【小池徹平さん×浦井健治さん】出会いと別れで僕らは育つ
どんな関係も、最初は出会いから。
そして、一度は離れても、再会したときにはまた新鮮な喜びが……。
年月を経て厚みを増す大人ならではの「トモダチ」関係を語るのは、『デスノート THE MUSICAL』で出会い、新作ミュージカル『ある男』で8年ぶりに共演する浦井健治さんと小池徹平さん。さて、お互いの成長ぶりは……?
常に舞台の第一線で挑戦し続ける。
それが、健ちゃんの美学なんだろうな
浦井健治さん(以下、浦井) 平野啓一郎さんの傑作長編小説『ある男』をミュージカルとして体現できることに、まずは大きな喜びを感じています。僕が演じる城戸は、徹平が演じるXという男を追いながら自分自身の本質に向き合う人物。自分とはなにか、家族への愛情は本物なのか……誰しもが陥りやすい、そんな闇を抱えた男なんじゃないかと思って。
小池徹平さん(以下、小池) Xは、苦しみの多い現実から逃げてきた人物。でも、そんな彼だからこそ、名前を偽ってでも平凡な幸せを求めたんですよね。健ちゃん演じる城戸の目線で展開する物語で、僕は観客の皆さんのなかに場面場面で印象という「点」を置きながら、「自分って何者なんだろう?」という問いを響かせる存在になれればと思っています。製作発表の場ではふたりで歌唱披露をしたんですが、はじめて共演した『デスノート THE MUSICAL』のことを思い出してました。
浦井 やっぱり? くるよね、心になにか。
小池 うん。Lと夜神月のときと曲調は同じじゃないけど、ああ、健ちゃんと歌うのってこんな感じだったよなぁって。
浦井 僕も、声を合わせることでパッションが湧き出してくる感じがありました。徹平には「どうぶつかってきてもええよ」と言ってくれそうな絶対的信頼感があるので、ついつい甘えちゃう。初共演のときは、さすがにそうじゃなかったかもしれないけど。
小池 あの頃は僕、ミュージカルのミュの字も知らなかったしね。
浦井 お互い、手探りというか……でも今回は、いろんな作品でそれぞれに共演してきたキャストが集まっているから、安心しつつ、変化も楽しめるんじゃないかな、と。
小池 僕たちもなんだかんだ歳を重ねてきたけど、健ちゃんは常に舞台の第一線に立って、役の振り幅を含めていろんなチャレンジを続けている。そのストイックさが本当にすごいなぁと感じてます。もう少しゆっくりすればいいのにとも思うけど、でも、そこに健ちゃんの美学が垣間見えるので。
徹平には絶対的な信頼感があるから、いつも、ついつい甘えてしまう
浦井 そう言ってもらえるとありがたい!(笑)僕もこの8年間、いろんなメディアで徹平の活躍を見てきたし、ときどき現場で一緒になって話してみると、やっぱり進化しているのを感じます。色気や肩の力の抜け具合、大人としての余裕が年々、役に乗ってきてるんだなと思ったり。
小池 ほんと?
浦井 うん。どんな職種の人であれ、そういう変化を感じながらお互いを称えられる〝戦友〟的な存在は、自分を豊かにしてくれるし、そういう相手が増えれば増えるほど、人生が楽しいんじゃないかな。
小池 そういう意味でも、今回の座組みは最高だよね。いい人しかいないし、いつでもいい距離感を保ってくれる、優しい人ばっかりだから。よく知っているからこそ逆に気を遣うとか、そういうのもなくて。
浦井 僕も正直、まったく気を遣ってない(笑)。『ある男』には嘘や隠しごとがたくさん描かれてますが、僕は全部顔に出ちゃうから、なにも隠せない。
小池 僕も苦手ですよ。「不満とか、ない?」って聞かれても、「……ないよ」って、お前それ絶対不満あるだろ!みたいな(笑)。それに、隠しごとがあると、やっぱり気持ちが悪いじゃないですか。
浦井 大丈夫!今回はとくに必要ないから。僕はこの作品から、ともに過ごした時間が家族になっていくというメッセージを受け取っていて、そういう点では、このカンパニーはまさにひとつの家族だなと。
小池 本当にそうだね。僕はここのところ、はじめての人とお芝居をする機会が多かったので、「えーと、なにに出てた子だったっけ?」って……なんか、こう言うと僕、すごくおじさんっぽいけど(笑)。
浦井 ハハハ!でも、現場ごとに出会って別れて、今回のように「また出会ったね」って、同窓会的なことが自分たちの糧や刺激になり……そうやって成長していけるのが、僕らの仕事の醍醐味だと思うんです。
〔 舞台 〕
ミュージカル『ある男』
平凡な一家の夫として不慮の死を遂げた男は、名前の人物とはまったくの別人だった。妻から依頼を受けた弁護士・城戸は、ある男=Xの正体を探すなかで、次第に自身のあり方に疑問を持ち始め……。愛と不信に揺れながら人間の本質に迫る感動のストーリーを、盤石の布陣でミュージカル化。「新作の初演キャストとして挑む未知への冒険は、やっぱり格別です」と小池さん。
原作:平野啓一郎『ある男』(文春文庫/コルク)
音楽:ジェイソン・ハウランド 脚本・演出:瀬戸山美咲
歌詞:高橋知伽江 出演:浦井健治 小池徹平/濱田めぐみ
ソニン 上原理生 上川一哉・知念里奈/鹿賀丈史 ほか
東京公演:上演中~17日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
※広島、愛知、福岡、大阪公演あり
俳優
小池徹平さん
1986 年生まれ。2002年に俳優デビュー。映像、舞台、音楽活動と幅広いジャンルで活躍。最近の出演作にドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』、舞台『西遊記』『PARCO PRODUCE 2024「リア王」』ほか。
俳優
浦井健治さん
1981 年生まれ。2000 年に『仮面ライダークウガ』でデビュー、2004 年ミュージカル『エリザベート』出演以降、数々の舞台に出演。最近の出演作に『天保十二年のシェイクスピア』『二都物語』など。
photograph: Emiko Tennichi styling: Eriko Iida
hair & make-up: Junko Yamazaki( 浦井さん), Miyo Sekiya( 小池さん) text: Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖2025年7月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
この記事の画像一覧