【更年期の養生 Vol.1】更年期の不調は体内の温暖化現象。自然に寄り添った生活でやわらげて
更年期の不調は、地球温暖化に似ている

人間の体にとって“生命力の源”である腎は、自然における海の役割に置き換えることができます。
海は生命誕生の場所。40~35億年前に、波の打ち寄せる力によって海中のタンパク質から原始細胞が生まれたという説があります。波を引き起こすのは主に月の引力ですが、女性の月経もまた月の引力の影響を受け、月の満ち欠けと同じ約28日のサイクルを宿しています。初めての月経は古来から「初潮」と呼ばれてきました。また、ミネラルをたっぷり含む海水は、羊水の成分とよく似ているとも。腎はいわば“体の中の海”と言えるでしょう。
太古の海に思いをめぐらせましたが、一方で現代の海はと言うと、地球温暖化の影響で海水の温度が上昇。ゲリラ豪雨や台風が多くなり、その一方で大陸内部では干ばつが進行、また一方では局地的な寒冷化も見られるなど、熱と水分のバランスが極端にかたよった異常気象が起こっています。
実は、更年期の女性の体で起こっていることは、この地球温暖化の現象によく似ているのです。ゲリラ豪雨のような突然の大汗や、干ばつのような乾燥症状、局地的な寒冷化とも言える手足の冷え。原因は“体の中の海”である腎の力の低下による“温暖化”にあります。
海には、大量の水の力で大気の熱を冷やす水源としての役割と、膨大な太陽エネルギーを蓄熱して大気を温める熱源としての役割とがあります。この海の水源と熱源の働きがバランスよく作用することで、地球全体が暑くなりすぎず寒くなりすぎないように調整されています。
同じように腎にも、体の水源となる「腎陰(じんいん)」と、熱源となる「腎陽(じんよう)」が蓄えられており、両者がバランスよく作用することで体が冷えすぎず温まりすぎない適温に維持できるわけです。
しかし腎陰も腎陽も、老化とともに徐々に減少する運命に。特に女性の場合は月経や妊娠などで血液を多く消耗するため、腎陰が多く減少しやすいのです。そして更年期を迎える頃になると、腎陰が大きく減って冷やす力が弱くなり、腎陽の熱がオーバーヒートしやすい状態に。すると過剰になった腎陽の熱は下半身から上半身へと竜巻のように昇ってしまうため、上半身が急激に熱くなってのぼせたり、頭部に大汗をかいたり、乾燥がひどくなったりし、一方で下半身は熱が不足するために足先が氷のように冷えたりと、熱と水分のバランスが極端にかたよってしまうのです。地球温暖化ならぬ、“体内温暖化”と言える状態ですね。このように腎陰が減少して熱症状が強く現れる状態を「腎陰虚(じんいんきょ)」と呼んでいます。
この記事を書いた人
国際中医師・国際薬膳師・東洋医学ライターTSUBO
健康雑誌編集部員をへて独立し、以後、健康や美容に関する雑誌・書籍・WEBの企画・編集・執筆を数多く手掛ける。現在は主に東洋医学による予防医学や、東洋医学から見た自然と人体のつながりについて執筆活動中。
Twitter:@MomoOtsubo
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