【50代のおしゃれ旅/会津若松】争奪戦必至の日本香堂×宮泉銘醸の限定日本酒を先行試飲! 会津さざえ堂など必見スポットもご紹介
香りのプロと酒の匠がタッグ! 史上初のビッグプロジェクト
この貴重なお酒をひと足早く味わうべく訪れたのは、宮泉銘醸の酒蔵。
酒蔵をご案内いただいた宮森大和さん曰く「創業は祖父の代ですが、うちのお酒が全国区になったのは、兄の代になってからのここ20年ほどのことですね」。大和さんと兄で社長の義弘さんは、いずれも前職はシステムエンジニア!
「23年前に兄が帰ってきて、2007年に〈冩樂〉のプロトタイプとなる酒を生み出し、忙しくなり始めた頃に僕も戻ってきて、今では年に20万本ほどを出荷するほどになりました。なんで、僕は兄をめちゃくちゃリスペクトしています」。酒蔵というとつい老舗のイメージがありますが、意外なパターン。
システムエンジニア出身とあって、兄弟ともに「数字が大好きで、データ化しないと気が済まないんです」と笑う大和さん。酒の味もさまざまな機器を駆使して数値で管理しています。
「蒸した米と米麹、水を使い、アルコール発酵させたものが日本酒です。発酵を起こすのが酵母ですが、酵母は生き物。徹底してデータ管理しても、必ずしも思い通りになりません。やんちゃな酵母を子守りしてるような感じですが、それが面白い」。そう捉える大和さんの感性も面白いです。
写真提供:日本香堂
「酒造りは酵母と向き合う仕事なので、酵母にとって理想的な環境作りが大切です。酒蔵は徹底して清潔に保っています。そういう基本的なことをどれだけ手を抜かずにやるかが、味のカギを握っていると思います」と大和さんが語る通り、蔵の中はとてもキレイ。
「とくに酒母(酵母を培養した液体)のある部屋はもっともキレイにキープしています」。温度管理も重要だそうで、部屋ごと常に7℃に保たれています。特約店と契約したうえで生産することで、ボトリングしてすぐ出荷することができ、ロスもゼロ。
「保存している間に酵母によってどんどん味や香りも変わってしまうので、僕たちが作った味のままで味わっていただくためにこういう売り方に辿り着いたんです」。宮泉銘醸の酒が“幻の酒”になったのは、鮮度へのこだわりゆえだったんですね。
奇跡の共同開発ともいうべき今回のプロジェクトは、構想数年、使用する米の選定などの具体的な作業に2年前から入り、今年完成したもの。
宮泉銘醸ではこれまでひとつの酒に1種の米と酵母を使用してきましたが、今回のテーマである“香りの複雑性”を追求し、2種の米と3種の酵母をかけ合わせることに初トライ。その結果「香りがめちゃくちゃキレイ」(大和さん)なお酒ができあがりました。
私は飲み道楽ではないので素人の感想ですが、実際にいただいてみて日本酒では感じたことのない軽やかな香りだと思いました。コメコメしていないと言いますか……。
口に含んでからも表情豊かに香りが変化していき、心地よい余韻がやや長く残ります。甘すぎずキリッとしていて、しつこくなくさわやか、それいでいて最後に米の渋みが残り、食が進みそうです。
右から、宮泉銘醸社長・宮森義弘さん、専務・宮森大和さん、日本香堂ホールディングス社長・小仲正克(こなかまさよし)さん、唎酒(ききざけ)師・坂本幸志(さかもとこうじ)さん
日本香堂ホールディングスの小仲社長は「フレグランスがトップ、ミドル、ラストノートと香りがうつろうように、日本酒にも注いだ瞬間に立ち上る“立ち香(か)”、口に含んだときに感じる“含み香”、飲んだあとの余韻として広がる“戻り香”という香りの変化があります。ふくいくたる香りと味わいが幾層にも重なるこの酒を、春山に朝もやががかかり幻想的な色あいを見せる美しい光景に見立てて、5月に発売したお香〈羅國(らこく)暁霞〉とおなじく〈暁霞〉と名づけました。宮泉さんだからこそ実現した仕上がりです」と自信の表情。唎酒師・坂本さんによると「冷やでもぬる燗でも美味しいと思います」とのこと。
最後に宮泉銘醸の社長、宮森義弘さんに「弟さんの兄愛をどう思ってます?」と気になっていたことを聞いてみると「めちゃめちゃプレッシャーですね」と照れ笑い。隣で聞いていた弟の大和さんは「ウチは日本で一番仲の良い酒蔵かもしれないです」と、結構真顔。そのチームワークこそが、多くの方に愛される酒造りのカギかもしれないな、と思いました。
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