食欲を刺激する“おいしい映画”４選＜洋画編＞

食欲の秋、見るだけで食べたくなるような“おいしい映画”をご紹介します。
今回は、洋画から4作品をピックアップ。
劇中に出てくる数々の料理とともにハートウォーミングなストーリーも味わって！

フィンランドの村の人々を喜ばせた薬膳料理
『世界で一番しあわせな食堂』2019年
少年がフュージョン料理に込めた思いとは？
『エイブのキッチンストーリー』2019年
料理も恋も完璧主義ではダメ？
『幸せのレシピ』2007年
一途な想いが込められた、きのこ餃子
『初恋のきた道』2000年

フィンランドの村の人々を喜ばせた薬膳料理
『世界で一番しあわせな食堂』2019年

©Marianna Films

　フィンランド北部ラップランド地方の豊かな自然が広がる小さな村の食堂に、人を探しているという中国人のチェンとその息子が訪れます。食堂を一人で切り盛りしている女主人のシルカは、彼らに部屋を提供して人探しに協力する代わりに、食堂を手伝ってもらうことに。実はチェンは料理人で、彼のおかげで店は大繁盛しますが……。

©Marianna Films

　マッシュポテトにソーセージのランチに親しんでいた常連客は、チェンが作るさまざまな野菜を使った中国の薬膳料理に最初は戸惑いますが、一口食べるとその深い味わいに感動し、しかも体調がよくなるということで大喜び。湖で釣った魚のパーチのスープやトナカイの香草焼きは、彼らの異文化交流を象徴する料理といえるでしょう。

©Marianna Films

　また、常連客のおじいさん2人の掛け合いが面白く、“フィンランド名物”のシーンも！シルカが身に着けているストライプのエプロンや白を基調にしたキッチンも可愛らしいので、北欧ファンは必見の映画です。

『世界で一番しあわせな食堂』

DVD￥4,180（税込）
発売元・販売元：ギャガ

少年がフュージョン料理に込めた思いとは？
『エイブのキッチンストーリー』2019年

　食べることが好き、作るのはもっと好き、という12歳のエイブは、料理をSNSに投稿しているいまどきの少年ですが、大きな悩みを抱えています。母がイスラエル系、父がパレスチナ系であることから、両家の親戚が集まるたびに文化や宗教の違いから言い争いになるのです。

　そんなエイブはある日、“ブラジルのファラフェル”（ファラフェルは中東の料理）を屋台で出しているブラジル人シェフのチコと出会います。フュージョン料理を作るチコに影響を受けたエイブは、父方と母方の伝統をミックスした料理を作って家族をひとつにしようと決意します。
　チコのキッチンは活気にあふれていて、野菜やフルーツをリズミカルに切る音、揚げるときのジュワーッという音、コーヒーを注ぐコポコポという音までもが音楽を奏でているようで、楽しい気分になります。エイブの置かれた環境には胸が痛くなりますが、チコの優しく朗らかな存在に心が救われます。

　エイブ役は、『ストレンジャー・シングス　未知の世界』のウィル役で新世代スターとなったノア・シュナップ。本作で映画初主演を飾りましたが、まだどこかあどけない魅力で、等身大の主人公を演じています。

『エイブのキッチンストーリー』　＜発売中＞

ブルーレイ￥5,280

DVD￥4,180

発売元・販売元：ポニーキャニオン

料理も恋も完璧主義ではダメ？
『幸せのレシピ』2007年

　マンハッタンの人気レストランで料理長を務めるケイトは、腕は一流ですが、完璧主義な性格が災いして客とよくもめていて、上司命令でセラピー通いをしています。ある日、ケイトの姉が交通事故で亡くなり、姪のゾーイを引き取ることに。しばらく仕事を休んで職場復帰したケイトは、キッチンに入って驚きます。新たに雇われた副料理長のニックが大音量でオペラを流し、陽気に歌い、スタッフもみんな笑っているのです。自分が努力で勝ち取った場所を侵害されたと感じたケイトは怒り傷つきますが……。

　ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』をキャサリン・ゼタ＝ジョーンズとアーロン・エッカートの共演でハリウッドリメイクした作品で、フォアグラやトリュフ、ロブスターなどを使った華やかな料理が次々と登場。まかないのシーンで出てくるスパゲッティなども、高級レストランが舞台なだけあって、さすがにおいしそう！

　いつもピリピリしているケイトと、母を失って心を閉ざしているゾーイ。2人はニックと接するうちに、少しずつ変わっていきます。ケイトとゾーイの心を溶かした料理は何だったのか、ぜひ見て確かめてみてください。

『幸せのレシピ』

ブルーレイ￥2,619／DVD ￥1,572
発売元：ワーナー・ブラザースホームエンターテイメント
販売元：NBC ユニバーサル・エンターテイメント

一途な想いが込められた、きのこ餃子
『初恋のきた道』2000年

　素朴な料理に込められた無垢な愛に心打たれる名作『初恋のきた道』は、チャン・ツィイーの初主演映画です。中国北部の小さな村で教師をしていた父の訃報を聞いた青年は、老いた母を案じて都会から村へ帰ってきました。彼は村の語り草になっている父と母の恋物語を思い出していました。

　町から村への一本道を馬車に乗ってやってきた20歳の教師ルオ。迎える村人の中に、18歳の少女ディもいました。村のしきたりで、男性たちが校舎をつくり、女性たちが昼食を届けていましたが、ディはルオに食べてもらいたい一心で料理を作り、青い花の模様の碗に入れて持っていきました。ある日、ルオはディの家にきのこ餃子を食べに行く約束をします。ディが窯の蓋を開けると一気に湯気が立ち上り、きのこ餃子があらわれるシーンのおいしそうなこと！ディが青花の碗に入れた餃子に触れて蒸し具合を確かめますが、もっちりとした弾力が画面越しに伝わってくるようです。

　実は筆者はこの映画を観て、きのこ餃子を作りました。当時、試写会でもらったパンフレットに、きのこ餃子や葱のお焼きなどを再現したレシピが載っていたのです（再現・指導は『大人のおしゃれ手帖』でもたびたび登場されるウー・ウェン先生）。皮から作るきのこ餃子は、時間はかかるものの、モチモチでおいしくて、葱のお焼きとともに何回も作りました。

筆者の私物パンフレット。純朴な娘を演じたチャン・ツィイーがとにかく可愛くて、餃子がおいしそうで、大好きな映画のひとつ。