【田中麗奈さんインタビュー】 「いまも、自分のトリセツを作るためのデータを集めている最中です」
短い撮影期間で作り上げた濃密な作品
不倫相手の涼太を演じたのは遠藤雄弥さん。撮影中は「ふたりで映画の話ばかりをしていました」と田中さん。そうして脚本に書かれていない部分を想像し、監督やスタッフを交えてディスカッションしながら作品作りは進みました。
「ふたりはどれくらいの頻度で会っているのか? このシーンは何時くらいの出来事? と想像していきました。スーパーの袋を持っていたのは彼に早く会いたいから? できるだけ長い時間一緒にいるために、夕飯の買い物を先に済ませた? もしかしたら、自分が主婦であることを忘れないためにスーパーの袋をホテルに持ってきたのかも……とも思えたり。わざと遠くのスーパーに行ったのかもしれないし、いかようにも想像できます。とはいえ、正解を決めなくていい気もします」
「沙穂佐穂は‟こういう人”と言い表しにくいくらい普通の人」と田中さん。別れを決意した彼女は、最後に「名前を呼んでほしい」と涼太にお願いします。
「‟××ちゃんのお母さん”とか‟〇〇さんの奥さん”と呼ばれる日々のなか、自分というものの存在が少し薄れてしまう。そんな風に自分を見失いそうなときに涼太と出会ったのかも。自分の名前、私という個人で人と出会うことが、彼女にはなかなかなかったのかな?って、どれも想像でしかありませんけど……。私の場合はお仕事で、‟田中麗奈”として接してくれる方たちと長い付き合いがあって、家庭とはまた違う世界があります。自分にとってはそのバランスがいいし、救われているところがある気がします」
夫がいて、まだ幼い娘がいて。どうにもならない想いを抱えながら主婦として日常を積み重ねる姿と、涼太の前ではかわいらしさをまといながら心の揺れと孤独を抱える。あやういバランスで生きる沙穂を、田中さんは繊細に演じます。
「撮影期間は短かったのですが、とても不思議な時間でした。ずっと集中していたので、夢のように終わってしまった感じです。自分だけど、自分ではないような日々。ただただ、外山作品の一部になれたことが嬉しかったです」
26分の短編ながら、濃密な時間の流れを感じさせる映画が完成しました。
「撮影前に外山監督から、ウォン・カーウァイ監督の『花様年華』のお話が出て。完成した映画を観たときに、ちょっとそのことを思い出しました。大人の映画、ですよね。しかも短編で、ふたりの関係が佳境を迎えたところから切り取っている。ひとつの作品として、とても色濃いものができあがったと思います」
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