【おすすめ新作映画3選】
今を生きることの大切さを伝えてくれる3本
逃れられない後悔や、消えない記憶。
過去と現実の狭間で不器用に揺れ動く人たちの物語は、今を生きることの大切さを伝えてくれる。
『2度目のはなればなれ』
©2023 Pathe Movies. ALL RIGHTS RESERVED.
戦争の記憶と痛みに向き合う人生最後の旅
バーナードとレネは、イギリスの老人ホームで穏やかな日々を送っていた。
ある日、バーナードはノルマンディー上陸作戦70年記念式典に参加するために、ひとりでこっそりフランスへ。SNSを通じて、彼が行方不明だというニュースが大きな話題になってしまう。
89歳の退役軍人が、ホームを抜け出してノルマンディーへと向かったという実話をもとにした物語。何年経っても死に直面した戦争の記憶がフラッシュバックし、心に残った傷が癒えることはない。
それでも過去と向き合ったバーナードの勇気と、寄り添い続けた夫婦の愛に触れるとき、心にじんわりと染みてくるのは“2度目のはなればなれ”というタイトルの意味。
この映画が引退作となったイギリスの俳優、マイケル・ケインの滋味あふれる名演を目に焼き付けたい。
監督:オリバー・パーカー
出演:マイケル・ケイン、グレンダ・ジャクソン
TOHOシネマズシャンテほかにて公開中
『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』
©2024「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」フィルムパートナーズ
過去を抱きしめて演奏を続けた少女のようなピアニスト
今年の4月に急逝したピアニスト、フジコ・ヘミング。
2018年に公開された『フジコ・ヘミングの時間』の後も監督がカメラを回し、4年間を追いかけたドキュメンタリーが公開される。
90歳を超えても世界各地でピアノを弾き続けたフジコ。コロナ禍での祈りのような無観客コンサートや、疎開していた岡山での演奏、彼女が愛したパリでのコンサートの様子も収めた。
フジコの演奏が特別なのは、楽しいことばかりではなかった人生を丸ごと抱きしめて奏でられる音色が、多くの人の心を震わせるからだろう。
サンフランシスコの自宅ではお気に入りのものたちに囲まれ、自分サイズに繕い直した洋服を着て、絵を描き、いつもそばには愛する犬と猫がいる。言葉の端々から伝わる少女のような人柄もチャーミングだ。
監督・構成・編集:小松荘一良
出演:フジコ・ヘミング
新宿ピカデリーほか全国公開中
〈Netflix〉
『ファインド・ミー・フォーリング』
キプロスの陽光に包まれた大人のための再生物語
復活を期してリリースしたばかりのアルバムが失敗に終わり、活動休止を覚悟してキプロス島へと移住したロックスターのジョン・オールマン。
眺めのいい崖の上の家に立つ家に住み始めたものの、自殺志願者が訪ねてきてトラブル続き。そしてかつての恋人との再会が、思いがけないドラマを生んでいく。
ハリー・コニック・Jr.が落ち目のロックスターを演じた大人の再生物語。
新しい場所で自分を見つめ直したジョンと、誰にも心を委ねずに生きてきたヒロインが、どんな選択をするのか。ふたりを祝福しているかのようなキプロスの陽光がまぶしい。
地元のレストランで歌うキーパーソンを演じたのは、日本人の血を引くアリ・フミコ・ホイットニー。彼女の透明感あふれる歌声がこの作品をより魅力的なものにしている。
監督:ステラナ・クリリス
出演:ハリー・コニック・Jr.、アグニ・スコット、アリ・フミコ・ホイットニー
Netflix映画『ファインド・ミー・フォーリング』独占配信中
選・文/細谷美香
大人のおしゃれ手帖2024年11月号より抜粋
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