてきて、すべてに執着がつきますよね。それを手放すことはなかなかできませんが、この2年間で人間関係も仕事もシンプルになって、心が自由になった気がします」

陽子さんが長らくともに暮らしてきたビンテージ家具や作家ものの器も、ほとんど手放した。

「終活という訳でもないんですけど。物をリリースしていくうちに『時』のことにも気づきました。時は有限です。今この時でさえ、ご一緒している時間もカウントダウンですよね」
 
肌触りのいい布を敷いたベッドソファー、自家製を超えた出来栄えのクッキーと美しい寒天フルーツや豆乳野菜スープ、使い慣れた器でサーブされる香り高いお茶。
 
陽子さんの日常生活のワンシーンをともに過ごしながら、暮らしの心地よさに酔うような、以前の予約制のお店を彷彿とさせるおもてなし。
しかし、陽子さんは新しいフェーズに立とうとしている。

「すべてをなくした人にしかできないことをしていこう。物理的な執着がないのなら、それを最大限いかしてみようと。二拠点ではなく、移住でもなく、どこでも暮らせるということで、この場所を拠点として、毎年拠点をかえて旅するように暮らすのもよいかと思っています」

悲しみを癒やすために使ったフラワーレメディーが、スイートチェストナットとスターオブベツレヘムの2 種。

「おもてなし好き」な陽子さんは、まるで自分をもてなすように日々の食事やスイーツも作っている。

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