アジアの新たな名作『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』
心揺さぶる熱演が絶賛! 主演ウー・カンレン インタビュー
痩せこけるために数日間の断食をした結果……
『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』
©2023 COPYRIGHT. ALL RIGHTS RESERVED BY MORE ENTERTAINMENT SDN BHD / ReallyLikeFilms
――カンレンさんの熱演を含めて多くのシーンが感動的で心に残る作品でした。ご自身では、どのシーンが思い出深いですか?
カンレン:撮影を始めるにあたってマレーシアの市場に到着したときに思ったことは、自分はやはりマレーシア人の外見をしていないということです。肌は白く、まったく現地になじんでいませんでした。そこで、日焼け止めを塗らずに、日が強い場所を探して、日焼けをしました。また、僕の役は痩せていないといけないので、食事をあまり食べず、空腹のままで撮影をしていました。
――それはつらいですね。
カンレン:面白かったのは、最後の方のシーンのために痩せこけないとならず、数日間、水だけ飲んで、断食をしたのです。そうしたら、助監督が「おかしいなあ。痩せているけれども若返って見える」と言ったんです。ご飯を食べていないから痩せてはいるけれど、なぜか顔色が良かったんです。断食というのは人の細胞を若返らせるんだな、というのを立証できました(笑)。
ウー・カンレンのポートレイト
――本作での演技が高く評価されています。カンレンさんのキャリアにおいて、本作はどのようなものになると思いますか?
カンレン:42歳になり、中堅世代といわれるようになりました。これまでは、好奇心の赴くままに個性的な役にも挑戦してきましたが、今回の役を演じて多くの拍手をいただいて思ったことは、シンプルな役ほど人間の奥深さが滲み出るということです。これからは自分の年齢と相談しながら普通の人々をピュアに演じたいですね。僕にとって原点回帰となった作品です。
来週は、昨年12月に来日したジン・オング監督のインタビューをお届けします。
ウー・カンレン
PROFILE
1982年11月24日、高雄生まれ。大学卒業後、モデルを経て2007年、25歳の時に「沿海岸線徵友」(海岸沿いで友達募集中)というクイア短編映画でデビュー。2009年の出演作『秋のコンチェルト』(TVシリーズ)で人気を博す。日本では、宮部みゆきの『模倣犯』Netflix台湾版の主演俳優として知られる。本作『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』の演技を評してイタリアのメディアは“東洋のロバート・デ・ニーロ”と称賛。金馬奨主演男優賞をはじめ、各国の映画祭で最優秀演技賞を獲得している。
『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』
クアラルンプールの富都地区にあるスラム街で、支え合いながら生きてきた兄弟の物語。不法滞在者二世ともいえる人々や様々な国籍・背景を持つ貧困層の人々が多く暮らしている地域で、身分証明書(ID)を与えられず、兄弟として成長してきたアバンとアディ。聾唖者のアバンは市場の日雇い仕事で堅実に生計を立てているが、アディは簡単に現金が手に入る裏社会と繋がっている。そんなある日、アディの実父の所在が判明し、ID発行の可能性が出てきたが……。
監督・脚本:ジン・オング
出演:ウー・カンレン、ジャック・タン、タン・キムワンほか
配給・宣伝 : リアリーライクフィルムズ
©2023 COPYRIGHT. ALL RIGHTS RESERVED BY MORE ENTERTAINMENT SDN BHD / ReallyLikeFilms
2025年1月31日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋、他にて公開
構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。