女性はいつだって愛を求める!
満たされない心を抱え愛を模索する映画作品3選
ままならない日々のなかで満たされない心を抱え、愛すること、愛されることを求める女たちの3つの物語。
『私たちが光と想うすべて』
© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES
FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
儚い光が心を震わせるゆるやかなシスターフッド
ムンバイで看護師として働く、ルームメイトのプラバとアヌ。
親が決めた結婚相手であるプラバの夫はドイツに働きに出たまま、アヌはイスラム教徒の恋人と秘密の恋をしていた。病院の食堂で働くパルヴァティが立ち退きを迫られて故郷に帰ると聞いたふたりは、彼女を見送るための旅に出る。
カンヌ国際映画祭でインド映画史上初のグランプリを受賞した作品。ドキュメンタリー映画を手がけてきたパヤル・カパーリヤー監督が、階級社会の片隅から聞こえてくる市井の人々の声をすくい取った。
人いきれでむせかえる都会の街から、光が揺れる夜の海辺へ。ときには夫から送られた炊飯器を抱きしめ、抑圧のなかで愛を求める彼女たちに捧げられた祈りのような映画。
もどかしさを抱える女性たちの痛みと希望を編んだ、ゆるやかなシスターフッドの物語が心を震わせる。
監督:パヤル・カパーリヤー
出演:カニ・クスルティ、ディヴィヤ・プラバ、チャヤ・カダム
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開中
『夏の砂の上』
© 2025 映画『夏の砂の上』製作委員会
乾いた夏の長崎で交錯する喪失感を抱いた人たちの思い
長崎。働いていた造船所が倒産してから、時間を持て余すように暮らしている治。幼い息子を亡くした喪失感を抱え、妻とも別居していた。そんな彼の家にやって来たのは、17歳の娘、優子を連れた妹。
博多の男のもとへ行っている間、娘をあずかってほしいという妹に押し切られ、治と姪との同居生活が始まる。
『美しい夏キリシマ』の脚本で知られる松田正隆による戯曲を、演出家、玉田真也が映画化。雨が降らない長崎の乾いた空気のなかで、埋められない空洞を抱えた人たちの思いを描き出した。
家族も職も失くした治と、父の愛を知らずに育ってきた優子。何度も石段を上ったり下りたりしながら言葉にならない感情を交差させ、ふたりは少しずつ渇きを癒していく。
観る者に忘れがたい記憶を残す、ひと夏の物語。
監督:玉田真也
出演:オダギリジョー、髙石あかり、松たか子、
森山直太朗、高橋文哉、満島ひかり、光石研
TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中
〈Netflix〉
『セイレーンの誘惑』
姉妹が再会した島で暴かれていく欲望と真実
認知症を患う父親の介護に追われ、アルコールに依存しているデヴォン。妹のシモーネと連絡が取れず、富裕層が集まる島で住み込みの秘書として働く彼女のもとを訪ねることに。
そこは猛禽類の保護活動家で社交界の華であるボス、ミカエラが支配する場所だった。
デヴォンはミカエラと妹の関係に違和感を抱き、介入しようとするが……。
ジュリアン・ムーアが演じる妖艶でカリスマ性あふれるミカエラは、モンスターか救済者か。
そしてシモーネが求めているものとは?
姉妹の人生を軸にしながら、権力や欲望、富と名声、幸せのありかを探っていくダークコメディ。
ゴージャスな衣装や美術、ミステリアスなムードにも酔わされる。
監督:モリー・スミス・メッツラー
出演:ジュリアン・ムーア、メーガン・ファヒー、ミリー・アルコック、ケヴィン・ベーコン
Netflixシリーズ「セイレーンの誘惑」独占配信中
選・文/細谷美香
大人のおしゃれ手帖2025年8月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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