【必見の特別展】万博イヤーの大阪に国宝が集結! 大阪市立美術館「日本国宝展」でニッポンの美を堪能
大阪の誇り、大阪市立美術館リニューアル秘話
私が奈良女子大学に通っていた頃、定員オーバーになるほどの人気講義がありました。その講義を担当されていたのが、当時奈良国立博物館に勤務されていた内藤栄先生。以来、私は内藤先生ファンでして、奈良博にお勤めの間は毎年のように正倉院展などに伺っていました。そんな内藤先生が大阪市立美術館の館長に就任されたのは、リニューアルのための閉館直前のことだったそう。
内藤先生:「ここは何といっても、この規模の美術館でありながら市立っていう点がすごいと思います。国立博物館のなかった大阪に美術館を作ろうという声が市民から上がり、住友家から旧茶臼山本邸の寄付を受けて、昭和11年に開館しました。以来、大阪で財を成した方々から多くの美術品の寄贈を受けるなど、まさに大阪の町が生み、育てた美術館なんです。
美術館・博物館の個性は館蔵品にこそあるので、リニューアル展(「What’s New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」)のように館蔵品を中心とする展示にもぜひ足を運んでいただきたいですね」
大阪のシンボル、通天閣を望む高台にある大阪市立美術館のデザインは、いわゆるモダン建築とは一線を画している印象。
内藤先生:「大名たちの蔵屋敷が立ち並んでいた大阪らしく、土蔵をイメージしたデザインなのだと思います。有名な建築士ではなく、当時の大阪市役所の人たち、営繕課が設計から手がけているのもポイントですね」
内藤先生:「外壁を彩るモチーフに注目してみると、大阪の発展に寄与した豊臣家の五七桐紋や、この一帯を寄付した住友家の菱井桁紋を思わせるデザインが取り入れられていると思います」
歴史ある美術館のリニューアルにあたっては“出たとこ勝負”のような局面も多々あり、シビアな判断を迫られることも少なくなかったのだとか。
内藤先生:「たとえば、リニューアル前には中央ホールの天井に大きなシャンデリアが下がっていて、その天井裏がどうなっているかわからなかったんです。取り外してみたところ、幸運にも建設当時のモダンな天井が姿を現してくれたんです。
登録有形文化財(建造物)にも指定されている持ち味を生かしながら、より良い鑑賞環境を目指し、ベストを尽くしました。新しいロゴマークも、実は建てられた当時の看板からデザインを起こしたものなんです」
まさに温故知新の精神でリニューアルにあたってきた先生にとっても肝入りといえるのが、なんといっても展示室。
内藤先生:「まず壁は、作品が浮き上がるように迫ってくるダークグレーに。作品にやさしく、鑑賞の際に目がチラつかず作品をムラなくてらす照明、そして反射を抑え、継ぎ目のないケース。そのどれもがなかなか意識はされないと思うのですが、この美術館に足を運んでいただく方々に、作品と対峙するひと時に没入していただける環境を整えられたと思います」
私が学生時代に先生から受けた博物館学の講義を思い出します……。
お話が盛り上がるなか「うちのカフェのごはん、おいしいよ」と、ご案内いただいたのがミュージアムカフェ「ENFUSE(エンフューズ) 大阪」。見学エリア外にあるので、カフェだけを利用することもでき、お近くの方々の憩いの場にもなっているそう。
一番人気は、大阪を中心に関西の美味をワンプレートで味わえる「古今東西おかずプレート」(おにぎりはセットに含まれますが、奥のグラタンは別です)。
ケーキもおいしそう! 週末のランチタイムからお三時どきにかけては、ウェイティングタイムが生じるほどの人気。
大阪で育まれてきた豊かな文化の発信基地のひとつとして、町の人々がプライドをかけて作り、守ってきた大阪市立美術館。開催中の「日本国宝展」はもちろんですが、今後の展示や活動も楽しみです!
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