【荒川区尾久・台東区谷中】安藤玉恵さんとめぐる下町さんぽ
初めてのエッセイ本『とんかつ屋のたまちゃん』を5月に発売した安藤玉恵さん。
その舞台となった地元の荒川区・尾久と、その後暮らした台東区・谷中を案内してもらい、安藤さんが通うとっておきの場所を教えていただきました。
案内してくれたのは・・・
安藤玉恵さん
俳優。東京都荒川区出身。早稲田大学演劇倶楽部で演劇を始め、舞台、テレビドラマ、映画など幅広く活動。映画『でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男』公開中。Eテレ『未病息災を願います』放送中。Bunkamura Production 2025『リア王』( 東京10月9日(木)〜11月3日(月・祝)、大阪11月中旬〜)に出演決定。
生粋の「尾久っ子」だからわかる変化しても息づく街の魅力
初エッセイの題材に選んだのは、実家のある東京の下町・尾久とそこに暮らす家族や街の人々。あとがきに書かれた「愛された記憶や愛されたと思い込んでいることを、堂々と披露しよう」との言葉通り、安藤さんの幼少期に見た風景、出会った人々の悲喜こもごもが余すことなく記録されている。
「自分事って、本にしておもしろいのかな?って不安だったんですけど、担当編集者さんが『下町のお話を本にしましょう』って言ってくださって。実は私、昔から散々友人にも商店街の話をしていたんです。小さい時は誕生会をスナックでやってもらっていたとか。
そういう昭和の下町の話を友人もおもしろがって聞いてくれていたので、これなら書けるかなと」
思い出を形にしたことで、再確認できたこともあったようで、「3歳からお店に出ていたから、初対面の人と話すのも昔から平気なんです。子どもが『いらっしゃい~』っておしぼりを出したりして。下町のこういう店だから、店に子どもがいても苦情が出ない。知らない人ともほどよい距離感で話せるようになったことは、私の大きな強みかもしれません」
地元の街が変わっていくことに関しては一抹の寂しさも。
「昔よりは活気がなくなって、シャッターを下ろす店も増えています。エッセイに出てくる『鮨福』も今は公園になっています。昔は個人商店で物を買うのが当たり前。人と話さないと物が買えなかった。でも、得られることも多かったんですよね。旬の食材の知識だったり、ちょっとオマケしてくれたりね。世代の違う人と会話するコツも学べたかもしれない。怒られてばかりでしたけど(笑)」
安藤さんの中には、街で過ごした記憶が色濃く残っている。
「人に揉まれて過ごした幼少期。家族や街のみんなが私にとってはキャラクターの見本帳みたいなもので。台本を読んでいて、『あ、この人は焼き鳥屋のおばちゃんに似ているな』とか、生きたサンプルの宝庫。そうやって蓄積された実際にいる人のリアリティーが、今演じるうえでも、すごく役立っているような気がします」
安藤さんが商店街を歩くと、親戚のおじちゃんやら、商店の人やらが次々に声をかけてくる。中には、エッセイに出てくる人も。
「エッセイの登場人物は読者さんにとっては知らない人。でも、『あ、こういう人、私知ってる!』っていう人が一人はいるんじゃないかな?そんなふうに楽しんでくれたらうれしいです。
それから商店街も寂しくはなったけど、まだまだ魅力的な個人商店が残っています。店の人たちとの交流は、今も変わらず楽しい。今回紹介した『梅の湯』さんや『天ふじ』さんは、昔からあった古い木造建築をリノベーションして、街の人が気軽に集まれる場所にした『おぐセンター』の立ち上げにも協力しています。次世代の取り組みも少しずつですが増えていて、街の新しい魅力が増えるのも楽しみです」
都電荒川線「宮ノ前」停留所を降りると目の前には「尾久八幡神社」が。
年が明けると家族で連れだって初詣に行くのが安藤家の恒例行事だった。
都電で通えるからというのも理由の一つで早稲田大学への進学を決めた安藤さん。
愛称は「東京さくらトラム」。荒川区を象徴する存在。
「私のお気に入りの散歩コースに入っています。ふれあい動物園が楽しい」のが、こちらも荒川区を代表するスポット「あらかわ遊園」