松之助オーナー・平野顕子さんの N.Y.からおすそ分け vol.5
NYチーズケーキ
7月30日はナショナルチーズケーキデー。
この記念日を誰がいつ決めたのかは今も不明だそうですが、毎年ニューヨークのスーパーや有名チーズケーキ専門店には、いつもよりも多くのバリエーションのチーズケーキがショーケースに並び、この日だけはチーズケーキが半額になるんです!
ニューヨークでは、お店ごとにフルーツを飾ったり、チョコレートを混ぜたりして、見た目の工夫をこらしています。
どこのお店を見ても一つも同じものがなく、見ているだけで楽しくなります!
私もこの日はお気に入りのお店でチーズケーキを調達したり、時間があるときはチーズケーキをつくって家族でシェアして楽しみます。
ニューヨークチーズケーキの始まりは1900年代。
アメリカに移り住んだユダヤ人がチーズケーキのレシピを持ち込んだことがきっかけといわれています。
そのレシピがニューヨークで改良を加えられ、現在のチーズケーキのような形になり、色々なお店で提供されるようになったそう。
そして、ニューヨークでよく見られるチーズケーキのことを、地元の人たちがいつのまにか「ニューヨークチーズケーキ」と呼ぶようになり、世界的にも親しまれるようになったとか。
ニューヨークチーズケーキは、しっかりとした食べ応えと濃厚なチーズの味わいが楽しめるのが特徴です。
チーズケーキはみなさんご存じの通り、大きく分けてベイクドとレアの2種類があります。
ベイクドの中でも直焼きとバスタブ(湯せん焼き)の2つの製法があります。
バスタブは文字通り、オーブンの中で天板にお湯を張り、蒸気でケーキ全体を低温で蒸し焼きにするので、表面に焦げ目はなく、なめらかで美しく仕上がります。
中心部がやや緩い状態でオーブンを止めて、そのままオーブンの中で1時間ぐらい寝かすのです。
こうすることでしっとりとなめらかな食感で、軽めな後味のチーズケーキになります。
ニューヨークチーズケーキと呼ばれているものは、バスタブタイプがメインです。
直焼きは、型にグラハムクッキーを砕いて溶かしバターを混ぜ合わせたものを敷いてフィリングを流し込み、そのまま天板にのせてほんのり焼き色がつくまでオーブンで加熱します。
焼き上がったらオーブンからすぐ取り出します。
表面に焼き色がつくことで香ばしく、まったりした濃厚な味わいになります。
各店舗で中身が少しずつ違うと思いますが、主な材料はクリームチーズ、サワークリームなどで、材料のバランスやオーブンの温度、オーブンから出すタイミングで味わい、食感に違いを出しています。
暑い時季にも合うチーズケーキとして人気が高いレアチーズケーキは、砕いたクッキーなどでつくった生地の上に生クリームとクリームチーズを混ぜたフィリングを流し込んで固めたものです。
初心者でも手軽につくって楽しむことができます。
ベイクドの「温製」に対し、「冷製」のチーズケーキともいわれていて、柔らかくクリーミーでひんやりした食感がさっぱりと食べやすいです。
松之助のチーズケーキは?
私は数あるチーズケーキの中でも、ニューヨークチーズケーキの主流であるベイクドと、レアの中間のようなバスタブタイプが好きで、松之助でも数種類つくっています。
定番のニューヨークチーズケーキはグラハムの台がないタイプなので、松之助ではグラハムをかけてお出ししています。
しっとりクリーミーなチーズケーキとサクサクしたグラハムクッキーの食感のコンビネーションが絶妙です。
また、シンプルなケーキだけにお皿にもこだわって、ユニークなものを選ぶといいですよ。
お店のお皿は、すべて私がアメリカでいいなと思うものを少しずつ調達してきたもの。
文字のアクセントやクラシカルな絵柄やリムのカッティングなど個性的でユニークなお皿は、シンプルなチーズケーキをひとつ置くだけでもぐっと可愛く華やかな雰囲気になるんです。
次回は、私のチーズケーキレシピをご紹介します。
ぜひ楽しみにしていてくださいね!
平野顕子
料理研究家、スイーツ店「松之助」オーナー
京都の能装束織元の家に生まれる。47歳でアメリカ・東コネチカット州立大学に留学。17世紀から伝わるアメリカ・ニューイングランド地方の伝統的なお菓子作りを学び、帰国後、京都・高倉御池に「Café & Pantry 松之助」、東京・代官山に「MATSUNOSUKE N.Y.」と、アップルパイとアメリカンベーキングの専門店をオープン。京都と東京にはお菓子教室を開校。2010年、京都・西陣にパンケーキハウス「カフェ・ラインベック」をオープン。著書に『アメリカンスタイルのアップルパイ・バイブル』(河出書房新社)、『「松之助」オーナー・平野顕子のやってみはったら! 60歳からのサードライフ』(主婦と生活社)など多数。プライベートではひとまわり以上年下のイーゴさんと再婚し、サードライフを過ごす。
text/Emiko Yashiro(atrio)
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