生と死の間で見えてくる 命の尊さをつきつける映像作品3選
死を意識したときに見えてくること、この世に生命が誕生することの奇跡。
限りある命の尊さを題材に、生きる意味を問いかける3本を紹介。
『ミッキー17』
© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
何度も生き返る任務の行方は?ポン・ジュノ監督が描く近未来
失敗だらけの毎日を送り、借金を背負ってしまったミッキー。契約書をしっかり読まずに就いたのは、過酷なミッションで命を落とすたびに記憶をバックアップしながら生き返り、再びミッションに挑むという仕事だった。
そんななか、自分のコピーが出現したことで、搾取され続けたミッキーの反撃が始まる! 『パラサイト 半地下の家族』で世界を夢中にさせたポン・ジュノ監督の最新作。ロバート・パティンソンが不憫なミッキーを演じ、マーク・ラファロが人を惹きつける独善的な権力者に扮した。
使い捨ての労働者と富める者との格差は『スノーピアサー』や『パラサイト』を思わせ、独自のクリーチャーは『オクジャ/okja』のよう。全編にポン・ジュノのサインが刻まれた、まさに集大成とも言えるエンターテインメント。
このユーモアとバイオレンスは監督の作品でしか味わえない。
監督:ポン・ジュノ
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、
スティーブン・ユァン
丸の内ピカデリーほかにて公開中
『来し方 行く末』
©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd
弔辞の代筆業をして暮らす男が亡き人を思い、自分を見つめる
大学院まで進学しながら脚本家としてデビューする夢にやぶれ、今は北京郊外の集合団地で若き同居人と暮らしながら、弔辞の代筆業をしているウェン・シャン。
故郷から呼び寄せた父親との交流が少なかった息子、兄への思いがすれ違う弟と妹、ベンチャー企業創設者を失った仲間、自身の弔辞を依頼する余命宣告された婦人、声優仲間を探す女性。
今は亡き人たちの来し方について耳を傾け、思い出を手繰り寄せるように取材するうちに、ウェンは自分の人生と向き合うことになる。中国のスター俳優、フー・ゴーとウー・レイが共演した静謐なヒューマン・ドラマ。どんな人生にもサンプルの文章には収まらない時間があり、想いがある。
生と死の交差点で、ほんの少しだけ明日に向かって目線を上げる主人公を穏やかなタッチで描き出した。
監督:リウ・ジアイン
出演:フー・ゴ―、ウー・レイ、チー・シー、
ナー・レンホア、ガン・ユンチェン
新宿武蔵野館ほかにて全国公開中
〈Netflix〉
『JOY:奇跡が生まれたとき』
女性の選択肢を増やしたい体外受精を成功させた人々の実話
60年代末のイギリス。生物学者のロバートは看護師のジーンを助手として採用し、外科医のパトリックとともに、不妊治療のプロジェクトを本格化させる。試行錯誤しながらの体外受精の研究は成功の兆しを見せるが、奇跡までの道は苦難の連続だった。
人類初の体外受精を実現させた人々の実話をもとにした物語。ときには“フランケンシュタイン”と呼ばれ、教会からも激しく非難されて、ジーンは敬虔なクリスチャンである母親との関係も断たれてしまう。
実は自分自身も問題や痛みを抱えながら、それでもチームの一員として粘り強く歩みを進めるジーン。中絶を行なっていた看護師長が、女性の選択肢について語る場面は現代の女性たちを取り巻く状況へのメッセージとも言える。
観終わったとき、タイトルの意味がより一層胸を打つ。
監督:ベン・テイラー
出演:トーマシン・マッケンジー、ジェームズ・ノートン、
ビル・ナイ
Netflix 映画『JOY:奇跡が生まれたとき』
独占配信中
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