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大人のおしゃれ手帖 2月号

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2026年2月号

2026年1月7日(水)発売
特別価格:1740円(税込)  
表紙の人:鈴木保奈美さん

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【人形浄瑠璃文楽、人間国宝・桐竹勘十郎さんインタビュー】
「人形やったらこうするのに、と常に思いながらの映画撮影でした」

大人のおしゃれ手帖編集部

まだまだ“ええ人形遣い”を目指してやってます

たとえば、人形がモノを拾うという動作をするとします。目線を動かして首を傾け、落ちていたモノを見つけ、胴体を動かし、肩を少しだけ揺らして手を伸ばし、指先を使って拾い上げる――。人間ならほんの一瞬の単純な動作も、文楽では3人が呼吸を合わせていくつもの動作を組み合わせる必要があります。しかも流麗な動きで。

「きれいに見えるか? 自然に見えるか? 人形というのは、まあ人間もそうでしょうけど、角度の組み合わせなんですよ。肩や胴体の傾き、腕の位置や角度が決まっていて、このときはこれしかない!というのがあるんです。師匠方は、それを長年やってはって。‟きれいな形やな”というのは、その決まった角度へ、自然にパッと持っていっているんですね」

小ぶりのペットボトルを「首(かしら)」に見立てて説明してくれる勘十郎さん。

「人形の頭って、ちょうどこれぐらいです。それで、例えばお姫さんが上を向こうと思ったら(ペットボトルを上に傾けて)ここまで。それ以上に傾けてしまうと、角度としておかしい。お姫さんの動きではなく、お姫さんには見えません。もっと上を見ようと思ったら胴体を傾けます。胴体を動かすなら、肩もちょっと動かす、その角度をつけないと。これが角度の組み合わせです。文楽にはいろんな首がありますが、それをちゃんとわかって使っているか。人形の全身を使えているかどうか」

文楽の人形には、約80種類もの首があります。立役なら主役級を担うことが多い「文七(ぶんひち)」、力のみなぎった顔立ちの「金時(きんとき)」、女方ならかわいらしい顔立ちの「娘」、剃った眉とお歯黒の「老女方(ふけおやま)」などなど。首元のしかけ糸を引くと頭の上でに角が出て、血走ったような金色の目になり、口が耳まで裂ける「角出しのガブ」なんてものまで(それが女方にしかないってどういうこと?)、人形遣いはそれら全部の動きを体で覚えています。思わず「途方もないですね!」と言うと、「途方もないです。だから(修行に)時間がかかるんです」と笑います。では心を持たないはずの人形の‟演技”から、喜びや悲しみが伝わるのはなぜでしょう?

「人形は顔で表現するわけではなく、全身の角度を組み合わせて喜怒哀楽を見せる。それができると、浄瑠璃がなくても、ああ悲しいねんな、楽しいねんな、というのがわかる。その‟全身で”というのが難しいのです。人形を操る、動かすという技術者の部分と、その役を演じるという役者の部分、人形遣いは、そのふたつがないと十分に表現できません」

そのバランスが肝なのは、生身の俳優にも通じそうです。

「私自身、まだまだええ人形遣いを目指してやってますんで。14歳から始めて、ず~っと人形を遣うのが好きで。その気持ちは変わりません。変わらないというか、ちょっとずつその気持ちは大きくなっています。何かできるようになると、『じゃあこれもこういう風に遣いたい』という思いが新たに生まれ、もうひとつ、好きという思いが上がるのです。しかも人形遣いへの欲は深く、やりたい役もやってない役もたくさんあって。だから文楽をどんどん好きになり、どんどん上達しないと。先が長くて、『もうええわ』『ちょっとサボるか?』と思う暇がない。もう一生では足りませんわね」

PROFILE
三世 桐竹勘十郎(きりたけ・かんじゅうろう)
1953年生まれ、大阪府出身。人形浄瑠璃の人形遣いで、重要無形文化財保持者(人間国宝)。1988年大阪府民劇場賞奨励賞、1999年松尾芸能賞優秀賞、2003年父の名跡を継ぎ、三世桐竹勘十郎を襲名。2008年芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、2010年日本芸術院賞、2025年日本芸術院会員。役者としては映画初出演。


[映画]
『道行き』

大阪から奈良に移住し、購入した古民家の改修工事を進める青年・駒井(渡辺大知)。その様子を見に来る元所有者の老人・梅本(桐竹勘十郎)が語る昔の町、流れてきた時間の話に魅せられる。語らい合うふたりのなかで旅の景色が広がっていく。奈良の御所市を舞台に心の奥に眠る大切な風景を思い出させる、モノクロームでつづられる豊かな時間を探す旅。『おばけ』でPFFアワード2019グランプリを受賞した中尾広道監督が、第28回PFFプロデュース作品(旧称:PFFスカラシップ)として手がけた作品。
●監督・脚本・編集:中尾広道
●出演:渡辺大知、桐竹勘十郎、細馬宏通、大塚まさじ ほか
●配給:マジックアワー
●2月13日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル新宿ほか全国順次公開
©2025 ぴあ、ホリプロ、日活、電通、博報堂、一般社団法人PFF

撮影/白井裕介 取材・文/浅見祥子


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