【若葉竜也さんインタビュー】
「僕はやっぱり、人が好きです。面倒くさいですけど(笑)」
36歳、すべてにシンプルです

映画でもドラマでも舞台でも、若葉さんが登場すると、軽いタッチのものも、重厚感のある作品も、その格が一段階上がるよう。一瞬でその作品に風穴を空け、観る者を鷲掴みにして離しません。そんな俳優としての腕っぷしの強さはかなりのもの。なぜそんなことが可能に? 役を構築する道筋が決まっているのでしょうか。
「いやいやいや、全然そんなことはなくて。例えば『神は見返りを求める』という映画では、現場に入ってからもず~っと台本を見てセリフを覚えていました。普通は頭で咀嚼して言葉を選んでしゃべりますから、セリフを口に出すときにちゃんと思考が入ります。でもあの役は中身もなにもない空っぽの人。頭を使わなくても言葉が出てくるようにしないと、彼の空っぽさは滲んでこないだろうなと。要は個人的に大嫌いな、ただセリフを覚えてただ言っている俳優をやったというか(笑)。それに対してモモの場合は、圧倒的に思考を入れて、モモという人物を彼自身が演じている、そんな感覚でした。やり方は役によって千差万別で、ものすごく試行錯誤しています」
それでいて、「日常でやってきたことしか(表現として)出ない」とも。
「背伸びしても、映画館のスクリーンに映し出されたらすべてがあぶり出されてしまう。人の言葉を聞いたり、それを受けて自分もしゃべってみたり、誰かとなにかを共有したり。そうしたなかにヒントや種は散らばっています。僕はやっぱり、人が好きです。面倒くさいですけど(笑)」
考え抜いて構築したはずの、切れ味鋭い演技をし続ける若葉さん。自宅に植物の部屋があるというので、オフのときは植物の世界へ逃げ込むように過ごすのかも?と勝手な想像をしました。
「それは単純に、植物に合わせた温度で生活できないから専用の部屋を作っただけです。なんか僕、深読みされるタイプなんですけど(笑)、そんなに深い意味はなかったりします」
育てているのは「アガベ」などの多肉植物。「格好いいから」という理由で育て始めたそう。格好いい!と思うものに触れ、人との関りのなかに生き、演じることと真摯にまっすぐ向き合う。36歳のいまは、「すべてにシンプルです」と若葉さん。余計なことに悩んだりはしない。悩むのは、「仕事をするということ」についてだけ。
「役者って、アマチュアでいい。プロの役者と言えるところは、監督が演出のなかで言語化できなかったところをキャッチする能力かなと。監督の言いたいことを感覚的に体温でキャッチし、監督が思い描く以上のものを演技として提出したい。それだけです」
そうした‟アマチュア”の姿勢をキープするのは、年齢を重ね、キャリアを積むとどんどん難しくなるようにも思えます。
「僕は現場以外緊張とかないんですよ。誰と話してもどんな状況でもどんなこと起きても、全然なんとも思いません。ただ、撮影現場ではものすごく緊張します。映画の現場だけは恐怖なんです。たくさんの人に見られるなか、緊張しないほうがおかしい。安心したら、過信ですーー 。現場で役者は不安じゃなきゃダメだと思っているんですよね」
PROFILE
若葉竜也(わかば・りゅうや)
1989年生まれ、東京都出身。2016年映画『葛城事件』で注目を集め、2021年今泉力哉監督の『街の上で』で映画初主演。最近の主な出演作に、ドラマ『おちょやん』『群青領域』『アンメット ある脳外科医の日記』など、映画『生きちゃった』『AWAKE』『あの頃。』『くれなずめ』『神は見返りを求める』『前科者』『窓辺にて』『愛にイナズマ』『市子』『ペナルティループ』『ぼくのお日さま』『嗤う蟲』『てっぺんの向こうにあなたがいる』など。
[映画]
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
1978年に巻き起こった、日本で初めてのパンク・ロック・ムーブメント「東京ロッカーズ」。インディーズというスタイルを生み出し、ライブにオールスタンディングを導入し、数多くのバンドが集うロック・フェスを開催。いまや当たり前となったカルチャーの原点を築き、日本の音楽シーンに多大な影響を与えた若者の姿を描く。原作は彼らのカメラマン兼マネージャーだった写真家・地引雄一の自伝的エッセイ「ストリート・キングダム」。田口トモロヲ監督と脚本家・宮藤官九郎が、『アイデン&ティティ』(2003年公開)以来、再びタッグを組んで手がけた作品。
●監督:田口トモロヲ
●原作:地引雄一「ストリート・キングダム」
●脚本:宮藤官九郎
●出演:峯田和伸 若葉竜也 吉岡里帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ 神野三鈴 森岡龍 山岸門人 マギー 米村亮太朗 松浦祐也 渡辺大知 大森南朋 中村獅童
●配給:ハピネットファントム・スタジオ
●3月27日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会
撮影/本多晃子 スタイリスト/タケダトシオ[MILD] ヘアメイク/FUJIU JIMI 取材・文/浅見祥子
この記事を書いた人
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