【9月の注目アート展】
田名網敬一 初の回顧展
ポップな極彩色に潜む死生観を紐解く
国際的にも高い評価を得る日本人アーティスト・田名網敬一。
ひとつの枠に捉われない個性豊かな色彩や表現方法は世代も国境も超え、多くのクリエイターに影響を与え続けている。
本展は、デザインと美術を股にかけて多様な活動を続けてきた田名網敬一の初となる大規模回顧展です。1936年、東京に生まれた田名網は、幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化の影響による、色彩鮮やかな作品で知られています。
今回の展示は、田名網が手掛けた約500点の膨大な作品を紹介することで、その60年 以上に及ぶ活動を「記憶」というテーマのもとに紐解いていくものです。
武蔵野美術大学在学中から才能を認められ、グラフィックデザイナーとして活動を開始。60年代はポップアートの影響を受け、複製技術を用いた作品を精力的に制作していきます。
特に80年代から現在までは、自身の幼少の記憶や実際の体験を基に作品制作を行うようになりました。極彩色で彩られた本作は、戦争を経験した田名網の幼少期の記憶と強く結びついたモチーフの数々から構成されています。
1980年に大病を患った田名網にとって「死」は切り離せない主題であり、同時に創作のエネルギーでもあり続けてきました。
本作では、多数の戦闘機が海に沈みながら妖怪のような生き物が中空を漂い、輪廻転生を思わせる混沌とした世界が繰り広げられています。田名網自身の記憶の曼荼羅図のような近年の作品には作家本人の死生観が反映されているかのようです。
「記憶の冒険」と題された本展で、ぜひ作家本人の頭の中をのぞくようにして過去から現在までの作品を体感してもらえればと思います。
トップ掲載作品:田名網敬一《死と再生のドラマ》2019年顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス 200×400cm(4枚組) © Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA
教えてくれたのは・・・
国立新美術館 特定研究員
小野寺奈津さん
慶應義塾大学大学院博士課程単位取得満期退学。愛知県美術館、資生堂ギャラリー学芸員を経て、現職。近年の主な担当展に『NACT View 01 玉山拓郎 Museum Static Lights』(2022年)、『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』(2023年)がある。
『田名網敬一 記憶の冒険』
場所: 国立新美術館(東京都)
開催:開催中〜11月11日(月)
開館 :10:00〜18:00(毎週金・土曜日は 20:00まで。入場は閉館の30分前まで)
閉館 : 火曜日
050-5541-8600(ハローダイヤル)
©国立新美術館
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