【インタビュー】小林聡美さん
人生初の”歌”に挑戦!
好奇心を錆びさせない秘訣とは?
女優、文筆家、大学生、俳人―。
さらにこの春、「チャッピー小林」として歌に挑戦されました。
そんな小林聡美さんに、好奇心を錆びさせない秘訣を伺いました。
人生初のコンサートで歌に挑戦しました
いくつになっても新しいことを学んだり、心の動くままに新しいことを始めたり―。
小林聡美さんはお会いするたびに、「今、気になっていることはなんですか?」とつい、聞いてみたくなる人。
俳優業、執筆業を続けながら、40代半ばで大学生に。日本文化への造詣を深め、落語鑑賞、句会はずっと続けています。
そんな小林さんがこの春、初めて挑戦されたのが歌。
昭和40年代から駱駝(ラクダ)のタイムマシーンでやってきた歌手「チャッピー小林」として、去る4月6、7日の2日間、初コンサートのステージに立ちました。
「最初に話が持ち上がったのは2年くらい前。歌うことは好きでしたけど、「まさか~」「いやいや~」とお茶を濁していました。でも、その後も定期的にゆる~く、オファーをいただいて。あまりにゆるいオファーだったので、そんなにかたくなにならずともいいのかな、とゆるい気持ちでお引き受けしたら、中味は本気のやつでした(笑)」。
話し合うなかで「チャッピー小林」というステージネームも生まれ、「自分がすべきことは、歌う準備をすること」と、練習を重ねていったそう。
演劇の舞台稽古とは違い、リハーサルが4回ほどだったことに驚いたと小林さん。
「芝居の舞台は一定の期間をかけて皆で稽古をして作り上げていきますが、コンサートの場合はメンバーそれぞれが自分のパート練習をしてきて、最後に合わせて調整する感じ。当たり前ですが、できるのが前提のプロフェッショナルな世界なんだなと思いました。
だから私は歌手『チャッピー小林』として、できる限りの準備をしようと。歌詞を覚えることから始まって、ボイストレーニングも地味に続けて。そうやってそれぞれに磨きをかけてリハーサルに集まった時、この人たちが背中にいてくれたら、自分は何も不安になることはない、安心して乗っからせてもらって、そのときの精一杯を出そうと思いました。その感覚も初めての経験でした」。
選曲はたとえ知らない曲でも聞いて楽しい、昭和歌謡のナンバー。スタッフからも客席からも伝わる高揚感が後押しとなり、全16曲、楽しく歌えたよう。
歌手を始める「入口」は踏ん張りも必要でしたが、気負わずに動いてみることで、「出口」には素晴らしい景色が広がっていました。
始めてみなければ得られない景色を見ないなんてもったいない
私たちはつい、何かを始める前から「失敗」を恐れてしまいがちですが、「失敗? それってなんですか?」と逆に問いたいと言う小林さん。
「新しく始めることなんですから、最初からうまくできるわけないんですよ。私も歌っている最中は必死でしたし、うまくできたというより、一生懸命やったという感じ。
そして、ものごとは自分の価値観だけで、ダメだった、失敗だったと決める必要はないと思うんです。案外、周りの人は別の角度から見てくれているものですよ。だから始める時は〝気負わずに〟です。いいも悪いも自分の考え方次第。始めてみなければ得られない景色が必ずありますから」
毎日を忙しく生きていると、「時間が取れない」と諦めてしまうことが多いかもしれません。小林さんも「継続には、時間をいかに作るかがカギ」と言います。
俳句が続いているのも、毎月の句会にはできる限り出席することにしているからと。
「何かを始めるきっかけを思い返してみると、時間に余裕のある時なんです。時間があるときにふと、『始めてみようかなあ』と考えだす。本当に始めたいなら、そのことにどのくらい時間を割けるかを考える。これをやる代わりに何を諦めるか、忙しくても時間を作れるか。どうしても無理なら、今はタイミングじゃないってことで。
でも、放っておいても人生の残り時間はなくなっていきますから、皆さん。
そうなってくると、『いま始めなきゃ!』って思うはず。その時が始める時です。それまでにやりたいことの『タネ』をいっぱい持っておいて」
ほかにも「お灸」に夢中
小林聡美さんのコンサートをWOWOWで放送・配信!
俳優・小林聡美
1965年生まれ。東京都出身。俳優として数々の映像作品、舞台に出演し、代表作に映画『かもめ食堂』『めがね』『プール』『紙の月』、ドラマ『やっぱり猫が好き』『すいか』『光とともに…〜自閉症児を抱えて』『ペンションメッツァ』など。執筆家としても人気が高く、『聡乃学習』(幻冬舎)、『わたしの、本のある日々』(毎日新聞出版)、『茶柱の立つところ』(文藝春秋)など多数の著書がある。
小林さん着用:ワンピース¥42,900/アトリエ・ダンタン(ハオス&テラス)、ピアス¥8,800/コ・スターリング(コ・スターリング自由が丘店) 、その他スタイリスト私物
撮影/砂原 文 スタイリング/藤谷のりこ ヘアメイク/北一騎 文/竹田理紀[mineO-sha]
大人のおしゃれ手帖2024年7月号より抜粋
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