【朝ドラ出演で話題! 富田望生さんインタビュー】 「ひとりじゃできないことの素晴らしさ」を感じた瞬間
誰に対しても、その人を知ろうと向き合います
「誰に対しても、嫌いという感覚があんまりなくて」。こちらの目をまっすぐに見返し、ニコニコしながら、富田さんは言います。
「苦手なところがあっても、そこも面白い!と思う。人だもんなあって。そう思うのは役者だから? それもあるかもしれません。人の自然な動きや言葉を、いつでもキャッチしようとするので。誰に対しても、その人を知ろうと向き合います。役者さんって人見知りの方が多いですよね? 私は子どもの頃から人見知りをしなかったので、ビックリしました。この方もあの方も!?って(笑)」
今回、灯の姉を演じたのは、共演経験もある伊藤万理華さん。最初はなかなか話せなかったけれど今は親友のような関係性だと言い、「カメラが回っていない時も常に寄り添ってくれて……」と、伊藤さんへの感謝の言葉が止まりません。その演技同様、人の心を掴むパワーあふれる富田さんに興味が深まります。
「学生の頃は先生にしょっちゅう怒られていたし、勉強が好きではなく、宿題をまったくやらないタイプで。でも、読書感想文や作文は得意でした。思ったことを書くだけなんですけど、夏休みの宿題も作文だけは先に出来ていました。今、役のための勉強が苦痛ではないのは、やっぱり演じることが好きだからかもしれません。それに人間関係を作る経験は24歳にしては積んでいるのかも。生まれる前に父が亡くなり、震災を機に福島から東京に引っ越して。転校をして環境の違いを味わったりしたので」
人見知りをしている場合ではない、そんな厳しさを幼い頃から経験したことが、人の心を敏感に感じ取る感性を育てたのかもしれません。そうして育まれた感性は、趣味の写真にも活きています。
「見たものを残すのが好きなんです。これを撮りに行こう!とカメラを持っていくと、撮りたい瞬間がなかったりするのに、何気なくバッグにしまっていると、ここここ! パシャッみたいな(笑)。撮りたいと思うのは人。やっぱり人が好きなんです。元々はスマートフォンで撮影していましたが、俳優の友人の『フィルムカメラをやってみたら?』というひとことで、フィルムカメラを使うように。思うように写っていない時もありますが、それも受け入れる。キレイなことがすべてではないと思うから」
そんな彼女が「俳優は天職だと思います」というのもすんなりと響きます。
「今回とくに思ったのは、ひとりじゃ出来ないことの素晴らしさでした。それでいて誰よりもその役は自分が理解していると思う、その両方が合わさらないと作品づくりは出来ない。その感覚がたまらないのかもしれません」
今後、年齢を重ねてより味わいを増すような俳優になるはず。そんな未来が、確かに見える気がします。
「いつかお母さん役をいただいたら、母になるに至るまで、様々な経験を積んだ人である。そんな深みがきちんとにじむ役者になりたい……。そうなれることを、ずっと目標にしています」
PROFILE 富田望生さん
福島県いわき市出身。映画『ソロモンの偽証』(15)の1万人が参加したオーディションでメインキャストに選ばれたことをきっかけに、俳優としての活動を開始。その後、話題作に次々と出演。主な出演作品は映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17)、『SUNNY強い気持ち・強い愛』(18)、『日日芸術』(24)、ドラマでは『宇宙を駆けるよだか』、『教場』、『だが、情熱はある』、連続テレビ小説『なつぞら』、『ブギウギ』などがある。
映画『港に灯がともる』
1995年、神戸・長田に暮らしていた在日コリアン家族の下に生まれた灯の葛藤、成長を描く人間ドラマ。『心の傷を癒すということ 劇場版』『カムカムエヴリバディ』の安達もじり監督作。
●監督・脚本:安達もじり
●脚本:川島天見
●音楽:世武裕子
●出演:富田望生、伊藤万理華、青木柚、山之内すず、中川まさ美、MC NAM、田村健太郎、土村芳、渡辺真起子、山中崇、麻生祐未、甲本雅裕
●製作:ミナトスタジオ
●配給:太秦
●2025年1月17日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース他全国順次公開
©Minato Studio 2025
撮影/本多晃子 スタイリスト/シュンキ ヘアメイク/千葉万理子 取材・文/浅見祥子
シャツ/ノルマン、その他/ カウンシル フラット ワン
この記事を書いた人
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