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2024年11月号

2024年10月7日(月)発売
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【井之脇 海さん】「役と出会った時のトキメキ、新しい人生観に触れた喜びを持ち続けていたい」

大人のおしゃれ手帖編集部

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真夜中の図書館で目を覚ました瞬介は、なぜか外に出られない。旧友の演劇仲間・行人、貴織らも同じように出られず、そこに居合わせた男女5人で芝居の稽古を始める。それは行人が作・演出するはずだった『ピアニストを待ちながら』だった--。世界的建築家・隈研吾による「村上春樹ライブラリー」で全編ロケを敢行。独自の世界観を描き続ける七里圭監督による映画『ピアニストを待ちながら』で、井之脇 海さんが主演を務めています。映画のこと、演技のこと、これからの役者像について聞きました。

この不条理さは、現代における大切なテーマ

知的だったりトボけていたり、どんな役にもさりげなく奥行きを与えて作品全体を底上げするように演じる俳優の井之脇 海さん。最新作の映画『ピアニストを待ちながら』では、真夜中の図書館から出られなくなる瞬介を演じています。12歳で出演した『トウキョウソナタ』、長編映画初主演作『ミュジコフィリア』に続き、ピアノを弾く役柄です。

「僕の役者人生はピアノに縁があるな、と(笑)。台本を一度読んだあと、すぐ2度、3度と読んだのを覚えています。難解ではありましたが、読めば読むほどその不条理さは現代における大切なテーマだなと。SNSなどの外的な繋がりを絶たれ、目の前の人と向き合い、理不尽な環境のなかでもがき、その繋がりを模索する。そのさまをぜひ体現してみたいと思いました」

その役が背負う背景は何もわからない。なぜ図書館に? 外に出られない理由は? 本人にとっても謎ばかりの瞬介という役をどう身にまとったのでしょうか。

「台本を何回も読み、迷い込む感覚で撮影に挑めたらと。感情の整理などはつけすぎないほうがいいのではないかと思いました。時間をかけて皆でリハーサルをして。撮影も時間を贅沢に使い、トライ・アンド・エラーを繰り返して丁寧につくっていきました」

映画の舞台は、早稲田大学構内にある村上春樹ライブラリー。約2週間かけ、ここで撮影を行ったそう。

「撮影現場は特殊な空間でした。昼夜逆転のなか閉じ込められ、精神的にも厳しくて。どんな現場でもわりと楽しくいられる人間ですが、ああいつ出られるのだろう……みたいな(笑)。でも撮影で建物の存在感や空間の切り取り方を見て、‟ここに影が映ると、得体の知れない恐怖みたいなものが表現できるのか”……などと芝居に活かせたものは多かったです。パワーをもらいました。静かな空間で、モノをひとつ落としただけで建物じゅうに響き渡り、自分の発した声が建物全体に聞かれているような感覚もある。ちょっと不思議な、村上春樹さんの小説のような奇妙さもありましたね」

映画はタイトルからもわかるように、ベケットの『ゴドーを待ちながら』をイメージさせる不条理劇。そのなかに村上春樹的な要素も感じ取ることができます。

「村上さんの小説は、学生時代に何冊か読んでいました。より好きになった明確なポイントは、出演した短編映画『カレーライス Curry and Rice』に『ダンス・ダンス・ダンス』の登場人物・五反田くんが出てきて、読んでみたことです。論理的で理屈っぽくて内省的。村上さんの小説を読むと、世の中の男子の誰もが感じるであろう、‟この主人公は僕じゃないか現象”が起きるんです(笑)。また自分は役者だからか、演じる目線で物語を読んでしまうところもあります。セリフのカギかっこは、頭のなかでは演じています。それは村上作品に限らずですけど」

また、SNSを通した会話の奇妙さ、多くの人が抱くそれへの違和感も巧妙に織り込まれている。

「撮影は、世の中の人が寝ている時間帯に行われ、スマホもほぼ持ち込みませんでした。リアルな会話しかない日々は、SNSが得意ではない僕にはどこか嬉しかったです。目の前にいる人と肌感覚というか、質感みたいなものを感じながら会話できるってやっぱりいい。美しく、素晴らしいことだよなと」

主役だから当然ですが、瞬介がどう在るか?で、映画の印象は大きく変わります。スクリーンのなかの井之脇さんは、不思議なほど揺るぎなくそこにいます。説明できないことが起きている、あの世界で。

「映画は瞬介の目線で進みます。彼が混乱すればそれを観る方も混乱し、映画として成立しなくなる。そこで、どうしよう!?とアップアップするのではなく、なんだこれは?とじっくり考えるようにしようと。それが後半にいくにつれて混乱が強くなる。その色合いはリハーサルを重ねて考えました」

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