【インタビュー】「働けば働くほど人を幸せにできる仕事をしたい」
たいら由以子さんの原動力とは?
働けば働くほど人を幸せにできる仕事をしたい
コロナ禍直前の2019年、由以子さんは「株式会社ローカルフードサイクリング」を設立した。53歳だった。持ち運びのできるバッグ型のコンポストを核にした会社だ。
この革命的ともいえるコンポストは20年以上のNPO「循環生活研究所」での段ボールコンポスト普及の実践から生まれた。
「このままNPOの活動だけでは、自分が生きている間に、半径2キロメートルの栄養循環は達成できないと思い、会社化したのです」 それまでに年間8万人以上の人に段ボールコンポストなどでの生ゴミの堆肥化を伝えたが、現実は生ゴミの90%は可燃ゴミとして焼却されていた。
由以子さんの取り組みを取材に来る人も多くなって、みんな「頑張っていますね」と言ってくれるが、「そう言っている人が実際に家でコンポストをしているのかはわかりませんでした」。
草の根的な活動としてNPOを続けていたが、「食べ物をもう一度食べ物に変える」という生き物の当たり前の根本が真っ当な仕事になり得ない状況をおかしいと思っていた。
商業ベースで成り立つようにしなければ、理念として掲げている「半径2キロの栄養循環生活」が実現する暮らしにはならない。そんな思いを抱えながら、更年期前後の混迷期をくぐり抜け、「LFCコンポスト」が生まれる。
コロナ禍の自粛期間とも重なり、人の意識が家庭生活に向かい、コンポストバッグは想像以上に都市部で受け入れられた。
「私は自分の夢や目標に、力を出し尽くしてその日その日を終えるタイプ。更年期を抜け出したことも自覚しないまま、今日まで来てしまった感じがします」
ますます忙しいが、精神的には充実し、仲間にも恵まれているという。
「以前とは違いますね。今ではランチはみんなで作って食べるようになって、会社での生ゴミも堆肥にしています。東京に出張しているときも、おいしい野菜を食べさせてくれる仲間とも出会えました」
女性は月経が始まってから、出産、授乳、子育て、更年期と「苦労が多くて、コンプレックスを抱えることばかりだと不満に思うこともありましたが、その度に自分の中の何かと向き合い、努力や工夫を重ねてきました」
大学卒業後に就職した証券会社ではバブル崩壊を経験した。
「証券会社時代は、働けば働くほど人を不幸にしてしまったから、働けば働くほど人を幸せにできる仕事をしたいと思ってきました」 半径2キロの栄養循環生活が世界中で実現するように、そして周りの人への感謝のためにも、元気でありたい。
「父のことで検査ばかりする医者と大げんかして病院が大嫌いになりました。それで健康診断もスキップしまくってきましたが、近いうちに行こうかと思います」
巡りよい暮らしの中には、もちろん人の体も心も含まれている。
半径2キロの中心は由以子さん自身なのだ。50代の終盤、自分を後まわしにせずに、夢に向かって働いている。
〜私を支えるもの〜
撮影/白井裕介 聞き手・文/石田紀佳 編集/鈴木香里
※大人のおしゃれ手帖2024年4月号から抜粋
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