【7月の注目アート展】
唯一無二のデ・キリコ芸術をご堪能あれ!
日本では10年ぶりの開催となる孤高の画家ジョルジョ・デ・キリコの大回顧展。
90歳で没するまで己の創作姿勢を貫いた、唯一無二のデ・キリコ芸術をご堪能あれ。
20世紀を代表する画家ジョルジョ・デ・キリコ(1888‐1978)。具象的でありながらも、不自然な空間表現や脈絡のないモティーフの配置により、日常の奥に潜む謎や神秘の存在をほのめかす彼の「形而上絵画」は、同時代や後代の画家たちに大きな影響を与えました。
本展ではデ・キリコの初期から晩年までの作品をご覧いただけます。
いちばんの注目はやはり形而上絵画です。
1910年の秋、デ・キリコは見慣れたフィレンツェの広場がまるで初めて見る景色であるかのような感覚に襲われ、絵画の構図を閃きます。これが形而上絵画誕生のきっかけとなりました。
「イタリア広場」のシリーズは、人気のない広場、長く伸びた影、不自然な遠近法を駆使し、不安や空虚さ、憂愁といった感覚を生じさせます。
《バラ色の塔のあるイタリア広場》はその代表的な作品。奥に見える塔は、周囲の建物に比べて明らかに巨大で、どこか夢の中の情景のような印象も与えます。
マヌカン(マネキン)を描いた《予言者》や《形而上的なミューズたち》もこの時代の作品。
マヌカンは、第一次世界大戦の勃発と時を同じくして描き始めたモティーフで、理性のない、あるいは無力な人間の象徴となっています。
本展では絵画以外にも、デ・キリコが手掛けた彫刻、挿絵、舞台美術も展示されます。
デ・キリコ芸術の全体像に迫り、その魅力を堪能できるまたとない機会です。
ぜひ会場でお楽しみください。
トップ掲載作品:《形而上的なミューズたち》 1918年 油彩・カンヴァスカステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与)© Castello di Rivoli Museo d’Arte Contemporanea, Rivoli-Turin, long-term loan from Fondazione Cerruti© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024
教えてくれたのは・・・
東京都美術館学芸員
髙城 靖之さん
慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。専門は17世紀オランダ絵画。これまで、『ハマスホイとデンマーク絵画』(2020年)、『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』(2022年)などの展覧会を担当。
『デ・キリコ展』
場所: 東京都美術館(東京都)
開催:開催中〜8月29日(木)
開館 :9:30〜17:30(金曜日は〜20:00まで。 入室は閉室の30分前まで)
閉館 :月曜日、7月9日(火)〜16日(火)
※ただし、7月8日(月)、8月12日(月)は開室
050-5541-8600(ハローダイヤル)
©東京都美術館
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