桐野夏生さん】インタビュー
「作家は体力勝負。週2,3回はバレエへ通っています」
江戸川乱歩賞を受賞した第1作から始まり、多くの読者を魅了してきた桐野夏生さんの人気シリーズが、前作から20年ぶりに復活。
年月の中で変化した思いや、創作の裏側に迫ります。
作家は体力勝負。週2〜3回はバレエへ
女性探偵・村野ミロを主人公にしたシリーズの最新作にあたる、桐野夏生さんの『ダークネス』。
1作目『顔に降りかかる雨』が書かれたのは、今から32年前に遡ります。
「海外のハードボイルド小説の多くは、男性が主人公。それを裏返して、東京に住む1人暮らしの30代女性だったら……と挑戦するような気持ちで書きました。だけど2作目、3作目と続いて、作品世界が広がっていくうちに、私自身がこのシリーズを捨て去りたいと思うように
なったんです」。
その背景には〝ミステリー作家〟と呼ばれるのが嫌で、その枠組みから逃れたいという気持ちもあったそう。
「自分で作り出した作品世界に自分が規定されているような不自由さを感じて、徹底的に壊してしまおうと。だから前作『ダーク』のミロは罪を犯し、友人を裏切り……と鬼のような人物になっていて。
ミロという人間の自己破壊衝動を書きたかったのですが、それは私自身の衝動でもありました。だけど、前作のラストで母親になったミロとその息子がどうなったのか書いてみたい気
持ちもあって、今回、続きを書くことになったんです。
他の作品は完結すればそれで終わりですが、やはりミロは特別だったんだと今は思いますね。ただ愛着があるかというと、ちょっと違う。それが小説の不思議なところです」
破壊衝動を抱えて執筆していたのは、読者世代にあたる50代。
「仕事は充実していたけど、どうしたら納得いく作品が書けるだろうか、と闘っていた時期でもありました。そこに家事や子育ても重なって苦しかったのを覚えています。その気持ちが作品にも出たのかもしれません」
現在も執筆に加え、文学賞の選考委員や講演会と、多忙な日々を送る桐野さん。
「作家は体力勝負。週2〜3回はバレエ、月3〜4回はゴルフへ行きます。運転も好きなので、往復200kmくらいは平気で運転しますね」
そうした趣味の時間が、リフレッシュだけでなくインプットにも。
「新聞もネットも見るし、韓国ドラマや映画も見ます。でもやっぱり人と会うのがいちばん面白い。バレエは30年以上続けているので、みんな仲がいいんです。女性は自分のことだけじゃなく、家事や育児、介護……と他人のために使う時間が多い。だからこそ、友人関係が支えになるのではと思います」
『ダークネス』
桐野夏生
¥2,750(新潮社)
誰も知る人のいない沖縄で息子・ハルオと暮らしていたミロ。ハルオは20歳の大学生になっていた。過酷な運命を背負った親子の愛憎が、ミロとハルオの双方の視点から描かれる。「ミロと、そのライバルとして登場する久恵。どちらも私なんだろうと思います」
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