“人生の変わり目”に寄り添う映画3選
『わたしは光をにぎっている』©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
9月半ばを過ぎても厳しい残暑が続きましたが、朝晩はだいぶ過ごしやすくなってきました。ようやく訪れた季節の変わり目。そこで今回は、“変わり目”を描いた映画を紹介しましょう。自立する、男女の友情に変化が訪れる、思わぬトラブルに見舞われるなど、人生が変化するタイミングを迎えた主人公たちが見出したものとは?
目次
ひとりの若者の巣立ちと成長を清らかな視点で描く
『わたしは光をにぎっている』
『わたしは光をにぎっている』©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
長野県の野尻湖の近くで、親代わりの祖母と一緒に民宿を切り盛りする20歳の澪。その祖母の入院を機に民宿をたたむことになり、澪は東京に出てきます。居候先は、亡き父の友人・京介が営む銭湯。おとなしい澪は都会の空気になじめず、バイト探しも苦戦し、いつしか銭湯を手伝うようになります。
「目の前のできることから、ひとつずつ」という祖母の言葉を胸に銭湯の仕事に取り組み、地元商店街の人たちとも親しくなり、ようやく澪に笑顔が戻ってきました。都会の暮らしを楽しみはじめた矢先、その場所が区画整理でじきになくなることを聞かされて……。
『わたしは光をにぎっている』©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
祖母と眺めた美しい湖、ひとりで触れた東京の銭湯の湯、澪にとっての故郷と東京を水でつなぎながら、若者の巣立ちを優しいタッチで描いた作品です。口数は少ないけれど自分を持っている澪を、松本穂香が好演。仕事に喜びを見出したり、ときには空回りして落ち込んだり、といった日々の感情を、セリフも動きも少ないながら、情感あふれる演技で表現しています。
再び居場所がなくなる澪は、この先、どう生きていくのでしょうか。彼女の選んだ道に、強さと祖母への思いを感じます。
『わたしは光をにぎっている』
2019年製作
DVD ¥4,180
発売・販売元:ギャガ
©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
この記事のキーワード
構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。