【毎熊克哉さんインタビュー】 「いろいろな人の記憶を旅するような映画です」
演技には「自分の本当」を使う
廃工場を使った、だだっ広い教室で演技レッスンを行う蝶野。ある日のレッスンは、「足元のモノを拾ってください」というお題で始まります。すると生徒は、そこにあると想定したモノを拾う動きをする。それは何か? 例えば石なら、拾うときにどんな動きをするのか? その人の記憶の集積が表現に直結します。
「演技には自分の体と心を使います。例えばアニメのキャラクターを演じるなら、アニメーションを参考にすることはあっても、感覚的なものは借りてくることはできません。それがどんな石で、その動作にどんな感情をのせるかを決めるのは、その人個人。自分が今まで見てきた石、その記憶から、演じる際の石をつくり上げる。それがまさに‟演技レッスン”です。その人の感覚(記憶)を掘っていく。だから演技って面白いんです。ひとつのアクションを“本当”にするには、自分の“本当”を使わないといけないんです」
俳優さんは演技をどのようにしているのか、観る側にとっては謎に包まれた部分も多いもの。自分の感覚を使うことによって、演じる役と自分自身と、どちらが本当の自分? そんな風に混乱することはないのでしょうか。
「結局は全部が自分なんだと思います。でも、演じているときは動物のように感覚で動くのですが、過激に怒るシーンで本当に人を殴ってしまったらダメで。そうしないのは、‟これは映画の撮影”という視点があるから。そのバランスは人によって違うでしょうが、僕自身はかなり客観性が強いタイプかなと。好きな俳優さんはより動物的だったりするんですけど」
毎熊さん自身が、不思議な俳優なのは確か。蝶野のように極端に浮世離れした謎めいた役柄でも、ごく自然に当たり前のように画面のなかに存在してみせます。
「自分ひとりでどう、というよりかは人に合わせているのかなと。自分で監督するわけでも、脚本を書くわけでもない。誰かが用意した‟土台”に合わせる。今回なら串田さんが撮った過去の作品や脚本を見て、今回はどう撮ろうとしているのか? では、この役としては……と考えていきます。現場でモニターはチラッと雰囲気を見るくらいですが、監督と撮影部の話はよく盗み聞きするんです(笑)。串田さんの映画はカット割りも緻密で映像ならではの表現なので、そこからズレたことをしても本編には残りませんから」
そうして完成した映画は、「想像より見やすかった」そう。
「時間軸が行ったり来たりすることもあって、脚本の段階ではもっと難しく考えていたんです。答えをくれるのではなく、答えを探すきっかけをくれる映画だなと。この作品は配信もあって家でも観られますが、やっぱり劇場という‟箱”の、暗がりのなかで観ることをおすすめします。見終えたあとの時間をかみしめ、誰かと記憶を一緒に探るような感覚がいいんですよね」
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