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大人のおしゃれ手帖 4月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2026年4月号

2026年3月6日(金)発売
特別価格:1640円(税込)
表紙の人:麻生久美子さん

2026年4月号

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【神野三鈴さんエッセイ】60年分のありがとう。
「59歳で初めて同窓会というものに出席した…」

ワンピース参考商品/エイコフル、襟、イヤーカフ/ともにデザイナー私物

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59歳で初めて、同窓会というものに出席した。
去年の夏に中学のときの同級生が亡くなった。そのお葬式で再会したクラスメートたちが企画した「だいたい60歳、そして還暦を迎えられなかった友だちを偲ぶ会」に。

卒業後、父の事業の失敗などで流転生活を送っていた私は、しばらく「行方不明、連絡を乞う」リストに名前があったくらい、ひとりの親友を除き、学生時代の友人たちとは疎遠になっていた。

学生生活の青春が眩し過ぎて、自分とは別世界のように感じていた。

重い腰を上げたのは、亡くなった彼がユーモアに溢れたイギリス紳士(中学生)のようなヤツで大好きだったこと。
そして私に来るように手を焼いてくれた友人の気遣いがありがたく、
45年ぶりに「あの季節」の仲間たちと自分に会いに行くことにした。

このエッセイにも度々出てくる、子ども時代の何年間かを過ごした「明星学園」は、私という人間が形成される上で、大きな影響を受けた場所だ。
私と同じく自由に育てられ過ぎて、社会に出て苦労しただろうみんなのことを思い出すことが多くなり、素直に会いたくなった。

自由平等を教育理念に掲げ、戦争中も反戦を訴えた与謝野晶子や北原白秋の名が創設者に並ぶ。
障がいのある子も帰国子女も、様々なバックグラウンドと個性を持った教師と生徒が少ないクラス編成のなかで暮らしていた。

それはカラフルで、賑やかで、ある意味、無法地帯だった。
嬌声が上がる。

どうしても「おたまんぎょ」というあだ名しか思い出せない懐かしい顔、チラ見した胸の名札にも「おたまんぎょ」とだけ書いてある。

60のおっさんを「おたまんぎょおお!」と呼んだ途端、あの時間にワープした。

司会の話を誰も聞いてないのも昔のまま。一度だけ静寂が訪れたのは「60歳を迎えられなかった友」の名を読み上げたときだった。

イギリス紳士の彼だけではない。
思ったよりも多かった。

最初に読み上げられたのは、私の隣の席だった盲目の友人の名だ。
癌が彼女から瞳も足も最後は命も奪った。
あんなに壮絶な彼女の、12年という短い人生を共に過ごし、生まれて初めて友の死を経験したのに、長い年月、彼女を思い出すことがなかった自分にショックを受けたが、すぐに、彼女のことが生き生きと蘇った。

彼女だけじゃない、その後に続く懐かしい名前。先に逝った友だちにみんな思いを馳せていた。
それはまるで「忘れられたとき、人は二度死ぬ。」という言葉のその逆の、彼らが生き生きと蘇るような時間だった。

ここにいない彼らに、もう一度出会えたような気がした。
それから、様々な事情で今日来られなかった人の話題になった。本人や家族の病気や介護など、60歳の現実を生きている友の近況があった。

ずっと気になっていたのに連絡をせず、会っていなかった子、リオが遅れてやって来た。
リオは外国の血が混じっているような美少女で、私と真逆、クールで繊細で、不思議な魅力のある子だった。

誰かとつるむことのない彼女が何故か私とは仲良くしてくれて、ウチに泊まりに来たりしていた。
母親同士がドリトル先生を教材にした国語の授業の大ファンで、教室の一番後ろの席の机にふたりも参加したりして、交流があったことも関係していたかもしれない。

授業を熱心に聞いていたリオのお母さんはそののち、大絵本作家となる。
彼女は昔のまま、何とかこの世界とバランスをとっているような繊細さと愛情深さを胸に秘めて、でも少し強くなった姿で現れた。

私たちはただ名前を呼び合い抱き合った。そしてその後、私たちは今、出会い直せた豊かさを実感する時間を過ごすことになる。

人生100年時代と言われているけれど、それでも60年生きられることは当たり前ではないのだ。生かされている。
そのなかで沢山の人に出会いながら。

私の喜び、悲しみ、その全てに「だれか」がいる。そう、これを読んでくださるあなたも私の喜びなのです。

生きていてくれて〝ありがとう〟

撮影に準備してあった草花と同級生が作った服で、ワイワイあれこれコーディネート。撮影に準備してあった草花と同級生が作った服で、ワイワイあれこれコーディネート。
スタイリングもヘアメイクもきっと子どものころからの大好き!が、ずっと続いて今があるのを確信。仕事にすることができて幸せ者な私たち。

『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』(くぼしまりお・著/角川書店)。リオが50 代になって80 代の母、絵本作家の角野栄子さんのためにカラフルで動きやすくてラクチンで何より着ていて楽しくなる洋服を作った。
深い愛情と未来の自分もこうでありたい願いが込められいる。『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』(くぼしまりお・著/角川書店)も刊行。

MISUZU KANNO
神奈川県鎌倉市出身。第47回紀伊國屋演劇賞個人賞、第27回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。代表作に舞台『メアリー・ステュアート』『組曲虐殺』、映画『TOKYOタクシー』、ドラマ『あんぱん』など。1月期ドラマ『未来のムスコ』(TBS)が放映中。今後、映画『レンタル・ファミリー』、『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が公開予定。


text: Misuzu Kanno photograph: Isao Hashinoki[nomadica] styling: Kei Taguchi hair & make-up: Yumi Narai

大人のおしゃれ手帖2026年3月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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  • ワンピース参考商品/エイコフル、襟、イヤーカフ/ともにデザイナー私物
  • 『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』(くぼしまりお・著/角川書店)。
  • 撮影に準備してあった草花と同級生が作った服で、ワイワイあれこれコーディネート。

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