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大人のおしゃれ手帖 8月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2025年8月号

2025年7月7日(月)発売
特別価格:1590円(税込)
表紙の人:原田知世

2025年8月号

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渡辺謙さん×寺島しのぶさん 
濃密な世界に誘う 映画『国宝』 
夫婦役のトップ俳優が語る大人の新境地

渡辺謙さん×寺島しのぶさん  濃密な世界に誘う 映画『国宝』  夫婦役のトップ俳優が語る大人の新境地

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年齢を重ねたなりの落ち着きを身につけながら、いつでも飛び立てる冒険心も忘れたくない―。
今回の「オトナトモダチ」は、その両方を兼ね備えた俳優界のトップランナーの顔合わせです。
新作映画で若者たちを厳しくも温かく導く夫婦役を演じたおふたりが到達した、大人の境地とは?


出会ったときから俳優として信頼できる人だと思ってた

渡辺謙さん×寺島しのぶさん  濃密な世界に誘う 映画『国宝』  夫婦役のトップ俳優が語る大人の新境地

寺島しのぶさん(以下、寺島) 共演は今回がはじめてですが、実は私たち、演劇のワークショップで会っているんですよ。もう20年以上前だと思いますけど。

渡辺 謙さん(以下、渡辺) そうだそうだ、舞台のオーディションを兼ねたワークショップで、ふたりで組んでやったんだよね。しのぶちゃんは柔軟で即興もできるし、エネルギーもあるし、あのときから俳優としてすごく信頼できる人だなぁと思ってました。人としてどうかは知らないけど(笑)。

寺島 アハハハ!

渡辺 うそうそ。だから今回も何の心の準備もなく、「よろしくね!」という感じで。

寺島 私も、短いけれど濃密な時間を過ごさせていただいた経験があったので、年月を経た感じもなく、普通にお芝居を始めることができました。謙さんご自身はとても優しいし、楽しいことが大好きな方ですが、演じた花井半二郎は歌舞伎界では絶対的な存在で、やっぱりゴーイングマイウェイ。自分がこうありたいという像をすごく決めている人だから、妻である私の意見はあまり聞いてくれないんですよね。

渡辺 でも、幸子(寺島さんの役名)だってそんなに従順なだけでもないよね?最初のシーンから「どうすんの、あんた」みたいな感じで半二郎に意見していたし。

寺島 そうですけど、でも最終的には幸子は半二郎をサポートする立場で……それは、うちの両親(七代目尾上菊五郎・俳優の富司純子)を見ていても同じですから。

渡辺 歌舞伎の世界の空気感を、しのぶちゃんは肌で知ってるからね。だから僕は、やっぱり頼りにしてました。「稽古のとき、師匠はどんなふうにしてるの?」って訊いたり。

寺島 吉沢亮くんや横浜流星くんにもいろいろ尋ねられましたよ。出演者というより、私は今回、スタッフ的な立ち位置だったのかもしれない……。皆さんが真摯に歌舞伎に向き合ってくださるなかでお手伝いができたらいいなと思ったし、自分が生きてきた世界で見たり感じたりしてきたものを、エッセンスとして作品に注入するつもりで。

渡辺 お手伝いと言いながら、けっこう厳しい目でも見てたよね。息子たちに踊りの稽古をつけているときの迫力は「母ちゃん……怖ぇな」って(笑)。あれはやっぱり、役じゃなくて本物のそれだったなぁ。

寺島 フフフ。子役も含めて若い人たちはとにかく一所懸命。あんな短期間で「二人道成寺」や「二人藤娘」を覚えて踊るなんて、歌舞伎役者にとっても奇跡なんですよ。強い負けん気も感じたし、何がなんでも作品を作り上げるんだという責任感がすばらしいので、私としては「頑張って!」という気持ちでいっぱいでした。

渡辺 若者たちもそうだけど、我々もまあ、これまで向こう見ずといえば向こう見ずに生きてきたよね。俳優として。

「大丈夫、立ってしまえばなんとかなる!」
経験者の言葉、心強かったです

寺島 そうですね。それこそ謙さんは、アメリカに行って、言語を習得して、映画だけでなくミュージカルにも出演されて。

渡辺 しのぶちゃんも歌舞伎座に出たし、ちょうどこの映画を撮っている最中は、唐十郎作品のテント芝居に挑戦してたでしょ。どれも、本当によくやるよなって話じゃない?でも本人は、やると決めてからようやく「ヤバいぞこれ」って青くなって。

寺島 わかります。返事だけして、後で「あー、なんで受けちゃったんだろ」って。歌舞伎座に立つ前は怖くて怖くてぜんぜん眠れなかったし、唐さんのセリフにもずっとうなされてて……。でも、唐作品を経験している謙さんが「大丈夫だよ! 立っちゃえばなんとかなったから」って言ってくださったのが、すごく心強かったです。

渡辺 逆に、そういうふうじゃないとやれないんだよね。「これだけ勝算があるからやろう」なんて、そんなに理詰めで考えられないもん。だから、あんまり考えないほうがいいのかもしれない。深く考えてたら、ハイジャンプはできないから。で、やってるときはもう死に物ぐるい。その繰り返し。

寺島 本当に。大変だったけど、そうやってきてのいまなんですよね。

〔 映画 〕『国宝』 原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊) 監督:李相日 出演:吉沢亮 横浜流星 高畑充希 寺島しのぶ 渡辺謙 全国東宝系にて公開中 © 吉田修一/朝日新聞出版  ©2025映画「国宝」製作委員会

〔 映画 〕
『国宝』

長崎の任侠一家に生を受けた立花喜久雄(吉沢亮)。
歌舞伎の名門の御曹司である大垣俊介(横浜流星)と切磋琢磨し、栄光と絶望を味わいながら芸の頂点を極めるまでの波乱の半生を描く。原作は吉田修一の同名小説。
「深く広い原作の世界とはいい意味で異なる、濃密な作品に仕上がったと思います」と渡辺さん。高畑充希、永瀬正敏、田中泯ほかが共演。

原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督:李相日
出演:吉沢亮 横浜流星 高畑充希 寺島しのぶ 渡辺謙
全国東宝系にて公開中

© 吉田修一/朝日新聞出版 
©2025映画「国宝」製作委員会

俳優
渡辺 謙さん
1959 年生まれ。演劇集団円で活動後、映像、舞台に出演。03 年公開の映画『ラスト サムライ』以降、海外にも活躍の場を広げる。最近の出演作に大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』など。

俳優
寺島しのぶさん
1972 年生まれ。文学座を経て2000年にスクリーンデビュー。数々の映像、舞台に出演し、国内外で受賞多数。近年の映画出演作に『あちらにいる鬼』『パレード』『八犬伝』がある。


photograph: Emiko Tennichi styling: Junko Baba( 渡辺さん), Ayako Nakai( 寺島さん)
hair & make-up: Masaki Kurata( 渡辺さん), Naoki Katagiri( 寺島さん) text: Michiko Otani

大人のおしゃれ手帖2025年7月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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  • 〔 映画 〕『国宝』 原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊) 監督:李相日 出演:吉沢亮 横浜流星 高畑充希 寺島しのぶ 渡辺謙 全国東宝系にて公開中 © 吉田修一/朝日新聞出版  ©2025映画「国宝」製作委員会

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