【松たか子さん×阿部サダヲさん】対談
「近づけば近づくほど自制する。でも、相手が心を開いてくれたなら……」
いつもすぐそばにいる、もっとも身近な他人――それが「夫婦」。
もう知り尽くしているようでいて、それでもわかりあえない部分もあり、という、大人ならではの関係の微妙さを、先ごろドラマで表現した阿部サダヲさんと松たか子さん。
共演を重ねて知ったこと、未知の部分など、おふたりの関係は、さて?
解き放たれた阿部さんを見るのが今からすごく楽しみです
阿部サダヲさん(以下、阿部) 僕たち、秋口までドラマで夫婦をやっていましたが(『しあわせな結婚』テレビ朝日系列)、今回の舞台をご覧になる方には、それをいったん忘れていただいたほうがいいですね。
松たか子さん(以下、松) そうですね。痛快に裏切ることになりそうなので。でも、それも気持ちよさそうですけど。
阿部 「ぜんぜん違うじゃん!」
松 「だから言ったじゃん!」って(笑)。私は以前、宮藤官九郎さんがシェイクスピアの『マクベス』をベースにした舞台に出演したことがあるんですが、オリジナル作品、そして演出を受けるのも初めて。台本を読んで、展開の速さに読むスピードが追いつかない! という初めての経験をしました。舞台での阿部さんを見ると、いつもすごく切ない気持ちになるんですが、今回は解き放たれた阿部さんの姿が見られそうで、今からすごく楽しみです。
阿部 そうですか。僕は……なんだかよくわからなかったですねぇ。
松 えーっ!
阿部 タイトルは「傍聴席」だし、確かに裁判は行われているんだけど、その最中にいろんなことが起きて、どこで何がいったいどうなるのか……。でも、松さんが出てくれるなら。松さんの魅力は、やっぱり声ですよね。以前に一度、舞台でご一緒したときも、声を聞いてみんな感動して、「もう今日の稽古、終わりにしましょうよ」って。
松 それ、ダメじゃないですか(笑)。
阿部 だって松さん、アメリカのアカデミー賞(2020年開催)でも歌ってる方ですよ? 僕は今回、ミュージカルスターの役ですけど、歌い上げ系の歌を歌うことになるのかな。でも、「3.5次元ミュージカル」って書いてあるし……やっぱり、ちょっと想像が追いついてないです。
松 私は演歌歌手の役ですが、演歌を歌うって、重心をグッと下げる感じ? 根を張る感じかなとイメージしてます。
阿部 絶対、合うと思います。宮藤さんは基本、ずっと笑ってて、笑ってるうちは大丈夫。黙り始めたら、注意してください。
松 なるほど、よくわかりました(笑)。
他人との間に壁を作らない
松さんは、すごくオープンな人
阿部 今回演じる夫婦は、離婚したいと言いながら、ずーっと裁判してる。実は、会いたいから裁判を続けてるんじゃないかって。
松 結構なバトルをするんですけど、仲が悪いようでいて、お互いをよくわかってるからじゃれあいのようになるんでしょうね。
阿部 そうですね、それが活力にもなってるし。ただ、子どもからしたら迷惑ですよね。テーマは「親バカ」だそうですけど、「バカ親」の物語。ちっとも理想的じゃない。
松 前のドラマのときもそうだったんですけど、幸せって何なんだろう?って感じですよね。でも、理想は理想でしかないのかな、とも思い始めてて。ファンタジーとして思い描くのは自由だけど、結局は今、目の前にある現実がすべてなのかなぁと。
阿部 夫婦でも他人でも、誰かと付き合うとき、僕が心がけるのは、あまり入り込まないってことですかね。僕、ここしばらくずっと松さんと一緒ですけど、なるべく距離をとるように自制して……。
松 そんな! 自制していただくほどの存在じゃないですよ(笑)。
阿部 でも松さんって、他人との間にあんまり壁を作らない、けっこうオープンな方なので。この間も、Google Map を見ながら「ここ、私の家」って。
松 アハハ! そう。すぐ教えちゃう。
阿部 でも、帰るのは早くて、終わったらすぐいなくなる。かっこいいんですよ。
松 フフフ。今回、私は初めて共演する方が多いんですが、稽古場ではお互いに何もない状態から始めるわけですから、一生懸命相手を見て、よく話を聞いてっていうのを、とにかくやっていくっていう感じですね。見て、聞いて「おもしろいな」「すごいな」って感じるのが幸せだし、日々、勉強になる……やっぱり、目の前にあるものがすベてなんだなと思います。
〔 舞台 〕
大パルコ人⑤オカタイロックオペラ
『雨の傍聴席、おんなは裸足…』
ミュージカル俳優の獅子頭吠(阿部サダヲ)と演歌歌手の観音院かすみ(松たか子)。
長男リッケン(峯田和伸)と次男バッカー(黒崎煌代)、とくに夫妻が天才と信じるリッケンの親権を巡って重ねた離婚調停の口頭弁論は100回超。
歌唱やバンド演奏を盛り込みながら展開する世紀の夫婦バトルを、客席という「傍聴席」で目撃、体感する白熱のステージに。
作・演出: 宮藤官九郎
音楽: 上原子友康(怒髪天)/峯田和伸(銀杏BOYZ)
出演: 阿部サダヲ 松たか子 峯田和伸 三宅弘城 荒川良々
黒崎煌代 少路勇介 よーかいくん 中井千聖 宮藤官九郎 藤井隆
11月6日(木)〜30 日(日):PARCO 劇場(渋谷PARCO8F)
ほか、大阪、仙台公演あり
俳優
阿部サダヲさん
1970 年生まれ。最近の出演作にNHK 連続テレビ小説『あんぱん』、ドラマ『八月の声を運ぶ
男』など。スペシャルドラマ『不適切にもほどがある!』が2026 年1月4日に放送予定。
俳優
松たか子さん
1977年生まれ。最近の出演作に映画『夏の砂の上』『ファーストキス 1ST KISS』、テレビドラマ『スロウトレイン』など。『アナと雪の女王』ほかディズニー作品の吹替、歌唱も多数担当。
photograph: Kentaro Hisadomi styling: Chiyo( 阿部さん),Motoko Suga( 松さん) hair & make-up: Tomomi Nakayama( 阿部さん), Noriko Sugimoto[WHITNEY] ( 松さん) text: Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖2025年12月号より抜粋
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