カンヌ国際映画祭「クィア・パルム賞」とは? 名作揃いの歴代受賞作3選
上映禁止を乗り越えた、心揺さぶられるパキスタン映画(2022年受賞作)
『ジョイランド わたしの願い』
『ジョイランド わたしの願い』© 2022 Joyland LLC
パキスタン映画として初めてカンヌ国際映画祭でプレミア上映され、「ある視点」部門審査員賞とクィア・パルム賞を受賞した本作。トランスジェンダーの恋を描いていることから本国パキスタンでは上映禁止処分を受けたものの、人権活動家マララ・ユスフザイらの支援で一部の地域を除いて上映が実現しました。
『ジョイランド わたしの願い』© 2022 Joyland LLC
パキスタンの大都市ラホールで、9人で暮らすラナ家では、家父長制に則った伝統的な暮らしを続けています。次男で温厚な性格のハイダルは失業中で、その妻のムムターズは仕事にやりがいを感じながら家計を支えています。
二人はそれでうまくいっていますが、世間体を気にする父と兄は、ハイダルに職探しと子作りのプレッシャーをかけます。ある日、友人にバックダンサーの仕事を紹介されたハイダルは、そこでトランスジェンダー女性のビバと出会い、パワフルに生きるビバに心惹かれていきます。
『ジョイランド わたしの願い』© 2022 Joyland LLC
一方、ハイダルが仕事に出かけるようになったことで、家長である父はムムターズに仕事を辞めて子作りに専念するよう言い渡します。
『ジョイランド わたしの願い』© 2022 Joyland LLC
監督はこれが長編映画デビュー作となるサーイム・サーディク。家父長制により生きがいを奪われる女性たちの絶望や抑圧される若い男性たちの生きづらさ、トランスジェンダーの恋愛に対する偏見を描き、古い制度や考え方に一石を投じています。
『ジョイランド わたしの願い』© 2022 Joyland LLC
誰かを悪者に描くようなことはなく、語り口は優しく控えめ、映像も美しい本作。それでいて男尊女卑や差別的な社会への怒りや虚無感、変わらねばというメッセージを強く訴えかけます。
『ジョイランド わたしの願い』
2022年製作
DVD ¥4,180
※2025年7月2日発売
提供:セテラ・インターナショナル
販売元:アルバトロス
© 2022 Joyland LLC
構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。