【桐島かれんさんインタビュー】
「夢中になって、何かに没頭する。その時間が私にとってのセラピー」
夢中になって、何かに没頭する。その時間が私にとってのセラピー
私物のギターを抱え、かれんさんがゆっくりと弾き始めたのは、ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」。
「昨日の夜、久しぶりにコードをおさらいしました。昔、娘たちがギターを習っていたのに触発されて、私もレッスンを受けていたんですけど、しばらくギターから離れていたので」
ギターに興味を持ったきっかけが、子育てに手がかからなくなった数年前、90年代の音楽をあらためて聞き返したこと。
「70年代、80年代の曲はリアルタイムで聞いていたけど、90年代の音楽は育児で忙しかったこともあって聞き逃していたんですよね。当時は童謡やディズニーの曲くらいしか聞いていませんでしたから(笑)。
おさらいのつもりで、ニルヴァーナやオアシスの曲を聴いたり、YouTubeで昔の映像を観ていたら、(ニルヴァーナのボーカルの)カート・コバーンのファンになっちゃって。
カートみたいにギターが弾けるようになりたい! とギターを習い始めたの(笑)。今はやめてしまったけど、一緒に習っていた息子はそのまま続けていて、今も家で弾いているんです。私はそれを聴きながら料理や掃除をして。やっぱり家の中に音楽があるっていいですよね」
かつて好きだったことに再チャレンジするのもひとつの手
ギターやバレエを習ってみたり、独学でピアノを弾いたり、ガーデニングにはまったり……。かれんさんの毎日は、常に〝熱中できるもの〟で彩られています。
「私は何かに夢中になっているときが、いちばん幸せ。それが自分にとってのセラピー。時間を忘れて没頭できるものがあるかどうかで、人生はまったく変わりますから。
忙しいなかでも、自分にとっての特別な時間を見つけたいですよね」
これ! という何かを見つけるまではトライアンドエラーを繰り返し、自分に合わなければ、さっと次に進む〝切り替え力〟も、大人にとっては必要なこと。
「私も熱しやすくて冷めやすいタイプ。でも、無理に続けようとはぜんぜん思っていないんです。三日坊主でやめたものもたくさんありますしね。たとえば、前に初心者歓迎を謳っているバレエの教室に通ったこともあるけど、ほかの生徒さんは元経験者の上手な人ばかりで、すぐに行かなくなってしまった(笑)。だけど、バレエ用品店でいろいろ買いそろえるのは楽しかったし、ワクワクする経験でした。だから、三日坊主だって全然問題ない!と。三日坊主を100回繰り返せば、いつか長続きするものが見つかるはずだから」
フットワークを軽くして、「とりあえずやってみる」の精神を持つことで、視野は広がっていくのだとかれんさん。
「生活が変わり続けているほうが、私は好きなんです。だから犬を迎えたり、新しい趣味を見つけたり……と、常に自分で自分を飽きさせないようにしてるのかも。年齢とともに、どうしても考え方やものの見方は凝り固まってしまいがちだけど、そうはなりたくない。刺激と好奇心を持ち続けて、新しい知識を身につけていきたいですね」
とはいえ、今まで仕事や育児に忙しかった人ほど、自分のための趣味を見つけることは難しいもの。なかなか夢中になれるものが見つからないなら、かつて好きだったことに再チャレンジするのもひとつの手です。
「手先を動かすのが好きだった人は手芸や編み物にトライするのもいいし、スポーツをやっていた人は、体を動かせばいい。忙しくて離れてしまった趣味を再開するのもいいですしね。子どものときに好きだったことって、大抵は今も好きなんですよ。
私はコロナ禍で家時間が増えたのを機にガーデニングにはまりましたけど、もともと植物や花は好きだったんです。ただ、昔は家にあるだけで、実は詳しくなくて。
時間ができたことで、植物の特性を調べたり、枯れてしまったらその理由を考えたり……。もともと好きだったことを、そうやって深掘りするだけでも、世界が広がります」
毎日続けていれば、ちゃんとベテランになってくる。だから年を取るのも悪くないなって
受け身で待つのではなく、みずから楽しいことを探すために動く。そうすることで、これからの人生はもっと豊かなものに。この8月には60歳を迎えるかれんさんですが、新たな毎日を、どう過ごそうと計画しているのでしょうか。
「60代だからといって、特別に何かが変わることはないけど、昔ならリタイアメントの年代ですよね。私も最近になって、ようやく仕事に追われる感覚がなくなってきて。
今さらで恥ずかしいけど、毎日ごはんを作って、家の中を整えて……と、ごく普通のことができているのが楽しい。それと、長女に子どもが生まれて、今は孫の面倒を見るのにも忙しいんです。
娘は早くに独立したので、久々に長い時間を一緒に過ごせるのも楽しい。こんな風に成長して大人になったんだ……としみじみしながら、もう一度子育てをしているような気分です」
「生活を楽しむ」という基本においても、持ち前の凝り性を発揮。海外のYouTuberの掃除動画を観たり、重曹やクエン酸を使ったエコクリーニングの方法を調べたりと、日々研究を重ねているそう。
「暮らし上手な人が手際よく掃除している動画を観ると、私もがんばろう、とモチベーションが上がるんですよね。昔は余裕がなくて雑にすませていたことも、今なら時間をかけてできる。自分は家事が苦手だと思っていたけど、この年になって楽しめるようになりました。
日常の暮らしをちゃんとするって生きていく上での基本だけど、意外と大変。でも毎日続けていれば、ちゃんとベテランになってくる。だから年を取るのも悪くないなって思うんです」
KAREN KIRISHIMA
1964 年、神奈川県生まれ。モデルとして活躍する傍ら、ファッションブランド「ハウスオブ ロータス」のクリエイティブディレクターを務め、世界中を旅して得たインスピレーションを生かした服や雑貨をプロデュースする。母・桐島洋子さんのエッセイに、かれんさんら3 人の子どもが書き加えた書籍『ペガサスの記憶』も話題に。YouTubeチャンネル「桐島かれん at home」では、愛犬との暮らしや料理、旅など日々の暮らしについても発信している。
シャツ¥27,500、パンツ¥29,700 /ともにシーオール、靴¥31,900 /ファビオ ルスコーニ(すべてジャーナル スタンダード ラックス 表参道店)他、スタイリスト私物
撮影/浅井佳代子 スタイリング/佐伯敦子 ヘアメイク/重見幸江 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖 2024年6月号より抜粋
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