緒川たまきさん×赤堀雅秋さん
ナイ―ヴかつ不器用な兄妹に
あるときは、同じ空間で息を合わせて。またあるときは、それぞれの場所でお互いの存在を感じつつ―。
ともに演劇界で活躍する緒川たまきさん、赤堀雅秋さんは、そうして充実の歳月を重ねてきました。
久しぶりの共演作でナイーヴかつ不器用な兄妹に扮するおふたりの「同志」感、その現在形は?
触発される存在であり頼れる味方であり
緒川たまきさん(以下、緒川)赤堀さんとは、俳優としての共演はお久しぶりなんですよね。前回は福田恆存の作品『龍を撫でた男』(2012年上演)で、それぞれ違った狂気をはらんだ役だったんですが、赤堀さんが演じたのは私に子どもっぽい恋情を抱く男性で。
赤堀雅秋さん(以下、赤堀) よく覚えてますね。僕が唯一思い出せるのは、演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんから、距離を詰める場面で緒川さんの太ももに触ってくれと言われたこと。すごく恥ずかしかったのを覚えています(笑)
緒川 そこはすっかり忘れてました(笑)。今回の作品では赤堀さんが兄で私が妹。KERAさんは俳優としての赤堀さんに演出するとき「寅さんのように」という言葉を幾度となく使うんですが、どこかそういう気持ちにさせてしまうものがあるのでしょう。
赤堀 いつだったかは「寅さんとデヴィッド・リンチを足して2で割ったような感じで」と言われたこともあります。
緒川 普通、そのふたつは足して割らないですけどね(笑)。寅さんといっても、単に朗らかな人というより、報われないのについはしゃいでしまうとか、よかれと思って余計なことをやってしまうとか、そういった意味での「ように」ですよね。今回は兄だけでなく、妹も社会性の欠落から対人的な部分で問題を抱えていて、外側からはやや残念にも見える兄妹の心の機微を扱った物語になると思います。
赤堀 僕としては、とにかくKERAさんの書き下ろす新作に参加できることが楽しみで仕方がない。人殺しの役だろうと、センチメンタルな話であろうと、携わっていろいろ触発されることが嬉しいんです。
緒川 劇作家であり演出家でもあられる赤堀さんは、KERAさんにとってきっと痛みをわかってくれる味方のような存在なんだと思います。
赤堀 台本が遅れても許してくれるとか?
緒川 アハハ!側にいてくださると癒やされて、安心して作品作りに打ち込めるというニュアンスのようですよ。私としても、勝手に気心が知れているつもりでいます。
ひとつのテーマに向かってお互いが輝けるように
赤堀 劇団をやっていた若い頃は、誰とでも話せばわかり合えるだろう、酒でも酌み交わせば……という青くさい考え方から、お互いに傷つくようなことをしてしまったり。でも、この年齢になると、わかり合えない相手とはわかり合えないんだなと、むやみに深入りしようとは思わなくなりました。
緒川 私はもともと人と距離をとってしまうほうで、時々、そんな自分の性質に引け目や負い目を感じて反省したりもしていたんです。ただ、私たち俳優は、作品作りというテーマで切磋琢磨するなかで、気持ちが通じ合った!と思えるすばらしい瞬間が幾度もあって……それはきっと、赤堀さんもつねづね感じていらっしゃることではないかと思うんですが。
赤堀 そうですね。
緒川 ですから、いわゆる友人関係とは別に、ひとつのテーマに向き合ったときに、相手と合点がいく状態になれればと。とくに、今回のような作り手のひとりとして自分がお招きする立場にあるときは、出演者にもスタッフにも、それぞれの持ち場でのびのびと輝いてほしいという気持ちが強くあるんです。そして、その魅力を味わい尽くしたい……と言いながら、今回、KERAさんは赤堀さんに「得意ではない方向の役をやってほしい」なんて言ってましたけど。
赤堀 KERAさんにはもう僕の手の内なんてだいたいわかってるだろうしなぁ。いちばん苦手なのは「ザ・普通」ですね。
緒川 普通?
赤堀 俳優としては、やっぱり笑いや狂気がよりどころだし、観る人にそれを植え付けたいという野心もあったりする。でも、たまに全部削ぎ落とされた普通の人を演じていると「なにやってるんだ、俺?」って。
緒川 フフフ、大丈夫。助け合いながらも相手の足を引っ張り合っている兄と妹、ある意味、普通ではない関係になると思います。
〔 舞台 〕
ケムリ研究室no.5『 サボテンの微笑み』
戦争の影がしのび寄る前のひととき、市井の人々が抱く喜びと哀しみ。小さな夢を紡ぐ、穏やかな物語。
「大正から昭和初期の言葉は、同じ日本語であっても今とは使われ方が違う。私たちが縛られている、今という時間から少しだけ自由になれる楽しさも感じていただけたら」と緒川さん。
瀬戸康史、瀬戸さおり兄妹も共演。
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:緒川たまき 瀬戸康史 瀬戸さおり
清水 伸/赤堀雅秋 萩原聖人/鈴木慶一
東京公演:開演中~4月19日(日) シアタートラム
※兵庫、豊橋、北九州、新潟公演あり
俳優
赤堀雅秋さん
1971年生まれ。90 年代より作・演出を手がけ、2013 年『一丁目ぞめき』で岸田國士戯曲賞、26 年『震度3』で読売文学賞戯曲・シナリオ賞。公開待機作に映画『しびれ』(監督:内山拓也)。
俳優
緒川たまきさん
映画『PU』でデビュー。最近の舞台出演作に『桜の園』『最後のドン・キホーテ』など。ケムリ研究室での出演作に『ベイジルタウンの女神』『砂の女』『眠くなっちゃった』がある。
photograph: Aya Tokunaga[KiKi inc.] text: Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖2026年4月号より抜粋
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