【片桐はいりさん × 安藤玉恵さん】
「ひとりだけど、ひとりじゃない」
揺るぎないものが伝わる特別対談
—ちゃんとした演劇を見せてくださる人。はいりさんの初日、私は楽しみに観ますよ
片桐 あとは、お客さんの存在ですね。演劇って、完成したものをお見せするというイメージが我々にもお客さんにもあると思うんですけど、ひとり芝居をやるとそれが不可能だということがわかるじゃないですか。
安藤 (頷きながら)わかるわかる。
片桐 だって、俳優はそもそも数で完全に負けてるわけですよ。だから、以前やったときは「今日はこんなふうになりましたけど、お気に召さなかったらそれはあなたのせいでもあるのよ?」って気持ちでした。「あなたのせい」は言い過ぎですけど(笑)。
安藤 確かに、カーテンコールから帰ってきて俳優同士で話すのって「今日、お客さん湧いてたよね!」とかだったりしますよね。その点でも、ひとり芝居は孤独で……。
片桐 演じる女の子も、家族と最小限の人としかつながりがないし。まあ、私も同業の友だちは少ないタイプなんですけど。
安藤 私も去年、演劇仲間からは全然忘年会に誘われなかったなぁ(笑)。まあ、1回ご一緒したらずっと連絡を取り合うかといったら、そうでもないのが実情ですけど。
片桐 一生懸命連絡を取り合うことって、前はもう少しあった気がするんですけどね。1作を終えるたびに感動や寂しさがちゃんとあって、それが1週間くらいは続いてた。でも、今はほとんどない。たぶん、頭と心がデジタルになってきてるせいだと思います。すぐに次のことが待ち構えているから、ひとつひとつ心に楔くさびを打っていけなくなってる。
安藤 逆に、グループLINEでは写真とかメッセージがどんどん流れてきて、終わりがない感じです。望んだわけでなくても、情報だけはどんどん増えていって。
片桐 ねぇ、なんか寂しい。でも一方で、映画館でアルバイトしてた頃の友だちとは40年経っても一緒に映画を観に行ったりしているので、若い人には「大丈夫だよ」と言ってます。今、人と人がつながっていられるのはデジタルのおかげもあるだろうし。
安藤 そうですね。まずは、一緒にこの作品を頑張って……はいりさんの初日、私は観たいなと思ってますけど、どうですか?
片桐 私は……あれ、今想像したら、なんだか急に怖くなってきた(笑)。
安藤 アハハ! でも、なるべく「へいよっ」って感じで舞台に出ていきたいですね。
片桐 うん。安藤さんを見習って、そのくらいでやれるようにしたいです。
〔 舞台 〕
KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース
『スプーンフェイス・スタインバーグ』
7歳にして命の終焉に向き合う自閉症の少女・スプーンフェイス。その曇りのない目に映る世界を、マリア・カラスのアリアとともに届ける珠玉のひとり芝居。「お話は同じでも、きっとそれぞれが違ったところを掘っていくと思います」と片桐さん。すでに名コンビ感溢れるおふたり、ぜひセット券で。
作 リー・ホール 翻訳 常田景子
演出 小山ゆうな
出演(Wキャスト) 片桐はいり 安藤玉恵
2月16日(金)~3月3日(日)
KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
俳優・片桐はいり
1963年生まれ。大学在学中の82年に初舞台を踏む。舞台出演作に『片桐はいり一人芝居 ベンチャーズの夜』、最近の出演作に『嵐が丘』『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」』など多数。
俳優・安藤玉恵
1976年生まれ。最近の出演作に舞台『桜の園』『阿修羅のごとく』、映画『PERFECT DAYS』『波紋』、連続テレビ小説『らんまん』など。実家のとんかつ店でひとり芝居を不定期開催。
撮影/白井裕介 スタイリング/salon de GAUCHO( 安藤さん) ヘアメイク/山本絵里子 文/大谷道子
大人のおしゃれ手帖2024年1月号より抜粋
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