100歳を超えても情熱を燃やし続けた巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ
~没後10年特集上映「オリヴェイラ2025」で魅惑の世界に触れる~
オリヴェイラ監督の代表作を完全版で上映
『アブラハム渓谷 完全版』
『アブラハム渓谷 完全版』© Madragoa Filmes, Gemini Films, Light Night
19世紀のフランスの作家フローベールの有名な小説『ボヴァリー夫人』を現代のポルトガルに置き換えて、ポルトガルの作家アグスティーナ・ベッサ=ルイスが執筆した小説『アブラハム渓谷』を原作に、オリヴェイラ監督が映画化。
男性的な世界や権力に詩的な力で抵抗する主人公のエマをレオノール・シルヴェイラが演じ、注目を集めました。すでに80歳を超えていたオリヴェイラ監督は本作でさらに評価を高め、代表作のひとつとされています。
『アブラハム渓谷 完全版』© Madragoa Filmes, Gemini Films, Light Night
『アブラハム渓谷』が公開されたのは1993年ですが、98年にオリヴェイラ監督自らが再編集して15分の未公開シーンを追加した完全版が作られました。今回上映されるのは、その完全版のデジタル・リマスター版です。
『アブラハム渓谷 完全版』
※国内劇場初公開
1993年/203分
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:レオノール・シルヴェイラ、セシル・サンス・ド・アルバ、ルイス・ミゲル・シントラ
© Madragoa Filmes, Gemini Films, Light Night
ブニュエルに捧ぐ、『昼顔』の若妻の38年後の物語
『夜顔』
『夜顔』© Filbox Produções, Les Films d’ici
オリヴェイラ監督が98歳のときに発表した作品。『昼顔』(1967年)を撮ったルイス・ブニュエル監督にオマージュを捧げ、登場人物たちの 38 年後を描いています。
カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『昼顔』は、昼は娼婦、夜は貞淑な妻、という二重生活を送る若妻セヴリーヌの物語。裕福な医者の夫と何不自由ない暮らしを送りながらも満たされない欲望を抱えていたセヴリーヌは、高級娼婦として働きはじめます。秘密の生活を楽しんでいた矢先、夫の親友アンリが客として訪れて……。背徳的な性愛に身をゆだねるセヴリーヌを当時20代のドヌーヴが演じた名作です。
『夜顔』では、パリで偶然再会したアンリとセヴリーヌが描かれます。アンリは真実を打ち明けるという口実でセヴリーヌを食事に誘い、過去の秘密や欲望について語り合います。アンリ役には『昼顔』のミシェル・ピコリが続投、セヴリーヌ役はビュル・オジエが演じました。オリヴェイラ監督が描いた二人の大人の会話は、『昼顔』を知っていると共犯者のような気持ちで見聞きできるので、さらに楽しめるでしょう。
『夜顔』
2006年/69分
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジェ
© Filbox Produções, Les Films d’ici
「オリヴェイラ2025 没後10年 マノエル・ド・オリヴェイラ特集」
2025年4月18日(金)より、
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国順次公開
提供:キングレコード
配給・宣伝:プンクテ
協力:
ポルトガル大使館 カモンイス言語国際協力機構
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
※この記事の内容は2025年4月時点の情報です
構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。