麻生久美子さん×オダギリジョーさん対談
「監督の時と俳優の時でキャラクターが変わるよね?」
「麻生さんのよさは僕がちゃんとわかってます」
このふたりなら、大丈夫―お互いにそう認め合える間柄には、どうやったらなれるのでしょう?
ドラマ『時効警察』をきっかけに共演を重ね、公私ともに交流するオダギリジョーさんと麻生久美子さん。
笑いの絶えない会話のなかに、絶対的な信頼と、常に「今」をおもしろがる大人の余裕が滲んでいました。
監督のときと俳優のときでキャラクターが変わるよね?
オダギリジョーさん(以下、オダギリ) 今回の映画化は、自分の書いた脚本がもはや『テレビドラマの制作費では成立できない』と言われてしまって、『じゃあ映画にしましょうか』というような流れで進んだものなんです。
麻生久美子さん(以下、麻生) 最初にいただいた脚本はいくつかのお話に分かれていて、短編集のような印象でした。よくわからないところもありましたけど、それも含めて、いい引っかかりがあったのも印象的でした。オダギリさんらしいユーモアが効いていたのもおもしろくて、すぐメッセージを送りました。
オダギリ 自分としては、この世界に対する自分なりの疑問というか、引っかかりを描いたつもりです。この世界はどこまでが現実で、どこからが虚構なのかわからなくなるんですよね。そんなことを描いてみたいと思っていました。
麻生 フフフ。なるほど、オダギリジョーの頭の中はこういう感じか! と思いました。
オダギリ え? 何か、新しい発見があったの?
麻生 おしゃれだな、センスがいいなというのは前から思ってたけど、何か、どんどん世界が変わっていく感じが……撮影している間は「これはいったいどうなるんだ?」「大丈夫かな」と思ってた部分も、全体を通して見たら「ああ、こういうことがやりたかったんだな」って。私、現場で質問しないし、もしかしたら今もちゃんとわかってないのかもしれないんですけど(笑)。
オダギリ いやいや、わかってなくていいんですよ(笑)。僕は麻生さんのおもしろさを世界中の人たちに知って欲しいだけだから(笑)。
麻生さんのよさは僕がちゃんとわかってます
麻生 漆原さん(麻生さん演じる警察官)はテレビシリーズの頃から大好きなキャラクターですけど、疲れることは疲れますね。私、ふだんはあんなにテンション高くないので。
オダギリ 麻生さんは俳優としての能力が高いから、多くを求めてしまうんですよね。ニュアンスだけではなく、テンポだったりタイミングだったり、細かい演出をしっかりクリアしてくれるから、どんどんハイレベルになってしまうんです。やっぱりすごい人だなと思いますよ。
麻生 本当にそう思ってる? 現場では「70点」とか言われたけど(笑)。
オダギリ ハハハ! 大抵は素晴らしい答えを出してくれるんですけど、たまに「おいこいつ、素人か?」みたいなときがあるのがまた麻生さんのおもしろさなんですよね(笑)。
麻生 でも70点はくれるんだ(笑)。それにしても、監督のオダギリさんは、役者のときと別人ですよね。すごく腰が低くて。
オダギリ 確かにね。でもさ、自分が書いた脚本に向き合ってくれてる人たちに対して、横柄になんてなれないでしょ。どこか「こんな作品に関わっていただいて……」という申し訳なさがあるんです。
麻生 へぇーっ。そうなんだ。
オダギリ 皆さんは、きっとこの脚本のどこかにおもしろさを感じて、期待してくれているんだと思うんです……本当にありがたいことですよ。もちろん、麻生さんも。
麻生 オダギリさんとはそんなにしょっちゅう連絡を取り合っているわけじゃないんですけど、たまにSNSをね。たいてい夜、酔っ払ってるときに。
オダギリ そう。ふとしたときに思いついたことを送ったりしています。レス(ポンス)のテンションで「あ、今、大丈夫なんだ」とわかれば、そこからやり取りが続いたりね。
麻生 毎年、誕生日に「おめでとう」ってメッセージをくれるじゃない?実は誕生日の翌日だったりが多いけど(笑)。
オダギリ あ……バレてたんだ(笑)?
麻生 アハハ。私は覚えてないのに優しい!話しててラクだし、楽しいし、適度な距離感も、ちゃんと保ってくれてるし。
オダギリ 踏み込みすぎて、怒られたこともあったからね(笑)。長くこういう関係を保てたのは結局、相性なんでしょうね。それを作品という形で残せるのも、自分たちの仕事のありがたいところです。
〔 映画 〕
『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』
この世界には不思議なことがあふれている――警察犬ハンドラー・青葉一平(池松壮亮)には、相棒の警察犬・オリバーが、なぜか犬の着ぐるみのおじさんに見えている。
曲者揃いのキャラクターが、摩訶不思議な世界に迷い込む。
カルト的人気を呼んだテレビシリーズが、豪華ゲストを迎えてスクリーンに。麻生さんの渾身のダンス(!)シーンにも注目。
脚本・監督・編集・出演:オダギリジョー
出演:池松壮亮 麻生久美子 本田翼 岡山天音
黒木華 鈴木慶一 嶋田久作 宇野祥平 香椎由宇
永瀬正敏 佐藤浩市 深津絵里 ほか
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ 全国公開中
©2025「THE オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ MOVIE」製作委員会
俳優
オダギリジョーさん
1976年生まれ。最近の出演作に『劇映画 孤独のグルメ』『夏の砂の上』『兄を持ち運べるサイズに』(11/28 公開)など。監督作に『さくらな人たち』『ある船頭の話』がある。
俳優
麻生久美子さん
1978 年生まれ。90 年代より数々の映像作品、舞台に出演。最近の出演作に映画『ラストマイル』『海辺へ行く道』、テレビドラマ『魔物』、NHK 連続テレビ小説『おむすび』など。
photograph: Kentaro Hisadomi styling: Tetsuya Nishimura( オダギリさん), Megumi Isaka[dynamic]( 麻生さん)
hair & make-up: Yoshimi Sunahara[UMiTOS]( オダギリさん), Yumi Narai( 麻生さん) text: Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖2025年11月号より抜粋
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