焼き物ラバーにはたまらない♡ 陶器の街「ストーク=オン=トレント」を散策【たかまるゆうかの英国スケッチ ー海外生活で気づいたことー】
2025年6月にイギリスに渡り、新天地での生活がスタートしたイラストレーター・たかまるゆうかさん。イギリス滞在中に体感した文化や歴史、気になるグルメやスポット、現地マダムのファッション事情などを月に1回のペースでお届けします!
陶器の街に行ってみた
日本には瀬戸や有田など焼き物で有名な街がありますよね。実はイギリスにも、イングランドの中部にストーク=オン=トレント(Stoke-on-Trent)という焼き物の街があります。
私のイラストをご覧になったことがある方はお気づきかもしれませんが、細かな模様やディテールの細かいもの、アンティークを描くのが大好きなのでして……。そういったものを見るのはもちろん、触れるのも好きなのです。イギリスの陶器の模様からインスピレーションを得ることや参考にすることも多いので、日頃なかなかお目にかかれない「本物」を見に行ってきました。
実際に訪れてみると、焼き物の街というだけあって、各メーカーの工場やショップ、さらにはすでに閉鎖されてしまったメーカーの史跡なども点在。今回は日帰りだったので、目的地は2か所に絞ることにしました。
World of Wedgewood

なぜこちらを選んだのかというと、ストーク=オン=トレントを陶器の街として世界に広めるきっかけとなったメーカーということ、創業者のジョサイア・ウェッジウッドの生涯がとても興味深かったからです。
陶器工房を営む家に生まれたジョサイアは幼くして父親を亡くしたため、小学校を中退。兄が受け継いだ工房で弟子として働き始めます。しかし、天然痘を患い、後遺症として足が不自由になってしまいます。その後は、素地(焼き物になる前の粘土)の開発などに積極的に取り組みました。1759年に独立し、今日には「英国陶芸の父(Father of English Pottery)」と呼ばれる功績を残します。
Youtubeなどでも詳しい解説があるので気になった方は是非一度ご覧になってください。
ジョサイア時代の代表作たち

クリーム色の素地を素焼きし、鉛の釉薬をかける製法を用いた陶器。表面が磁器のような半透明の質感が特徴です。作業工程の一部を機械化したことにより低コストで生産が可能になり、労働者階級まで浸透しました。
温かみのあるクリーム色に、華美すぎない装飾の陶器。一般に広まったのは納得です。
画像はロシアの女帝、エカテリーナ2世が注文したピンク色の「Husk(植物の実を包むさや)」と、夏の離宮で使用する50人分のディナーセット「The frog service」。
お皿に描かれているのはカエルが多く生息する沼地にある離宮。ということで、上部にはカエルのマークが!
柔らかい黒の濃淡で繊細に描かれたイギリスの風景と植物、遊び心のあるカエルのマーク。このギャップに心がくすぐられました。

鉱物の石英(せきえい)の一種、ジャスパーをイメージした陶器シリーズ。この色彩鮮やかなカラーとマットな質感にたどり着くまでに、なんと1万回近い試作を重ねたのだとか。
古典美術からインスパイアを受けて作られた陶器だといい、特にブルーに白いレリーフが施されているものが有名です。
当時の建築様式とマッチしたジャスパーウェアは、最先端のインテリア商品として親しまれていました。現在はウェッジウッドの看板商品になっています。
レリーフは型に入れて形成し、貼り付けてから燃焼を行うそう。細やかな手作業の必要性が想像できます。
Emma Bridgewater factory

こちらには工場、正規ショップ、ファクトリーショップ(アウトレット商品)、カフェがあります。陶器の歴史に触れられる美術館はないものの、ショップ内の商品が充実。新商品からレギュラーの商品までじっくり見ることができます。
創業者で現会長のエマ・ブリッジウォーターが陶器制作への道を志したのは、日常のささいな出来事がきっかけ。ある日、母親に贈るためのカップとソーサーを探しに出かけたエマ。いくつか店をまわるも、母が愛するカジュアルな雰囲気のキッチンに合うものが見当たらなかったのだそう。それを機に陶器づくりを始めたなんて、これまた情熱的なエピソードですね。

ハンコのように柄を押して制作するスポンジプリントという技法を用いていて、一つ一つ焼き上がりが異なるのが味わい深いのです。柄の形状はシンプルな形でデザインされつつ、ハンドメイド感もあって、どんなキッチンにも溶け込みそう。
店内をゆっくり回っていると、正規ショップの裏側に小さな庭を発見! ここでもデザインのアイディアが生まれていそうです。
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