俳優として貫きたい「あり方」について率直に語る
【野村萬斎さん × 浜辺美波さん】
見上げるほどに偉大だと感じていた人も、一年、また一年と、さまざまな葛藤を重ねてきたひとりだった。
大人同士の出会いから生まれる発見と喜びを分かち合う対談連載、今回は、新作映画で時空を超える(?)遭遇を果たした浜辺美波さんと野村萬斎さん。
俳優として貫きたい「あり方」について率直に語りました。
異世界の存在と現実に出会えるなんて!
撮影中も、子どものように喜んでいました
浜辺美波さん(以下、浜辺) 幼い頃、萬斎さんが出演されていた『にほんごであそぼ』を拝見していたので、今回の映画に萬斎さんのお名前を見つけた瞬間、「ご共演させていただけるんだ!」と飛び上がりました。私の中ではまさに「異世界にお住まいの方」という印象だったので、生でお会いする機会に恵まれたことを、撮影中もずっと子どものように喜んでいたんです。
野村萬斎さん(以下、萬斎) いやいや、僕だってまだ5歳児のようなものですよ(笑)。こちらこそ、大活躍されている浜辺さんと共演できるのを楽しみにしていました。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といえば日本史上の三英傑で、僕は初めて演じさせていただいたわけですが、実は3人の中で家康がいちばん自分から遠いんじゃないか? と思っていたんです。いつも狐顔だといわれているのに、まさか狸親父の役とは……。
浜辺 アハハ。竹中直人さんの秀吉、GACKTさんの信長と並んで、豪華でしたね。
萬斎 お二方とも個性が強烈なので、僕は家康らしく「鳴かぬなら鳴くまで待とう」という姿勢で臨みました。内閣の中で偉人たちと火花を散らす場面もやりがいがありましたが、やはり浜辺さんが演じたテレビ局の新人記者・理沙に思いを託す場面に、僕はロマンを感じましたね。時空を超えてやってきた存在が、現代を生きる若者と出会い、非常なる信頼を寄せる……そういう意味では、どこか『E.T.』のような世界観だなぁと思う場面もありました。
浜辺 本当に。私も、理沙が家康とふたりで語り合う場面が強く印象に残っています。この国を守っていかなければという家康の、萬斎さんの真剣な表情を見て、つい私も同じ気持ちを抱いてしまいました。そして、撮影中に難しい局面を迎えた時の、萬斎さんをはじめベテランの方々の取り組み方がとてもひたむきで、思わず涙が出そうなくらいに素晴らしくて……。経験を積まれてきたといってもなかなかできることではないですし、自分の仕事への姿勢を省みる機会もいただけたような気がしています。
日本映画界を背負う人から、世界へも。
自分らしく、伸び伸びと羽ばたいてください
萬斎 それはやはり、いいものを作りたいという思いからでしょうね。映画は作り物であり虚構ですが、作る立場の人間としては嘘をつきたくない。監督やスタッフの要求には応えたいし、何より、向かい合う浜辺さんがいつでも真剣かつ純粋に受け止めてくださったからだと思いますよ。
浜辺 いえいえ……。あの、萬斎さんは、悩んだ時はどんな風に気持ちを立て直されるのですか? これから20代後半に向かって「どういう作品を選ぼうか」「何が自分には足りないのだろうか」など、最近、夜になるとつい考え込んでしまうんです。
萬斎 うーん、僕の場合はちょっと特殊な環境にあったということもあり、20代の頃にはすでにあれこれ忙殺されていましたが……やっぱり「僕らしくやろう」ですかね。自分に与えられた役目を果たすこと、それと、周囲の役者さんが何をしているかをよく見なければ、とも思っていて。それは今も続いていて、だから今回も「鳴くまで待とう」だったのかなぁと思います。
浜辺 確かに、そうですよね。その「自分らしく」についても、私はまだまだ考え込んでしまいそう……いつも朝には、すっかり元気になっているのですが(笑)。
萬斎 フフフ。でも、製作報告会でのスピーチなどを伺っていても、作品全体への目配りをされていて、感心しましたよ。この若さでこれだけ成果を出していらっしゃる方は、見ている世界が大きいのだなと。これからの、いや、すでに日本の映画界を背負っている浜辺さんですが、あまりプレッシャーは感じずに、のびのびと、ワールドワイドにも羽ばたいていただきたいですね。野球が大谷翔平なら、映像は浜辺美波! と。
浜辺 わぁ、どうしましょう(笑)。
萬斎 舞台出演はどうですか? 古典でも現代劇でも、浜辺さんらしく、きっと魅力的に演じられると思いますよ。
浜辺 ありがとうございます。いつか必ず挑戦したいと思っています!
〔 映画 〕
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』
総理大臣・徳川家康、経済産業大臣・織田信長、財務大臣・豊臣秀吉、そして内閣官房長官には坂本龍馬……。コロナ禍に沈む日本に、AI・ホログラムにより蘇った偉人たちが集結し、最強ヒーロー内閣が爆誕! 壮大すぎるジェネレーションギャップを受けて立つ新人記者に扮した浜辺さんは「エンターテインメントの中に深いテーマ性を感じ取っていただけたら」と。
原作:『もしも徳川家康が総理大臣になったら』
(著:眞邊明人 発行:サンマーク出版)
監督:武内英樹
脚本:徳永友一 音楽:Face 2 fAKE
出演:浜辺美波 赤楚衛二 GACKT 観月ありさ 竹中直人 野村萬斎
全国公開中
©2024「もしも徳川家康が総理大臣になったら」製作委員会
狂言師・野村萬斎
1966年生まれ。3歳で初舞台を踏み、94年に萬斎を襲名。舞台演出家、俳優としても活躍し、NHK大河ドラマ『どうする家康』、日曜劇場『アンチヒーロー』ほか、出演作多数。
俳優・浜辺美波
2000年生まれ。11年、映画『アリと恋文』でデビュー。最近の出演作にNHK連続テレビ小説『らんまん』、映画『ゴジラ−1.0』『サイレントラブ』など。今冬、『六人の嘘つきな大学生』が公開。
撮影/徳永彩 スタイリング/瀬川結美子(浜辺さん)、中川原寛(萬斎さん)
メイク/George(浜辺さん)、横田聡子(萬斎さん) 文/大谷道子
大人のおしゃれ手帖2024年7月号より抜粋
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