竹中直人さん×生瀬勝久さん
「信頼関係はありますが『俺たち仲間だ!』みたいなものはまったくないですね」

7年ぶりに再始動する、竹中直人さんと生瀬勝久さんによる演劇ユニット「竹生企画」。
「3年後に滅亡する世界」という設定のもと、どんな物語が描き出されるのか―。
変わらない信頼と、心地良い緊張感が織りなす唯一無二の舞台に、ますます期待が高まります。
演劇は、悩みながらやるからこそ、おもしろい
― 「竹生企画」の新作が7年ぶりに上演。第四弾となる今回の『マイクロバスと安定』では、おふたりがどんな掛け合いをするのか、楽しみにしている演劇ファンは多いかと思いますが……。
生瀬勝久さん(以下、生瀬) まだ、役については僕らもよくわかってないんです。
竹中直人さん(以下、竹中) 僕は映画や舞台を観るときも、事前に情報をキャッチしないんですよね。自分が演じるときも、本読みになって初めてわかる。いや、本を読んでも、わかることはないかもしれないな。演じている側はわからないままのほうが良いと僕は思います。
生瀬 ふたりで「ここ、どうしようか」なんて話し合ったことは1回もないですしね。
竹中 まったくないですね(笑)。
生瀬 カッコよく言っちゃうと、〝プロの俳優〟ですよね。だから「こう受けるからこう返してね」というのはしたくない。その日の真剣勝負じゃないと嫌なんですよ。
竹中 だから続いているんだと思います。やっぱり緊張感と距離感はキープしていないと、自分にとっての演劇が存在しなくなる。信頼関係はあるけど、「俺たち仲間だ!」みたいなものはいっさいないですね。
生瀬 僕にとって竹中さんは絶対的な先輩だから。他の共演者とは食事に行くかもしれないけど、竹中さんとふたりきりは恥ずかしい。もちろん嫌なわけじゃなくて。好きだからこそ、一緒にやっているわけだし。僕は学生時代から竹中さんに憧れてこの世界に入ったので。だけど共演の機会はそれほどないから、自分でキャスティングできる演劇という場で、(自由に技を掛け合う)乱取り稽古をしていただけないかな、と思ったのが「竹生企画」のきっかけです。
竹中 当時、僕は演劇は無理だ、もうやめよう! って思ってたんです。そんなときに生瀬くんが声をかけてくれて、「俺なんかで良いのなら……」と心が動いたんです。
やっぱり演劇をしっかりやっておかないと俳優として絶対にダメだという気持ちがどこかにあったんですね。生で時間の流れを感じられるし、芝居のスピード感や、あらゆるものを客観的に捉えながら毎回同じことを繰り返し作りあげていくのは演劇だけしかできないですものね。
最初はかなり不安もありました。演劇は楽しくないし、どちらかと言えば苦しいしね。答えはどこにもないし、着地点に向かうわけでもない。決して楽ではないですよね。でも役者が悩みながら続けていくのは良いと思うんです。楽しそうにやってる人より悩みながらやってる人のほうが信じられるって言うのかな……。
生瀬 前回の竹生企画から7年空いているから、お互いに変わっているだろうし。始まってみないとわからないですよね。
緊張感と距離感があるから、長く続けられる
竹中 共演者が変わると、空気も変わっていくからね。でも僕は生瀬くんに、とてつもない強さを感じるんだよね。安定感というか、揺るぎないものを感じる。あとは、ある種の〝圧〟の魅力があるんじゃないですかね。それが自分を駆り立ててくれる。
生瀬 普段は穏やかなので、舞台やドラマ、映画、舞台でしかでかい声が出せないんですよ(笑)。ここぞというときに、俺のポテンシャルはここまであるんだぞ!俺を怒らせたら怖いぞ! という、発散の仕方をしているのかもしれないですね。
竹中 ふたりの間に決めごとはないんです。距離感を保つとは言ったけれど、「なれ合いにならないように」とか、あえて言葉にするのも気持ち悪いし。僕たち仲良し!なんてもってのほかだもんね。ただ、やっぱり尊敬と信頼があるから、続けられるんだと思います。
生瀬 竹中さんに説得力があるんですよね。たとえばこういうインタビューで、自分の言葉と声、リズムで相手にどう気持ちを伝えるか。その伝え方がとても素敵な方だと思うんです。僕もそこを真似して、自分のものにしたい気持ちはあります。
竹中 僕は生瀬くんに誘われなかったら、舞台はもうやっていなかったと思います。演劇なんてたくさんたくさんあるでしょう。僕の芝居なんて誰も見たいなんて思わないし。それに誰からも誘われたこともなかったし(笑)。でもやめずに演劇を続けてきて、良かったと今は思っています。
〔 舞台 〕
竹生企画第四弾『マイクロバスと安定』
小惑星が地球に衝突するまであと3年に迫った世界。人々は、「どうせ滅亡するのなら、これまでしてこなかったことをしよう」と自暴自棄になる人と、これまでと変わらない生活を続けようとする人に分かれ、それぞれ別々のブロックで暮らしていた。後者のブロックにある一軒家を舞台に、終わりがちらつきながらもいつもどおりに生きようとする人々の物語。
作・演出: 倉持裕
出演:竹中直人 生瀬勝久 飯豊まりえ 戸塚純貴
サリngROCK 松浦りょう 浜野謙太
東京公演: 2025 年11月8日(土)〜30日(日) 下北沢 本多劇場
兵庫公演: 2025 年12月5日(金)〜7日(日) 兵庫県立芸術文化センター
阪急 中ホール *ほか、広島・熊本・盛岡・久慈・青森・長岡公演あり
撮影/天日恵美子 スタイリング/中谷東一( 生瀬さん) ヘアメイク/田中智子[artmake TOKI] 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2025年10月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
この記事の画像一覧
この記事を書いた人
ファッション、美容、更年期対策など、50代女性の暮らしを豊かにする記事を毎日更新中!
※記事の画像・文章の無断転載はご遠慮ください
Instagram:@osharetecho
Website:https://osharetecho.com/
お問い合わせ:osharetechoofficial@takarajimasha.co.jp








