ひと夏のラブストーリー3選、恋の喜びと刹那に酔いしれたい
『シチリア・サマー』 ©2023 IBLAFILM srl
夏を舞台に描かれる美しくて切ないラブストーリーにひたってみませんか? 今回紹介するのは、ひと夏の若者の恋を描いた映画です。人を好きになったときの驚きや喜び、微かな嫉妬……そんな誰もが覚えのある恋心を描きながらも深い余韻を残す2作品と、夏休みらしい恋のミュージカル映画の計3作品をピックアップ。
目次
少年たちの純粋な恋は突然に……実話をもとにした悲劇
『シチリア・サマー』
『シチリア・サマー』 ©2023 IBLAFILM srl
1982年、初夏の日差しがまぶしいイタリア・シチリア島で、バイク事故がきっかけで出会った17歳のジャンニ(サムエーレ・セグレート)と16歳のニーノ(ガブリエーレ・ピッツーロ)。
ジャンニは内気な性格で家庭に居場所がなく、同性愛者であることから近所の人々に心無い言葉を浴びせられています。一方のニーノは、花火師の父と優しい母に愛され、大家族のなかで天真爛漫に育ちました。そんな正反対の二人はすぐに惹かれ合います。一緒に花火を打ち上げ、秘密の場所を訪れ、泉に飛び込む……そんな恋の喜びを味わったのも束の間、あっけなく終わりを迎えます。
少年たちの悲恋は、1980年のイタリアで実際に起きた事件をモチーフにしています。保守的なカトリック圏の地域では同性愛者への差別は凄まじく、愛し合っていた二人の少年の命が奪われたのです。この事件を機に、イタリアで最大規模のLGBTIに関する非営利団体「ARCIGAY(アルチゲイ)」が設立されました。
この事件では、いまだに有罪判決を受けた人はいないといいます。映画でも犯人探しのような展開はありませんが、ジャンニを大人の男たちが執拗にからかい、ジャンニと一緒にいるニーノに対する周囲の態度も急に変わってしまうなど、ひどい差別に心が痛みます。
実際の事件から2年後の1982年、サッカー・ワールドカップでイタリアが優勝した年に映画の舞台を移したことで、勝利に舞い上がる人々の喧騒と少年たちの悲劇の対比が鮮やかに描かれます。不寛容な世界でも、ささやかな恋の時間を楽しみ、愛を貫こうとした二人の姿に涙があふれます。
『シチリア・サマー』
2022年製作
DVD ¥5,280
発売・販売元:松竹
©2023 IBLAFILM srl
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構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。
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