少年と少女のまなざし
【カンヌ映画祭】の話題作を劇場で目撃せよ!
子どもと大人の間を生きる少年と少女たち。
曇りのないまなざしを通して描かれる3つの物語は、忘れかけていた本当に大事なものを教えてくれるはず。
『ルノワール』
© 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners
11歳の少女の目を通して描く迷える大人たちの世界
80年代。11歳のフキは入退院を繰り返す闘病中の父と、家事と仕事に忙しい母と暮らしている。病院で奇妙なお願いをされたり、見舞いに来た父の会社の人の話や、同じマンションに住む女性の秘密を聞いたり。迷いながら生きる大人たちの世界に触れながら、夏の時間が過ぎていく。
『PLAN75』の早川千絵監督が描き出す、感受性豊かで澄んだ目を持つ観察者、フキの目を通して見つめる世界。
地上波に超能力者が出演し、人々は伝言ダイヤルで出会い、子どもたちがYMOの『ライディーン』で踊る。のどかさと不穏さ、希望と暗さを併せ持つ80年代のムードとともに、あの頃の胸のざわめきをスクリーンに刻み込んだ。
家族の形についての物語とも言える、カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作。
オーディションで抜擢された鈴木唯の瑞々しい存在感から目が離せなくなる。
監督:早川千絵
出演:鈴木唯、石田ひかり、中島歩、河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキー
新宿ピカデリーほか全国公開中
『親友かよ』
©2023 GDH 559 AND HOUSETON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
映画へのまっすぐな愛情と友情とは? という問いかけ
高校3年生のペーが転校先で出会ったのは人懐っこい性格のジョー。ペーが距離感に戸惑いを覚えているうちに、ジョーは不慮の事故で命を落としてしまう。
短編映画のコンテストに入賞すると試験免除で大学に入学できることを知ったペーは、ジョーが残したエッセイをもとにした映画作りを始めるが……。
タイの青春映画の名作『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のチームが再結集。
過去と現在を行き来しながら、ジョーを親友だと偽ったペーの思いやジョーの秘密を描いていく。トム・クルーズやクリストファー・ノーラン、是枝裕和の名前も登場させ、ポンコツで愛らしい映画作りの様子をポップに描写。その一方で、思春期の揺らぎや純粋さ、友情とは? という問いに向き合う姿を見つめた場面に、温かい涙が流れる。
監督:アッター・ヘムワディー
出演:アンソニー・ブイサレート、ピシットポン・エークポンピシット
新宿シネマカリテほか全国公開中
〈Netflix〉
『おつかれさま』
時代を超えて親から子へと受け継がれる揺るぎない愛情
済州島で海女の娘として育った成績優秀で自由な心を持つ少女、エスン。幼い頃から彼女を一途に思い続ける鮮魚店の息子、グァンシク。
やがて結婚したふたりは、さまざまな困難に向き合っていく。
IU、パク・ボゴムというスターのもとに、ムン・ソリら豪華な実力派俳優が集結。脚本は『椿の花咲く頃』のイム・サンチュン、演出は『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』のキム・ウォンソクという最強の布陣で、50年代から始まる人生と家族の物語が描かれる。
今よりも家父長制の色濃い社会を生き抜こうとした女性のたくましさ、伝え方は不器用だとしても揺らぐことのない親から子への愛情。
理不尽な出来事を乗り越えようと懸命に生きる人々の物語に涙腺崩壊。見終わった人に、家族を大切に想う時間を贈ってくれる名作。
監督:キム・ウォンソク
出演:IU、パク・ボゴム、ムン・ソリ、パク・ヘジュン、キム・ヨンリム、ナ・ムニ
『おつかれさま』Netflixにて独占配信中
選・文/細谷美香
大人のおしゃれ手帖2025年7月号より抜粋
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