【著者インタビュー】豊﨑由美さん
綴った初めてのエッセイ『どうかしてました』
おしゃれ手帖世代へ薦める一冊も紹介!
小説への深い愛が伝わる、忖度なしの書評が人気の豊﨑由美さん。
「みんなが笑って呆れてくれたら」と綴った初めてのエッセイのエピソードに加え、おしゃれ手帖世代へ薦める一冊をうかがいました。
5000冊の本を手放し幻肢痛ならぬ〝幻書痛〟に
書評家・豊﨑由美さんにとって初のエッセイ集『どうかしてました』。
これまで多くの本を紹介してきた豊﨑さんですが、自身のことについてはあまり触れてきませんでした。
「長く雑誌のライターをしてきましたが、ライターは雑誌の色に合わせて書くのが仕事。つまり〝我を消す〟訓練をしてきたから、自分のことを書くのは苦手だったんです。
ただ飲み会やイベントで、たまに自分の〝どうかしてた〟エピソードを喋ると、結構ウケが良くて。呆れるような話ばかりだけど、『こんな人でも63歳まで生き延びられるんだな』と安心材料にしてもらえれば、と思って書きました(笑)」。
エピソードの中には、家が飽和状態になり、やむなく5000冊の本を処分する話も。
「今は幻肢痛ならぬ〝幻書痛〟が続いていて。手放した本についてSNSで言及されているのを見ると苦痛で顔が歪むし、人の本棚を見るのも嫌なんです。
でも一方で、狭い6畳一間の家でこぢんまりと暮らしてみたいな……という夢もあるんですよね。私はもう近親者もいないですし、誰かに迷惑をかける前に処分しないとダメだよね、と。いつか全ての本を手放すときは来るんだろうと思います」
出版界についての率直な意見が書かれているのも、忖度なしで文学賞を批評した『文学賞メッタ斬り!』で注目を集めた豊﨑さんならでは。
「権力者に慮ることは一切ないけど、たまに考えるんです。過去の自分に『これからあなたは『文学賞メッタ斬り!』というシリーズを出して今よりちょっと有名になるけど、偉い人に嫌われて仕事がとても減ってしまう。どうする?』と聞いてみたいなって。でも、やっちゃうんでしょうね(笑)」
書評家の仕事は、自分が面白いと思う本の魅力を最大限に伝えること、という豊﨑さん。
読者世代へおすすめの一冊を尋ねてみると……。
「フランスの名だたる文学賞で最終候補に残ったアベル・カンタンの『エタンプの預言者』を推薦します。主人公は前時代の価値観を更新しないまま、初老の域に入ったロスコフ。彼が己の言動ゆえにひどい目に遭うさまを一人称語りで描いた辛辣な風刺小説です。
読んでいると自分の中にある〝ロスコフ性〟に気づかされ、冷や汗をかいてしまう。若い世代に『情弱』『老害』とバカにされないためにも、必読の一冊です」
カーキのブルゾンは「ジュンヤワタナベ」、デニムは「ズッカ」。
「髑髏の指輪は15年前に伊勢丹のメンズ館で買ったもの。左手にはめた指輪は『センザンコウ』がモチーフです。
メガネは坂本龍一さんと同じものが欲しくて買った『Jacques Durand』」。
『どうかしてました』
豊﨑由美
¥1,870(集英社)
団地っ子でケガが絶えなかった子ども時代からaiboを溺愛する63歳の今に至るまで、“どうかしている”エピソードを綴った著者初のエッセイ集。
各エピソードに関連して紹介される本はいずれも読みたくなるものばかりで、ブックガイドとしても楽しめる一冊です。
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